2011 Fiscal Year Research-status Report
衛星直接観測と地磁気逆計算法によるオーロラ電流系の解明
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23540524
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
家田 章正 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (70362209)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交流(米国) |
Research Abstract |
地球の極域電離圏(高度100km)夜側では、数時間に一度、オーロラが爆発的に増光する。このオーロラ爆発は、より高々度の磁気圏尾部に蓄積された電流エネルギーが、電離圏にショートする現象であると考えられる。本研究では、この磁力線に沿ったショート電流(沿磁力線電流)の、空間構造の発達を、データ解析により明らかにする。特に、これまで主要な電流系であると考えられてきた東西電流ペアに加えて、南北電流ペアの発達を明らかにする。さらに、磁気圏尾部の磁力線再結合が、プラズマ流ではなく南北電流ペアを通じて、オーロラ爆発を引き起こすという説を提唱することを目指す。本年度は、(1)ファスト衛星の磁場・粒子・電場データ(1996-2000年)のデータベース構築、(2)ファスト衛星がオーロラ爆発を観測したイベントリストの作成、(3)そのイベントの解析、(4) ファスト衛星の粒子データから電流などを算出する手法の習得、を行った。特に、オーロラ爆発開始時に、どのような電子が降下しているかを調べた。オーロラ爆発の開始6分前に、FAST衛星がオーロラ爆発の開始地点を通過し、1keV以下のbroadband型の電子と、10keV程度のdiffuse電子の共存を観測した。また、開始7分後には、DMSP衛星が開始地点の西(15度)において、拡大してきたオーロラの前面(surge horn)を通過した。そこで観測された電子は、開始6分前に観測された電子と比較して、broadband型の電子とdiffuseな電子が共存していた部分が、inverted-V型の電子に置き換わっていた点が異なっていた。以上の観測結果により、オーロラ爆発開始時における、diffuseオーロラからdiscreteオーロラへの変化の過程で、diffuse電子とbroadband電子が共存する段階があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ファスト衛星の磁場・粒子・電場データ(1996-2000年)のデータベース構築:データベース構築のためのコンピュータープログラムの整備を行った。概ね完了したが、高時間分解モードの電場データについてのみ、未完である。(2)ファスト衛星のデータベースの、ディスクアレイへの移植:計画ではディスクアレイを新規購入する予定であったが、タイの洪水による価格高騰のため、次年度に購入することにした。本年度は所属研究機関で新規整備されたディスクアレイに、部分的にデータベースを移植した。(3)ファスト衛星がオーロラ爆発を観測したイベントリストの作成:約200例のイベントを見つけた。また、さらに、他の衛星の同時観測があるイベントを18例見つけた。(4)ファスト衛星がオーロラ爆発を観測したイベントの解析:2例の解析を行った。(5)研究成果の発表:ファスト衛星観測したオーロラ爆発について、地球電磁気・地球惑星圏学会に於いて成果発表を行った(2011年11月4日、神戸)。(6)ファスト衛星の粒子データから電流などを算出する手法の習得:粒子データから電流を算出する手法と、磁場データから電流を算出する手法を習得し、コンピュータープログラムを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、概ね当初予定通りに、研究を推進する。次年度は特に、ファスト衛星により直接観測された南北電流ペアが、経度方向に局在化しているか否かを、地磁気逆計算法による推定により調べる。地磁気逆計算法の結果の妥当性はファスト衛星の磁場・粒子・電場データを用いて検証する。また、地磁気逆計算法を用いて、オーロラ電流の成分を、電場に平行な成分(Pedersen)と、電場に垂直な成分(Hall)とに分解する。両成分の発散が反相関を持っている領域では、2次電場が生成されていると考えられ、東西電流ループの証拠となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では、本年度にディスクアレイを新規購入する予定であったが、タイの洪水による価格高騰のため、次年度に購入することに変更した。本年度は所属研究機関で新規整備されたディスクアレイに、部分的にデータベースを移植することにより、研究を継続した。繰越額は349,499円であり、当初予定のディスクアレイ購入価格870,000円より少ないが、他のリソースにデータを分散すること、次年度にはディスクアレイの販売価格が下落することが予想されることなどから、対応可能であると計算している。
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Research Products
(1 results)