2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550103
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
西野 智昭 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (80372415)
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / 分子探針 / 相互作用 / 電子移動 / 分子エレクトロニクス / DNA / バイオセンサ |
Research Abstract |
本申請研究では、これまで申請者らが開発してきた分子探針を用いた走査型トンネル顕微鏡(STM)をもとに、単分子とそれに近接した単分子との界面における電子移動を測定できる初めての手法を開発する。上記の電子移動は、自己組織的に分子を集積化するボトムアップ型分子デバイスに本質的に関与するため、本研究はその実現に大きく貢献するものである。様々な単一分子/単一分子界面での電子伝導を計測し体系的理解につなげるとともに、化学物質の添加などによる電子移動のスイッチングなどの新規現象を探索する。さらに、応用研究として、DNA二本鎖形成時の電子伝導変化について検討する。DNAの電子物性は多数の研究がなされているものの、単一分子レベルでの導電性等の特性は知られていない点が多い。一方、遺伝子診断に基づく質の高い医療活動(テーラーメード医療)の実現のために、より迅速なDNA解析技術が必要とされている。そのためには、単一DNAレベルでの特性を計測し理解することが欠かすことができない。そこで、本申請研究では、DNA二本鎖が形成される際の動的な電子伝導変化を単一分子レベルでその場計測する。相補、非相補による電子伝導の違いを明らかにすることによって、新規DNA診断デバイスの検出原理として提案する。本原理は、単一分子のシークエンシング技術として注目を集めているナノポアなど次世代DNAシークエンサにおけるDNA塩基配列の識別・検出法として有用なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に得られた知見に立脚して、単一分子間における電子伝導についてさらに詳細に検討した。平成23年度には、末端にカルボキシル基を有する単一分子-単一分子の界面において、二つの分子間に形成される水素結合により有利な電子移動が生じることを明らかにした。今年度は同様の単分子間界面に二価金属カチオンを添加し、同様の計測を行った。その結果、金属イオンがカルボキシル基間に配位結合を形成し、電子移動がさらに容易に進行することを明らかにした。この現象を利用し、単一分子-単一分子間において、金属イオンによる電子移動のスイッチングを実現することに成功した。上記は、当初申請書に記載された今年度計画に沿ったものであり、期待通り、単一分子間における電子伝導に関する詳細な知見、および新奇現象に基づく機能化を実現することができた。 さらに、電荷移動相互作用を形成する単一分子-単一分子間における電子移動の計測を行った。電子供与性分子としてポルフィリン、受容性分子としてフラーレンを用いた。後者をAu製STM探針に修飾し分子探針とし、平成23年度まで開発した単一分子-単一分子における電子移動の計測法に基づき、ポルフィリン-フラーレン分子間の電子移動について検討した。空間的に近接した電子供与体と受容体が整流作用を示すことは本研究代表者らがすでに実証している。本研究では、さらにこの整流作用を単一分子レベルにおいて定量的に評価することに成功した。 以上のように、当該年度に予定していた研究計画に加え、新たな研究項目を追加し成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
応用研究として、微小DNA診断デバイスの創製を指向して、DNAの塩基対形成に伴う電子伝導変化を計測する。DNAの電子物性は多数の研究がなされているものの、単一分子レベルでの導電性等の特性は知られていない点が多い。一方、遺伝子診断に基づく質の高い医療活動(テーラーメード医療)の実現のために、単一DNAレベルでの特性を計測し理解することが求められている。そこで、本研究によってDNA二本鎖が形成される際の動的な電子伝導変化を単一分子レベルでその場計測し明らかにする。相補、非相補による電子伝導の違いを明らかにすることによって、新規DNA診断デバイスの検出原理として提案する。 具体的には、数merの一本鎖オリゴDNAを試料、分子探針として用いる。これまでと同様に、両者を近接させ、二本鎖形成に伴う動的な電子伝導の変化を計測する。本研究では、昨年度までに、ミスマッチやメチル化の有無による特性の違いをすでに明らかにした。今後は、検出方式の改善を行う等により、本原理に基づく遺伝子診断デバイスの実用化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の実施のために必要な設備備品はすでに整備されている。そこで、STM下地探針やAu(111)基板の作製のために必要なAu線、粒などの消耗品の購入に研究費を使用する予定である。また、上述の通り、本申請研究は、当初の予定を大幅に超え成果が多数得られているため、種々の学術講演会などにて積極的に成果発表を行うため旅費としても使用する。
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