2011 Fiscal Year Research-status Report
自己駆動する境界運動と流れの相互作用による推進・輸送現象の解明
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23540433
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
飯間 信 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中垣 俊之 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (70300887)
郡 宏 お茶の水女子大学, お茶大アカデミックプロダクション, 助教 (80435974)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物流体 / 渦運動 |
Research Abstract |
1)粘菌内の流動モデルに関する論文を出版し,与えられた境界運動の元での化学物質の輸送に関する理論をまとめた.境界運動を化学物質の濃度と関係付けるために局所的な振動の位相の運動方程式と連続の式を輸送方程式と結びつけた数理モデルを作り,数値計算により調べた.その結果局所的な振動数変化が濃度にどう依存するかにより拡散を強める場合と弱める場合があることがわかった.2)剥離渦の干渉による流体力学的同期を調べるために複数のバネ支持円柱を一様流中に置いた場合の同期条件について調べた.有限体積法とキメラ格子を用いた数値コードを開発することで境界変動に伴う領域の形の変化を取り扱えるようにした.このコードを用いてバネの固有振動数と円柱間の距離を変えて同期が起こる条件を調べた.すると,このレイノルズ数領域でも固有振動数が異なっても同期が起こる場合があることがわかった.特に,同期を起こすパラメータ領域は距離が近くなり渦どうしの相互作用が強くなると複雑になる.現在の研究の最前線を調査し,得られた知見の共有,また関係研究者との議論を効率的に行うため,滞在型の研究集会「生物のロコモーションと同期」を共同研究者とともに行った.この研究会の出席者との議論を通して業績1)の骨子となるアイデアが生まれたものである.また,国際会議 "SIAM Conference on Applications of Dynamical Systems", 日本物理学会,理論応用力学講演会を始めとする学会,研究集会,セミナーで上記の研究成果を発表するとともに出席者と議論を行い,次年度以降の研究に有用な情報・知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)当初の計画である渦が発生するレイノルズ数領域での位相引き込みと引き起こされる流れの関係については解析のための数値モデルの構築に成功した.また解析を開始し,基礎的な結果を得た.2)粘菌の境界運動パターンの自発的形成に関してはプロトタイプモデルを構築した.当初目的とした効率的な輸送を実現する境界運動パターンが一部見られる段階まで来ており,結果を見ながらパラメータの調整やモデルの詳細の手直しを行い,明確な結果を得るための解析モデルを完成させる必要がある.3)情報収集に必要な研究集会「生物のロコモーションと同期」を共同研究者とともに企画し,成功させた.これにより国内第一線の研究者による最先端の研究内容の講演を通して関連情報を収集するとともに意見交換を行った.このことで,研究課題に密接に関わる多くの知見を得ることが出来た.4)その他国内外の研究集会で研究発表・情報収集を行い,研究課題遂行に有用な知見および関連する知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
1)バネ支持円柱間の同期に関しては,境界断面が円柱であり,当初目的とした翼とは異なる.しかし円柱は物体を代表する形状の一つであること,同期という観点からの類似研究は円柱に限ってもほとんど見られないことが判明したことから,引き続き円柱の場合の同期を詳しく調べることが重要であると考えられる.2)粘菌の境界運動パターンの自発的形成に関しては構築したモデルの改良を続けるとともに共同研究者を始めとする生物学者との議論を重ねる必要がある.理論的に予想される化学物質の輸送と境界運動の関係を実際の生物と照らしあわせ,より普遍的なモデルを構築することを目指す.3)生物流体力学における同期という問題を工学・生物学を含めたより広い観点から捉え,更に情報収集と知見を蓄積する必要があるため,研究集会を企画する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)予定していた計算サーバーが前年度購入できなかったため前年度の予算を一部残した.現在の環境では計算能力が足りないためパラメータ探索などが十分行えない.そこで既存のプログラム・ライブラリが使える最新型の計算機を導入する.これにより研究を加速させる.2)今年度行う予定の研究集会の企画・運営に使用する.3)前年度までの研究成果の発表および関連研究者との議論のために必要な国内・海外旅費に使用する.4)現在使用しているノート型 PC の性能が,保存可能なデータ量・処理速度等の観点から不十分になっているので,可能であれば高性能・高容量の物の購入を予定している.
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Research Products
(12 results)