2012 Fiscal Year Research-status Report
高時空間分解能での地殻歪場の推定によるゆっくり地震の発生過程と条件の解明
Project/Area Number |
23540503
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大谷 竜 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (50356648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名和 一成 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, グループ長 (20262082)
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Keywords | 地殻変動 / ゆっくり地震 / GPS連続観測網 / 地殻歪場 / 歪計 |
Research Abstract |
高速計算機・大容量ディスク、及び高速化のための数値計算パッケージを導入し、計算機環境を整備した。石垣島周辺の琉球トラフ沿いにかけて約半年間隔で繰り返し発生し、国土地理院のGPS観測点で多数のイベントが記録されているゆっくり地震を対象とした解析を行った。まず、国土地理院による先島諸島のGPSの変位データについて、ユーラシアプレートの剛体回転成分による見かけ上の変動を除去し、特に変動成分の大きい石垣島の観測点での各ゆっくり地震のイベントについて、ゆっくり地震の開始を同定し、指数関数をフィティングしてその時定数を求め、残りの全観測点・全成分について、この時定数を用いてゆっくり地震の各イベントにおける変位量を推定した。そしてHeki and Kataoka(2008)の断層面を用いて、断層面上のすべり量や方向を求めた。その妥当性の検証のため、独立な観測量として同地で行われている重力計による連続観測の結果と比較したところ、両者は必ずしも調和的ではなかった。そのため、断層面を独立に推定するために、中村・兼城(2000)によって求められたフィリピン海プレート上面のデータについて、10km x 10kmのパッチを設定したグリッドサーチを行い、最も変位量を説明できるパッチの場所を同定した後、その周辺の範囲でパッチの幅や長さ、すべり量のグリッドサーチを行って最適パラメータの組み合わせを求めた。しかしながら、そうして得られた値から計算された変位量と、観測量とのフィッティングが良好でない結果が得られた。その原因として、当該地域でのプレートの沈み込み角度が大きく、また形状も空間的に複雑に変化するためであることが考えられ、当該地域においては沈み込むプレート上面(断層面)の与え方に結果が大きく依存することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は地殻歪場とゆっくり地震の発生の関係を調査するため、ゆっくり地震の発生が多数記録されているフィールドとして琉球諸島を対象とした解析を行ったものの、当該地域でのゆっくり地震を特徴づけるすべりの動態を推定するために必要となる断層面の与え方が結果に大きな影響を与えることが判明し、当初考えられていたよりも解析が単純ではないことが分かった。この困難性は、同地域が離島であるため地震計の数も少なく、またこれまで本土に比べて系統的な地下構造探査も行われていないため、プレート上面の位置の推定も良くないためだと考えられ、今後の解析においては、断層面の与え方はアドホックにではなく、解析的・地球物理的な整合性を持ったものを考慮した上で慎重に進める必要があることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
以上得られた知見から、来年度は、今年度実施した琉球トラフ沿いにかけて繰り返し発生しているゆっくり地震だけではなく、房総半島沖で発生しているゆっくり地震なども対象とした解析を行う。特に、沈み込むプレート面上でのすべり面同定やすべり量推定のためのグリッドサーチ手法について精査し、他の地域でのゆっくり地震の事例やシミュレーション等を通じた検証を行う。更に、ゆっくり地震の時間発展も考慮した解析も試み、ゆっくり地震による地殻変動の広がりやその同定をGPS等利用可能な各種の観測機器を用いて評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きGPSデータ解析を継続し、得られた成果を地球惑星連合大会や日本地震学会、学会誌上等で適時発表する。そのための発表登録料や投稿料、学会参加料や、交通費・宿泊費等の旅費を計上する。ゆっくり地震に関する最新の知見等取得のため、上記の学会や研究会等に適時参加して、情報収集を行う。また、関連する地震防災分野において、成果の社会への分かりやすい形での発信と活用のため、災害情報学会や地震防災に関する各種研究会に参加し、積極的に情報共有やフィードバックの機会を得る。
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Research Products
(1 results)