2012 Fiscal Year Research-status Report
二次非線形光学効果を用いた凝集し修飾された単結晶上原子ステップの機能の研究
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23540363
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
水谷 五郎 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (30183958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮内 良広 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (70467124)
佐野 陽之 石川工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (80250843)
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Keywords | 表面ステップ / ナノワイヤ / 白金 / 金 / パラジウム / 酸化チタン / 光第二高調波発生(SHG) / 光和周波発生(SFG) |
Research Abstract |
本研究では、欠陥の1カテゴリーである表面ステップに注目して固体単結晶上でそれを整列させ修飾し、その電子振動スペクトルを二次の非線形光学効果(SHG,SFG)を用いて選択的に測定解析することを目的としている。本年度の成果は以下の5項目である。1.斜め蒸着による自己陰影法を用いてTiO2上にAuのナノ細線を製作するための、クヌーセンセルの製作と真空装置の真空漏れ対策を終了した。2. MgO(210)面上にMgOをエピタキシャル成長させたファセット面にPdを斜め蒸着し、予想以上にエピタキシャルに成長したPd細線ができたことを確認した。Pdは呼び蒸着量1nm厚ではあまり成長せずその後急速に成長することから、MgO(100)テラス上に成長核があり、その周辺に急速に成長することが原因と考えている。3.ガラス基板の上にCrを20nm成長させ、数十nmのスケールのVの字の形をしたホールを周期的に製作し、その試料からのSHGを基本波長532nmの光で観測した。その結果、Vの字の形のCs対称性を反映したSHG 光強度の回転角依存性が観測された。この回転角依存性はCs対称性で許容な二次の非線形感受率で表現できた。さらに2倍の周波数において、非線形分極が著しい鏡像効果を受けていることも見いだした。4. [211]方向にミスカットを導入したSi(111)面に水素を吸着させ、Si表面のテラスとステップ部分の両方から振動共鳴のSFGを観測することに成功した。またこのSFGのスペクトルが、入射出射偏光と出射角度に敏感に依存することがわかり、ステップの水素の吸着状態について多くの情報を持っていることが推察された。5. Au(887)面上のH2Oの吸着を調べている途上でAu(111)面上にH2Oの分子が室温で物理吸着することをAuger電子分光により見いだした。現在は再現性などについて詳しく調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 金の蒸着源製作は自家製のものの設計および製作が順調に終わった。また昨年度に報告した真空槽の真空漏れの問題も解消した。現在、金の蒸着の条件だしを行っており、この主たる試料の製作のための準備状況は順調である。また、それらの作業と並行してMgOファセット上の金属ナノワイヤの製作も順調に行うことができた。なおまた、英国サウサンプトン大学との共同研究により、新たに電子ビーム露光による修飾微細構造の研究として、Cr膜を加工した試料のSHG応答が観測でき、またTiO2膜上の金の微細構造も作成中である。従って、おおむね順調に研究を実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 1.試料製作用の超高真空槽の真空漏れの問題は解決したので、新しい金の蒸着源のテストを急ぐ。 2.MgO(210)ファセット面上てで2nmのPtナノワイヤがきたことは大きな成果であり、その非線形光学的性質を詳しく探るとともに、さ らに細いナノワイヤができないか検討することは非常に有意義である。次の段階としてさらに細いナノワイヤ 、具体的には1nmのワイヤができないか、実験的に検討する。3.TiO2上に結晶性のよいPdのナノワイヤができたことは大きな収穫であった。結晶性の善し悪しを決めている要因として、金属ナノワイヤが乗るテラスの欠陥密度の効果が大きいと考えられる。そこで次の段階としては、MgOのホモエピタキシャル成長の際の基板温度を変化させて、より欠陥の少ないテラスを作ることをめざす。またステップ幅や蒸着角度を変化させて、ナノワイヤの成長がゆっくりおきるように工夫する。 3.TiO2ファセット面上のAuナノワイヤの製作も予定通り推進する。ファセット化する面指数の予想をするために大阪電気通信大学の阿久津らが開発した現象論的な理論を用いる。4.ステップをもったSi(111)表面上のHについては、実験の再現性やミスカット角度依存性を測定し、実験結果をより信頼性のあるものにしていく。5.防衛大の宮内講師においては、低温でかつ走査トンネル顕微鏡で試料表面をモニターしながら、フェムト秒レーザー光源を用いたSHG、SFG分光を行うシステムを構築し、北陸先端大における測定と相補的に、表面の非線形応答を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.Auをななめ蒸着するためのファセット化したTiO2を作製するもととなるTiO2(15 15 4)基板を購入する。試行錯誤には多くの基板の購入、および洗浄するための薬品の購入が必要であると予想される。ファセットの出来具合や、Au蒸着後の試料がナノワイヤになっているかどうかを、蒸着後の試料をRHEEDおよび透過電子顕微鏡の上面像と断面像を観察することによって行う。このための消耗品費を本研究費で支出する。 2.英国サザンプトン大学のH. Rutt教授との協力により、ガラス基板上にTiO2をゾルゲル法でコートしたものを電子ビーム加工し、その上にAuナノ構造を斜め蒸着したものを製作する。このための基板と薬品の購入、および試料の運送費や交通費を本研究費で購入する。 3.Au高指数面Au(111)面に反応物質である、H2Oが物理吸着した場合の電子スペクトルの変化を調べる。このためにより純粋な水を吸着するための真空配管の改良を行う。このための真空部品および試料を本研究費で購入する。4. PtおよびPdをMgO(210)表面上に蒸着する実験も行い、Auナノ細線との比較を行う。そのための基板や金属材料真空材料の購入を行う。5.共同研究者の防衛大学宮内良広講師においては、フェムト秒レーザーを用いた真空低温中のステップ表面の観察をするための装置の電気配線を改良するための部品の購入を行う。 なお、本年度は未使用金額が374,642円生じた。この予算を用いて光源であるレーザーのフラッシュランプなどの消耗品の購入やレーザー電源の交換部品を購入する。
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Research Products
(14 results)