2013 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素錯体による有機π電子系の機能化とn型半導体の開発
Project/Area Number |
23550050
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 克彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20335079)
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Keywords | 有機導体 / ホウ素 / π電子系 / 半導体物性 / 先端機能デバイス |
Research Abstract |
高度情報化社会の新たなテクノロジーとして有機電界効果トランジスタ(OFET)が注目されている。この鍵となる技術は有機半導体であり、新たなn型半導体の開発が必要になっている。本研究では、ホウ素原子の電子求引性に注目し、ホウ素キレートを有する新規化合物の合成研究を行った。本年度は、パイ電子骨格として拡張型ビチオフェン誘導体とキナクリドンキノン誘導体について研究した。 1.ビチオフェン誘導体の研究では、これまでに良好なn型半導体特性が観測されている。これはホウ素キレートの分極効果に基づいているが、ビチオフェン骨格の正電荷間で生じる静電反発のため、パイ電子系が不安定化することが課題であった。そこで、ビチオフェン骨格に(1)-CH=CH-, (2)-CH=CH-CH=CH-, (3)-C≡C-のパイスペーサを導入した新規物質を合成した。電気化学測定および溶液中の安定性調査から、二重結合をもつ化合物(1)と(2)で静電反発が減少していた。また、化合物(1)において単結晶構造解析に成功し、結晶中ではlayer-by-layer構造の集合体が形成されていた。基板上で同様な集合構造が構築されれば、良好な半導体特性が期待される。現在、電界効果トランジスタによる評価を準備中である。 2.キナクリドンキノン誘導体の研究では、ホウ素錯体の単結晶構造解析に成功した。これにより、長期に渡って不明であった生成物の構造が分かった。この結果、当初予想した物質ではなく、すでに二電子還元されたものであった。目的物質が高い電子親和性をもつため、反応系中で電子を受容したと考えられる。また、生成物を加水分解すると、その後に二電子酸化を受けたキナクリドンキノンが回収された。本研究では、酸化還元を伴うホウ素キレートの脱着サイクルが明らかになった。 以上のように、二つの分子骨格で新しい電子アクセプタの開発に成功した。
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Research Products
(18 results)