2011 Fiscal Year Research-status Report
様々なコア構造を持つ二核鉄ペルオキソ錯体の創製および酸化特異性の解明
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23550071
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古舘 英樹 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (40332663)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 二核鉄ペルオキソ錯体 / 酸化反応性 / 二核化配位子 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
本年度は主に下記3つの研究を行った。1) プロパンジアミン骨格を有する二核化配位子 (Me4-tpdp) のカルボン酸架橋型二核鉄(III)ペルオキソ錯体の酸化反応性の検討を行った。トリフェニル酢酸架橋のペルオキソ錯体は、78 ~ 92 kcal mol-1 の BDE を持つ 9,10-DHA,fluorene,tetralin,toluene,adamantane などの様々な外部基質に対して酸化能を持つことが明らかとなった。このような二核鉄ペルオキソ錯体による様々な外部基質酸化の例はなく、初めての例である。2) これまでに合成例がない(μ-η2:η2-peroxo)二核鉄(III)錯体と高原子価bis(μ-oxo)二核鉄(IV)錯体の創成を試みた。立体的に これらの酸素活性種を生成しやすいキシリルおよびブチル架橋骨格を有する二核化配位子 (Me4-pyxylやMe4-pybu)の bis(μ-hydroxo)二核鉄(II)錯体と酸素分子との反応から、これまでに報告されている酸素活性種とは異なる吸収スペクトルを示す反応中間体の合成に成功した。さらにこの種は、配位子のキシリル基を水酸化することも見いだした。3) プロパンジアミン骨格を有する二核化配位子 (Me4-tpdp) のジクロロ二核鉄(II)錯体と酸素分子との反応から、ジクロロ二核鉄(III)ペルオキソ錯体の合成と結晶構造解析に成功した。このペルオキソ錯体は、トリフェニル酢酸架橋のペルオキソ錯体よりも酸素親和性と安定性が向上していることがわかった。さらに配位子のメチル基の水酸化が起ることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルボン酸架橋型二核鉄(III)ペルオキソ錯体は、外部基質に対して幅広い酸化反応性を示す事を見いだし、さらに別のコア構造のジクロロ二核鉄(III)ペルオキソ錯体の結晶構造解析にも成功した。また、これまでに報告されている酸素活性種とは異なる吸収スペクトルを示す反応中間体の合成に成功し、この種は配位子のキシリル基を水酸化することも見い出している。以上のように本計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
カルボン酸架橋型二核鉄(III)ペルオキソ錯体の外部基質に対してする酸化反応性を速度論的解析やプロダクトアナリシスにより明らかにする。さらに構造解析に成功したジクロロ二核鉄(III)ペルオキソ錯体の外部基質に対する反応性も検討し、二核鉄(III)ペルオキソ錯体のコア構造と酸化反応性の相関を明らかにしてゆく。また、これまでに報告されている酸素活性種とは異なる吸収スペクトルを示す反応中間体のより詳細な分光学的キャラクタライズと酸化反応性の検討を平行して行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
二核鉄(III)ペルオキソ錯体の酸化反応機構の詳細な解明を行うために、同位体ラベリング実験,速度論的研究およびプロダクトアナリシスの実験に必要な同位体試薬などの試薬類を中心に購入する計画である.また、新規に合成した二核鉄ペルオキソ錯体の共鳴ラマンやメスバウア-測定を共同研究により行うために、旅費を申請する計画である.
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