2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540477
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松山 明彦 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (60252342)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 2軸ネマチック相 / 液晶 / 棒状分子 / ナノチューブ |
Research Abstract |
本研究は,カーボンナノチューブなどの長い棒状分子と低分子液晶分子の混合系で起こる,2軸ネマチック相や2軸スメクチック相などの新規な2軸液晶相とその分散安定性について,理論的に解明することを目的とする。さらに,2軸液晶ゲルの変形と体積相転移の問題について理論的に探る。バナナ型や板状型のサーモトロピック液晶系で2軸ネマチック相などは議論されているが,棒状分子と液晶分子の混合系での2軸液晶相はこれまで議論されていない。本研究は,軸対称性しか持たない2つの長さの異なる棒状分子混合系における,新しい2軸液晶相の可能性について初めて示すものである。 初年度は,まず長い棒状分子と液晶分子が互いに垂直に配向する場合の,2軸液晶相と相分離について研究をおこなった。棒状分子と液晶分子の混合系の2軸ネマチック相を記述するための自由エネルギーを構築し、温度や濃度に依存した相図の計算を行なった。棒状分子と液晶分子間に強い斥力が働く系ではある温度と濃度の範囲で安定な2軸ネマチック相が出現することを示した。さらに、不安定な2軸ネマチック相の領域なども示すことができ、2軸ネマチック相の安定性に付いて議論できた。 2軸ネマチック相に関してのこれまでの実験や理論の研究では,板状液晶分子やバナナ形液晶について研究されてきている。板状分子間の相互作用が排除体積型の斥力相互作用だけが存在する系では,熱力学的に安定な2軸相は現れないことが知られている。これまで議論されてきた2軸性液晶相は殆どが板状分子であり,本研究のような円柱対称性をもった棒状分子混合系については議論されていない。本研究により新たな2軸ネマチック相の可能性を示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,まず長い棒状分子と液晶分子の混合系における,2軸ネマチック相と相分離について研究することを目的とした。このような棒状分子混合系がつくる新規な2軸ネマチック相の可能性について,どのような温度や濃度で現れるのかについて明らかにし,2軸ネマチック相の分散安定性と相分離について調べることが目的であった。 計画通り、棒状分子と液晶分子の混合系の自由エネルギーを構築でき相図の計算も終了した。これらに関連した結果は、Liquid Crystalなどの欧米の学術雑誌に掲載された。以上のことから、おおむね研究は順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年の理論を発展させて,2軸スメクチック相の理論を構築し,相分離と分散安定性について調べる。ここでは,低分子液晶が作るスメクチック相に長い棒状分子が添加されたときに,棒状分子がスメクチック層内で配向方向に平行に分布する場合と,垂直に分布する場合について考察する。1軸から2軸液晶相への相転移と相分離の問題について調べ,棒状分子と液晶分子の混合系における2軸液晶相についての新しい概念を予測する。 さらに、研究の後半では液晶高分子ゲルの2軸性について研究を発展させる。分子配向による巨視的なゲルの体積相転移やゲルの変形について,特に2軸液晶相に注目して研究を行う。ネマチック液晶ゲルはダイレクター方向に形が異方的に変化して体積相転移を起こすが,2軸ネマチック液晶ゲルの場合,ダイレクター方向だけでなく,それに垂直な第2ダイレクターの方向にも変形が起こる可能性がある。このような2軸ネマチック相は,側鎖型液晶ゲルの主鎖と側鎖が垂直に配向することで起こる可能性がある。2軸液晶ゲルは実験的には議論されているが,理論的にはほとんど研究されていない分野であり,本研究により,2軸液晶ゲルの体積相転移と変形の問題を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、物品費に関しては数値計算用のワークステーション1台を予定している。旅費は、ドイツへの国際会議出席と、国内会議への出席の旅費を予定している。
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