2013 Fiscal Year Research-status Report
高時空間分解能での地殻歪場の推定によるゆっくり地震の発生過程と条件の解明
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23540503
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大谷 竜 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (50356648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名和 一成 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, グループ長 (20262082)
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Keywords | 地殻変動 / ゆっくり地震 / GNSS連続観測網 / 歪計 / 地殻歪場 |
Research Abstract |
紀伊半島沖で発生しているゆっくり地震などを対象として、沈み込むプレート面上でのすべり面同定やすべり量推定のための手法について精査した。プレート境界上でゆっくり地震が発生すると仮定して任意のすべり量を与え、各観測点における地殻変動の計算値と観測量との残差二乗和を最小にするように、断層の位置や拡がり、すべり量をグリッドサーチで推定した。この手法による推定精度を検証するために、GPSよりも精度の高いボアホール型の歪計を想定し、どの程度の微弱なゆっくり地震を捉えられるかを確認した。ケースとして産業技術総合研究所(産総研)の歪計観測網を模したシミュレーションを行ない、松本・北川(2005)等から得られている歪計の精度やノイズレベル等の現実的な数値を使った解析を実施した。実際に産総研歪計観測網を使って推定された、ゆっくり地震のすべり量10mm程度(モーメントマグニチュードで5.7程度)を与えてみたところ、均一なすべり分布の場合、精度よく各種断層パラメータ(主なすべり域やその大きさ)を推定することができた。一方、不均質なすべり分布を与えた場合、推定される断層面上のすべり域の拡がりは実際のものよりも小さくなること、その反面すべり量は大きくなること等が見られた。SN比を変えた実験を行ってもこの傾向は変わらなかった。しかし全体的に見て、すべり量の大きな領域に断層面が推定され、トータルとしてのモーメントマグニチュードは、与えられたものと大きく相違せずに推定できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度見られた問題点を調べるために、すべり域やすべり量の推定のための手法改良に取り組んだ。沈み込むプレート面上を小さな多数のグリッドに分割し、グリッドの場所やすべり量をそれぞれ変えた多数の組み合わせによるアプローチで推定した結果、シミュレーションでは良い推定結果が得られ、手法の妥当性が示された。この結果から、観測データに見られる微小な変動の内、どの程度までがゆっくりすべりに伴う真の信号でどの程度がノイズなのかをSN比を元に評価できるようになったと考えられる。但し、推定される値にはある程度の幅が生じており、更に、今回データとしては高感度な測定ができる歪計によるものを想定し、かつ条件も比較的良いものを考えているため、気象・水文的な擾乱等によりノイズの大きなデータや、GNSS等他の観測機器によるデータを使った解析では、推定精度が劣化することが考えられ、得られた結果の解釈には依然として注意を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の結果を用いて、今年度はこうした誤差要因を留意しつつ実際のデータを用いて、以前の解析対象領域である琉球トラフ沿いで発生するゆっくり地震の解析を試みる。当該地域では、恒常的な地震計も少なく、系統的な地下構造探査も行われていないために、プレート面でのすべりの与え方に工夫が必要なことが考えられる。これらの点に留意しつつ、先行研究等の知見も用いながら、当該地域で発生しているゆっくり地震の動態について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ゆっくり地震の起きるすべり域やすべり量推定のための手法開発を行って、ゆっくり地震推定の評価を行う予定であったが、 紀伊半島でのゆっくり地震を擬したシミュレーションで検証したところ、良好な結果は得られたものの、推定される値にある程度の幅が生じることが分かった。そこで計画を変更し、誤差を評価しつつ実際のデータに適用することとした。また成果をまとめた論文出版費用の年度内期限までの支払いが困難であることが判明した。以上から未使用額が生じた。 そのため、翌年度は手法の改良とその他地域への応用によるゆっくり地震の評価等のための諸費用、及び論文出版や学会参加のための経費として、未使用額を充てることにしたい。
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Research Products
(1 results)