2012 Fiscal Year Research-status Report
高速液体クロマトグラフ質量分析計用大気圧多光子イオン化法の開発と環境汚染物質計測
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23550102
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
八ツ橋 知幸 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70305613)
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Keywords | 多光子イオン化 / ピコ秒レーザー / 芳香族炭化水素 / 大気圧イオン化法 / バックグランドフリー |
Research Abstract |
1.大気圧多光子イオン化の実証 小型ピコ秒レーザー(500 ps, 532 nm)による光イオン化光学系を構築し、光学系および質量分析計の測定条件の最適化を行った。まずシリンジポンプと質量分析計を直結して最適化を行った。集光位置の最適化には時間を要した。原因は最適なレーザー集光位置が当初の予想とは異なり、試料吹き出し口直下ではなく、質量分析計のイオン室入口寄りでもなく、大気圧イオン化法(APCI)に用いるコロナ放電に使用する放電ピン側であったことにある。最適化後はレーザーのオンによりイオン信号が明瞭に出現し、オフによってイオン信号が完全に出なくなることを確認できた。代表的な試料としてアントラセンを用い、30 ppmまでの定量性の検討を行った。質量分析計側のパラメーターに関しては、APCI法と比べて乾燥ガス流量、乾燥ガス温度の最適値が大きく異なることが分かった。本手法ではAPCIと異なり、溶質を直接イオン化することが原因であると結論した。また、溶離液としてはアセトニトリル/水系よりもメタノール/水系の法が信号強度が大きかった。 2.大気圧イオン化法との比較 高速液体クロマトグラフと質量分析計を連結して最適化を行った。芳香族化合物16種類混合試料のイオン化を行い、スキャン測定ではAPCI法とほぼ遜色のない結果を得た。さらに、APCI法ではバックグラウンドの信号が顕著であるのに対し、本手法ではバックグラウンド信号は完全に0であり、バックグラウンドフリーの測定を達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は本研究の目的に掲げた「1.非共鳴多光子イオン化部の製作が既存の装置の最小限の改造で出来ることを示す」、「2.感度・選択性が大気圧光、および化学イオン化法と比べて異なることを明らかにする」、「4.溶媒のイオン化や目的イオンの分解を抑えることができることを示す。」ことをおおむね達成した。但し、「3.イオン収量のレーザー強度依存性を調べることでイオン化機構を明らかにする」に関しては多光子イオン化に期待されるレーザー強度依存性とはならなかったが、体積効果のためであると結論できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の目的に掲げた最後の課題である「5.適切なドーパントの選択により感度向上が達成できることを示す」に関して集中的に研究をすすめる。また、研究計画に掲げた「1.ピコ秒レーザーによるイオン化部の構築と最適条件の探索」がおおむね達成できたため、「2.ドーパント効果の検証と最適化」および「3.種々の分子の検出感度に関するデータの蓄積」に関して、さらに多様な分子を対象として実験を行い、結果を整理することにより、本手法の有効性の範囲を明らかにすることに重点をおく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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