2012 Fiscal Year Research-status Report
圧力中での磁場角度分解比熱測定で解明する擬一次元超伝導体の秩序変数の変遷
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23540407
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米澤 進吾 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30523584)
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Keywords | 非従来型超伝導 / 圧力下比熱 / 超伝導ギャップ構造 / 磁気熱量効果 / 微小単結晶 / 一次相転移 |
Research Abstract |
本年度は新しい熱容量計の作成とそれを用いた実験を進めた。特に、磁場を変化させた際に試料の温度が変化する磁気熱量効果の測定を行った。磁気熱量効果による温度変化はエントロピーの磁場微分に対応し、エントロピーの温度微分である熱容量測定とは相補的な手段になる。スピン三重項超伝導体の最有力候補である層状ルテニウム酸化物Sr2RuO4の微小な超純良単結晶についてこの磁気熱量効果を測定し、磁場がこの物質のab面に平行な場合に超伝導相転移が一次相転移になっていることを初めて見出した。この結果は、磁場と超伝導の相互作用に、これまでに知られていないものが存在している可能性を強く示唆している。本成果はPhysical Review Letters誌に論文として出版し、日刊工業新聞(2013年2月20日朝刊)、オンラインニュースサイト「マイナビニュース」、京都大学ホームページ等で紹介された。また招待講演1件を行った。 また、擬一次元超伝導体(TMTSF)2ClO4の磁場角度分解熱容量測定に関して、Physical Review B誌のRapid Communicationに論文を出版した。特筆すべきは、熱容量の磁場方向依存性に、特異な変調を発見し、これが超伝導ギャップのゼロ点の存在に起因することを明らかにした点である。また、この変調を解析することによって、(TMTSF)2ClO4の超伝導ギャップ構造を推定した。擬一次元の超伝導体においてこのような詳細な実験的推定ができたのはこれが初めてである。この成果に関して、2件の国際会議における招待講演も行った。さらに、データの詳細な解析を進めた。この解析については論文1件が掲載決定済みで、論文をもう一件投稿準備中である。また、熱容量の温度依存性に擬一次元系に特有の強い揺らぎの影響がみられている可能性があり、現在その解析を進め、さらに再現性の確認を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圧力中での実験が予定よりも進んでいないが、磁気熱量効果と熱容量の測定を併用した研究が予想以上の進展を見せており、Sr2RuO4の十年以上の未解決問題の真相に迫りつつある。また、TMTSF系に関しても、擬一次元系で初めてのギャップ構造の推定に成功し、回転磁場中での熱容量測定が擬一次元系においても適用可能であることを初めて示した。
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Strategy for Future Research Activity |
圧力中の実験を進めるとともに、当初の対象物質である(TMTSF)2ClO4の常圧における比熱の詳細も非常に重要な意味を持っている可能性が出てきたため、常圧における研究も併せて行う。また、これまでのデータに関する解析結果について論文にまとめる。また、Sr2RuO4の熱測定についても非常に重要なデータが出てきているので、引き続いて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の残額が6万円弱生じているが、これは寒剤のヘリウムの使用量が予想よりもわずかに少なかったためである。この残額は来年度のヘリウムの料金に回す予定である。特に、近年のヘリウムガスの値段の高騰により、京都大学でも液体ヘリウムの値段が2割程度値上げになる予定である。この残額は上昇分の補てんとして用いる。
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Research Products
(14 results)