2011 Fiscal Year Research-status Report
パイロクロア型イリジウム酸化物における金属絶縁体転移の機構解明
Project/Area Number |
23540417
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松平 和之 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40312342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩佐 和晃 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00275009)
桑原 慶太郎 茨城大学, 理工学研究科, 准教授 (90315747)
長谷川 巧 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (20508171)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | パイロクロア酸化物 / イリジウム酸化物 / 金属絶縁体転移 / 中性子散乱 / ラマン散乱 / X線回折 / 単結晶 |
Research Abstract |
パイロクロア型イリジウム酸化物における温度誘起の金属絶縁体転移における磁気状態および結晶構造の変化を明らかにし、その機構解明を目的としている. 代表者の松平は、多結晶試料Nd2Ir2O7のキャパシタンス法を用いた熱膨張測定を行い、相転移に伴う極めて微小な変化の検出に成功した.また、フラックス法を用いSm2Ir2O7の単結晶育成に成功した.得られたSm2Ir2O7の単結晶は分担者の桑原(茨城大)、長谷川(広島大)への試料提供を行った.現在、Tb2Ir2O7の単結晶育成を進めている.基礎物性および希土類依存性の相図について論文として発表した. 分担者の岩佐(東北大)はNd2Ir2O7の中性子非弾性散乱測定の結果から、Nd3+の結晶場状態の解析に成功した.その結晶場モデルは磁化率の温度依存性を良く再現する.また、Nd2Ir2O7の中性子弾性散乱測定から、Ndモーメントの磁気構造がall-in all-out構造であることを明らかにした.これは金属絶縁体転移に伴いIrモーメントによるall-in all-out構造の磁気秩序が生じ、d-f相互作用を通じてNdモーメントの秩序生じていると考えられる.パイロクロア酸化物におけるall-in all-out構造は初めての観測結果である.これらの成果は2本の論文として発表された.分担者の長谷川(広島大)はこれまでのラマン散乱の結果を総括した.また、第1原理計算によるバンド計算を行い、電子状態からの考察を行った.分担者の桑原(茨城大)は実験設備が東日本大震災の影響を受けたため、その回復に努め、現在X線回折装置は復旧し予備実験を開始している. 平成23年9月末日に九州工業大学にて分担者3名と東北大の富安氏を招き、全体ミーティングを行った.本研究の現状を把握し、今後解決すべき問題点を浮き彫りにし、共通の問題意識を持つことが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大震災の影響のため、実験計画(中性子散乱測定用試料の変更)の一部変更があったが、おおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
◆試料合成:Tb2Ir2O7の中性子散乱用の多結晶試料の合成、および単結晶育成を行う.(松平)◆磁気状態の解明;Tb2Ir2O7の中性子散乱実験を行い、Tb3+の結晶場および磁気構造を明らかにする.(岩佐)◆結晶構造の解明:単結晶Sm2Ir2O7のラマン散乱測定およびX線構造解析を行う.(長谷川、桑原)Nd2Ir2O7およびSm2Ir2O7の精密熱膨張測定を行う(松平)◆秋に九州工業大学にて分担者を集めた第2回全体ミーティングを行う.外部から関連研究者を招聘し、解明へのサポートを得る.研究成果は日本物理学会、国際会議(HFM2012)にて発表を行う.また、研究成果が得られ次第論文発表を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【前年度未使用額が生じた事由】大震災の影響で、中性子散乱実験を行う実験施設が停止している.この施設はH24年度に再稼動を予定しているが、限られたマシンタイムが予想される.そのため、限定されたマシンタイムで確実に研究成果が得られるよう実験計画を再検討した.その結果、予定していたSmの同位体の購入を取りやめ、Sm2Ir2O7の中性子散乱実験を中止し、より確実に観測が可能と思われるTb2Ir2O7の中性子散乱測定を行う事にした.物品費:試料作成のための物品(試薬、石英管、白金箔)、熱膨張測定のため寒剤(液体ヘリウム)、光学レンズ、中性子およびX線測定用試料容器旅費:国内学会および国際会議(国外)への成果発表.九州工業大学にて第2回全体ミーティング開催するための参加旅費.調査研究のための国内旅費謝金:研究分担者の実験補助、専門知識の提供
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Research Products
(8 results)