2011 Fiscal Year Research-status Report
水の過冷却液体状態での挙動の大規模計算機実験による解明
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23540434
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
寺田 弥生 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (20301814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳山 道夫 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (40175477)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ガラス転移 / レプリカ交換法 / 過冷却液体状態 / 国際情報交流(アメリカ) |
Research Abstract |
一般化されたレプリカ交換法を用いて、水系の過冷却液体領域における平衡状態の実現を目指すために、まず、単分散レナードジョーンズポテンシャル系と多分散レナードジョーンズポテンシャル系の定圧系において温度変化に対する液体-結晶相転移、および、液体-ガラス転移現象を再現することに成功し、この方法が結晶相転移、ガラス転移の双方の店移転近傍で有効なことを確かめつつある。さらに、相転移点近傍での挙動に関係する物理量を明らかにするべく、エンタルピー、体積、内部エネルギー、同径分布関数などを用いて解析を行った。その結果、結晶転移からガラス転移への変化を明らかにしつつあり、水に関わる相転移現象にも適用できる適切な物理量がわかりつつある。 また、系のダイナミクスについては、よりシンプルな剛体球流体と剛体円盤流体の分子動力学シミュレーションによって、ガラス転移現象に関わるケージ領域と密接な関係があるベータ緩和時間やさらにより長時間領域に関係するアルファ緩和時間、長時間自己拡散に関係する緩和時間などを比較し、長時間自己拡散係数が等しければ緩和時間が一致することを明らかにした。その一方構造に関わる物理量であるノンガウシアンパラメータなどは次元性を持つことを明らかにした。これらの次元性による違いの結果は、水のガラス転移が、実験的には、バルク状態では置きにくく、閉じ込められた系や薄膜系で観測されることを側面からサポートする結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
23年度は東日本大震災後の復旧や学生指導などのために、予定していた海外出張を行うことができず、共同研究者との詳細な意見交換ができなかったため、水系への取り組みは遅れている。しかし、よりシンプルな系において水系にも適用できるガラス転移現象の鍵となる物理量の解析を行い、新たな重要な知見を得つつあるため、今後、それを発展させ、水系に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は東日本大震災後の復旧や学生指導などのために、予定していた海外出張を行うことができず、共同研究者との詳細な意見交換ができなかったため、水系の研究遂行が遅れているが、水系の研究のベースとなる一般化されたレプリカ交換法を用いた多分散レナードジョーンズポテンシャル系の結晶転移、ガラス転移の研究で水のガラス転移につながる重要、かつ、より詳細な解析が必要なことがわかったため、早急にこれらの計算を、23年度購入した計算サーバー、および、所属研究所の大型計算機センターでの計算を行う。さらに、水系の計算を進め、参照系と比較し、また、海外の共同研究者とも連絡を密にし、水系特有の状況を明らかにする。また、レプリカ交換法で得られた安定な過冷却液体領域のデータを基に分子動力学法を用いて、粒子の挙動を再現し、その解析を行う。さらに、液体領域から過冷却液体領域で、長時間自己拡散係数などの挙動について研究分担者の徳山道夫教授が提案している理論を基に、ダイナミクスの解析を行い、理論の適用限界などを議論する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度できなかった共同研究者であるボストン大学のKeyes教授グループとの詳細な議論については、本年度中にボストン大学に行き、詳細な議論を行うために繰り越した経費を使う予定である。また、24年度も研究の遂行に伴い、計算サーバーの増強などを行う。さらに、成果が出つつあるため、早急に論文にまとめ、論文投稿を行う。
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