2012 Fiscal Year Research-status Report
中部山岳域における冬期の降雨発生と積雪構造への影響評価
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23540507
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上野 健一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00260472)
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Keywords | 冬季 / 中部山岳 / 降雨 / 積雪 |
Research Abstract |
昨年度に投稿した厳冬期の降雨発生傾向に関する論文が水文水資源学会誌に受理され、研究内容が公表された。論文で指摘した中部山岳域における冬期フェーンの可能性を検証するために、根子岳を中心とする東西での同標高気温連続観測結果を分析した。シミュレーションにより再現された低気圧通過時の気温の非対称性が実際に観測され、フェーンが発生している事が確認された。 中部山岳における降水形態自動計測を2012年12月~2013年3月まで実施した。今年度は内陸でも比較的低標高でのデータを取得するために、長野県環境保全研究所の協力を得て長野市内に観測地点を増設し、菅平(筑波大学)、志賀高原(信州大学)、高山(岐阜大学)、長岡(雪氷防災センター)も加えた計5所での同時観測を行った。それに先立ち、筑波大学にて3cm用レーザーの試験稼働を行い、計測・解析プログラムの改良を行った。冬季間に占める全データの取得率は約60%となり、欠測の原因は、1)設置の遅延、2)PCの停止であった。菅平にて月1-2回の割合で積雪断面観測を実施し、2月には一週間滞在して雪温度および降雨発生時の断面構造変化に関する集中観測を実施した。2012-13年の冬季も前半は多雪年となったが低気圧活動も活発で、菅平では降雨を伴う事例が厳冬期にも6回発生した。現段階ではデータ回収が終わったところであり、詳細な解析は2013年度に実施する。 積雪のシミュレーションに重要となる正しい放射データを取得するために、この冬はファンをセンサーに敷設し、実験センターの日射計も新しいものに交換した。積雪モデルに関しては、実測されたアルベドを参考にパラメタリゼーションを改良し、この冬の積雪深変化をおおむね良好に再現した。入力する降水量および降水形態を変化させることにより、モデル中ではその後の積雪構造に影響がおよぶことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の骨子となる山岳部での降雨発生傾向に関する成果を論文として公開した。今年度は当初計画したとおりの冬季観測をほぼ実施することができた。降雪粒子観測装置もプログラムの改良により昨年に比べて安定した稼動となったが、PCが原因不明で停止する現象は改善できておらず、将来的にはデータロガをものの作成を目指す必要性がある。2011年―12年の冬季が低気圧活動が不活発であったことと、測器の改良が遅れた要因により、当初予定していた2年分のデータが十分に取れていない。本研究期間をもう一年延長して継続する必要性があるかを検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年4月の段階ではこの冬のデータ回収を終えたばかりであり、この冬のデータ解析に関しては未着である。2013年度はこの冬の観測データを集中的に分析する。最終年度にあたり、2011-12年度のデータと比較解析が可能かどうかを検討し、降雨発生に伴う積雪への影響と大気場の特徴に関する報告書を作成する。研究内容は7月にスイス・ダボスで予定されているDavos Atmosphere and Cryosphere Assemblyにて口頭発表をすることが受理され、成果を国外に発信する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
冬季観測データの整理を短期雇用により実施する。解析に必要な計算用消耗品費を執行し、国内・国際学会における成果発表および観測機材撤収のために旅費を使用する。その他、研究報告書作成のために印刷費を使用する。
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Research Products
(2 results)