2011 Fiscal Year Research-status Report
電子系とのアナロジーによるトポロジカルな光輸送現象の開拓
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23540380
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
落合 哲行 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端フォトニクス材料ユニット, 主任研究員 (80399386)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光スピン軌道相互作用 / アクシオン / キラル / 光輸送 / 有効ハミルトニアン |
Research Abstract |
本研究は電子系であらわれる特異な輸送現象を、光の系に焼き直し、新たな光学特性を開拓する試みである。特に光にとってのスピン軌道相互作用に着目し、光のスピンと軌道自由度を用いた新機能を目指している。 今年度は、トポロジカル絶縁体において誘起される U(1) ゲージ場のアクシオン項が光にとってのスピン軌道相互作用とみなせることに着目し、その光散乱への影響を調べた。また時間反転対称性を破らないキラル物質との比較をおこなった。光スピン軌道相互作用を増強させるには、光の状態密度を強く変調するような複合(周期系など)が必要となる。それらへの応用を想定し、複合系の building block となりうる単純な形状(球、円筒、板)を仮定した。まず、光散乱を記述する汎用のツールであるS行列を解析的に導出した。これはいわゆる Mie 散乱の解析解の拡張にあたる。次いで、S行列を用いて、以下の3つの現象を理論的に確かめた。1) ブラッグ積層構造におけるファラディ回転の増強、2) 球や円筒におけるパリティを破る光散乱、3) 球内におけれた振動双極子による双極子輻射の強い摂動。これらの現象はトポロジカル絶縁体をテラヘルツ波などにより光学的に調べるうえで重要になると考えられる。 また周期磁場中の2次元電子系を記述する Haldane 模型についてその光版を考察した。まず Dirac 型の有効ハミルトニアンを導出し、そのトポロジカルな相構造を解析的に調べた。この結果を用いると、以前に数値計算によって得られた光版グラフェンの相構造をきれいに再現することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は光スピン軌道相互作用として、キラル媒質を想定していたが、近年のトポロジカル絶縁体の流行を鑑み、アクシオニック媒質に焦点を当てることとした。後者の効果は媒質表面でのみ生じるため、前者に比べて相互作用の影響は小さいがおおむね予想通りの結果がでている。また、以前に解析した光版グラフェンでのトポロジカル相転移についても別の角度から解析することによって理解が深まり、次のターゲットに向けた取り組みも始まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、キラル媒質、アクシオニック媒質を用いた光スピン軌道相互作用による非自明な効果を探索する。これまでは主に単一の散乱体による効果を調べてきたが、今後は周期系へと拡張する。周期系としては今年度導出したS行列を利用できる、円柱からなる2次元周期系、および球からなる3次元周期系を考察する。 また光版グラフェンで用いた有効ハミルトニアンによる方法を拡張し、ガンマ点での2次縮退や偶然縮退点まわりでの対称性の破れの物理を考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
秋に開かれる国際会議にて、途中までの成果を発表するとともに、その前後での数日間滞在し、研究成果や方向性について研究討論をおこなう。また、データ解析用コンピューター、コンパイラ、ライブラリ等を更新する。
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Research Products
(1 results)