2011 Fiscal Year Research-status Report
中部山岳域における冬期の降雨発生と積雪構造への影響評価
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23540507
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上野 健一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00260472)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 冬季 / 中部山岳 / 降雨 / 積雪 |
Research Abstract |
冬季山岳域での降水形態自動計測のために、森林総研・南光氏(研究協力者)と簡易型のレーザー式雨滴計を改良した。信号取り込み用プログラムを改良し、冠雪を防ぐためのアームの改良およびレーザー幅1cmに加え3cmの雨滴計を作成した。大学間連携事業および防災研との共同研究にて、菅平(筑波大学)、志賀高原(信州大学)、高山(岐阜大学)、長岡(雪氷防災センター)にて2011年12月~2012年3月まで集中観測を実施した。菅平・志賀高原で月1-2回の割合で積雪断面観測も実施した。高山における雨滴計が原因不明の故障が発生し観測を断念したが、他の地点では観測を継続することができた。本冬季は豪雪年で、期待した降雨を伴う低気圧の通過が少なく、4月の段階でも山岳域では残雪が残っており観測を継続している。冬季観測データの解析は翌年度に持ち越すこととした。積雪シミュレーションを実施するために、東北大学・山崎氏(連携研究者)より最新の多層積雪モデルを入手し、菅平における積雪構造の再現実験を準備した。モデルは3月までの構造をおおむね良好に再現し、長波放射および降水量補正に関するパラメタリゼーションが課題であることが明らかとなった。実験センターにて蓄積された過去33年間の目視による降水形態判別データと4年間にわたる事前観測データを分析し、降雨発生時の大気循環場と積雪構造への影響を明らかにした。降雨発生日は移動性低気圧を伴い全降水日数の12%で、発生頻度とPDO指数に有意な相関のある大きな年々変動が検知された。降雨が発生する事例は、広域暖気団の北上に伴い降雨のみが卓越する場合と、低気圧の発達に伴い降雨から降雪に変化する場合があり、後者に関して東風により菅平上空で風下のフェーンに伴う昇温が発生し、降水形態の変化に大きな影響を及ぼす可能性が示唆された。これらの内容を論文にまとめ、水文水資源学会誌に投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画したとおりの集中観測を実施することができた。しかし、例年にない寒冬・豪雪が発生し、当初予定していた降雨を伴う低気圧の発生頻度が非常に少なかった。また、3月になっても低温が継続し、集中観測の全データを集計する前に年度が終了してしまった。そのために、全データの整理に関しては次年度に持ち越すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
4台の雨滴計のうち1台に不測の故障が発生しており、機材を回収後、早急に原因を把握する必要がある。2011-12年の冬季データを分析し、当初想定した多地点での降雨を伴う低気圧通過事例があったかどうかを確認し、分析する必要がある。観測体制および解析に必要な周辺データやモデルの整備に関しては初年度に予定通り実施できたため、次年度もほぼ計画通りの研究遂行が可能と考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第1回集中観測データの解析と第2回集中観測を実施する。データ解析に関しては次の内容を行う。1,観測拠点とその周辺の気象官署データを分析し、冬季の降雨・雨氷発生頻度および経年変化傾向を明らかにする。2,非降雪イベント発生事例を抽出し、各事例における山岳上での大気循環場を数値解析により再現する。3,積雪構造変化を、多層積雪数値モデルにより再現し、積雪断面観測結果により検証を行う。降雨イベント発生による積雪構造への影響を把握する。4,上記の解析から、第2回観測手法の改良点をまとめ、冬期の集中観測に反映させる。 第2回集中観測は、11-3月を予定する。
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Research Products
(1 results)