2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23540526
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
鴈澤 好博 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40161400)
|
Keywords | OSL年代測定 / 活断層 |
Research Abstract |
今回の科研費による装置開発の向上を目指すため,さらに装置開発会社,メデックK.K.と集光システムの改善(ガラスロッド直径の拡大とロッドの試料へのできる限りの接近),蛍光受光のためのフィルターの選択(DUG11からRR-340への変更),可変OSLの改善(LED輝度を256ステップでOから最大値にする)を行った.これらを効率よく進めるための2つのプログラム開発(CW-OSL測定用プログラムとLM-OSLプログラム)も行った.その結果,装置感度は約2.5倍となり,測定速度もほぼ2倍にすることができ,プログラムとのマッチングも相当改善させることができた.その後試験運転を経て,昨年暮れより,断層試料に含まれる石英のOSL年代測定方法について,試料の発光の特徴,既知線量に対する復元性,OSLシグナルの消失条件の検討など基本的な実験とトラップ寿命についての理論的な検討を行い,OSL法を活断層に適応する場合の条件をほぼ明らかにすることができた.さらに熱ルミネセンス法とも組み合わせることによって,地震時に断層が発生した熱についても見積もりが立てられる方法について検討した.跡津川断層を用いた事例では,石英は速成分に卓越した試料のみ,年代測定が可能であることが明らかになった.また,これまで跡津川断層について進めてきた年代測定結果はほぼ正しいことが明らかになった.これらの成果を2012年度地質学会やイギリスで開催されたイギリス国内ルミネセンス・ESR学会,第3回アジア太平洋ESRルミネセンス年代測定学会で発表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの活断層年代測定は単に既存の年代測定法を断層試料に適応するだけで,その手法の加熱実験や理論的シグナルの寿命研究が不十分であった.この研究を進めるうえで,申請者もそうであることに気付かされた.そこで,単に年代測定を行うだけでなく,基礎実験や理論的な検討を行うことを中心に進めた結果,石英のOSLは熱に対してきわめて敏感であることが分かった.実験結果では300℃,20秒でOSLシグナルは消滅する.この敏感さは他のどの年代測定法より,この方法が年代測定に優れていることを示している. こうした認識に到達できたことから,今年度の到達目標を十分に達成することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
申請の最終年に当たるので,これまでの成果に基づいて,活断層の年代測定法の手法について現時点での最も妥当な方法を明らかにし,これに基づいて,いくつかの活断層に対して年代測定を試みる.そして,これらを通して,OSL法を活断層年代測定に用いる手法を提唱したい.そのため,論文作成を一つの柱に進めたい.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
装置改善についてプログラム改善がなお必要なので,この点に費用を利用したい.また,跡津川活断層試料をさらに採集するための旅費や成果発表の学会旅費として利用する.
|