2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540526
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
鴈澤 好博 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40161400)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光励起法 / 断層年代測定 / 石英 / 跡津川断層 |
Research Abstract |
本研究は断層破砕帯に含まれる石英を用いて、活断層の最終活動時代を明らかにすることを目的にしている。そこで本年度は、光蛍光(OSL)年代測定装置の開発を進めた。特に、高感度検出を進めるために必要な装置構成上の1、グラスロッド使用による受光システムの改良、2、LEDシステムによるより強い光励起システムの改良、3、新たなリモージュOSL機能の構築を進めた。また、本装置にはこれまで技術開発を進めてきた小型X線照射装置を設置させることで、最少限の石英試料で年代測定が可能なSAR法を行える機能も盛り込んだ。 こうした改良による装置の基本性能を試験した結果、受光システムについてはさらにグラスロッドの試料への接近、リモージュ機能については53諧調をさらに倍以上の諧調が必要なことが判明したので、次年度(24年度)の改良を行うこととした。しかし、基本的な装置としての機能は十分に備えていることが明らかとなった。 この基本装置を用いて試験的な年代測定を富山県-岐阜県県境に位置する跡津川断層破砕帯に含まれる石英を用いて行った。なお、跡津川断層の最新活動年代は1856年とされている。分離した石英は以下の5つの粒径サイズに区分して年代測定を試みた。35-63、63-125、125-250、250-355、355-500μm。粒径ごとの年代測定結果では35-63、63-125μmで測定年代が期待年代より高くなる傾向(約300年前)がある。一方、125-250μmではほぼ期待年代の150年前、さらに、250-355、355-500μmでは約70-80年前で期待年代に対して若くなる傾向がある。こうした粒径サイズによる測定年代の差異がなぜ出現するのか不明である。 本年度の研究実績として、改良中のOSL装置によりわずか150年前の年代測定値が得られたことは大きな前進である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
蛍光年代測定装置の改良は実績の概要でのべたようにまだ改善の余地がある。しかし、予想した以上の測定感度を有していることが明らかになった。初年度に装置の基本形を作製する目的はほぼ達成されたといえる。 また、基本装置を用いて1856年に活動した跡津川断層の年代測定を試験的に行ったところ、わずか約150年前の活動時代にもかかわらず、蛍光シグナルが得られることが明らかとなった。 こうした点から、初年度の達成目標をほぼ達成したといえる。ただし、本研究は地元開発会社(メデックK.K.)と共同で進めており、会社の本来業務ではないため、担当者との制作時間調整がうまくゆかない場合がある。そのため装置開発も遅れ気味になっている点が課題である。 初年度(23年)は日本地質学会などを含めて、3つの学会で成果発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
計画2年度目はOSL装置開発をさらに進める。特に、ハード面ではリモージュOSL機能の構築を進め、OSLシグナルのピーク分離ができるようにする。このことにより、各種石英のもつOSL特性を把握することができるようになるので、より試料に応じた測定手法を選択できるようにすることができる。また、プログラム的にも改良を一定加え、熱遷移OSL測定法ができる機能を加える。これにより、10万年以上の断層活動年代測定が可能な機能を備えることを目指す。 試料的にはこれまでの跡津川断層の石英を用いるとともに長石試料を用いての年代測定に新たに挑戦する方向性を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度で光励起蛍光測定用励起ユニットが完成しており、この装置部の修正に要する物品費、新たな試料の採集、国際学会参加などの旅費などを見込んでいる。
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