2012 Fiscal Year Research-status Report
親電子的反応性をもつ活性二酸化炭素種の調製と炭素-炭素不飽和結合への固定化
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23550115
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 徹太郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70241536)
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Keywords | 二酸化炭素 / 活性化 / カルボキシル化 |
Research Abstract |
本研究の目的は,AlX3/R3SiXにより活性化されたCO2の安定性や反応性を調べ,カルボキシル化の基質適用性の拡大を図ること,また,CO2の活性化と固定化の新たな方法を開発することである。本年度は,昨年度の実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」に記載した3,4について検討し,下記の結果を得た。 3.AlX3/R3SiXで活性化されたCO2種に与える酸性度の影響の調査と基質適用性の拡大に関する検討 CO2をAlX3/R3SiXで活性化したのちに,反応液を種々の条件下で中和し,活性種の存在をIRで確かめる実験を行ったが,活性種と考えられるクロロギ酸シリルに帰属される吸収は認められなかった。そこで,クロロギ酸シリルを別途合成して酸に対する安定性と求電子反応性を調べるべく,ホスゲンとシラノールの反応を試みたが,合成できなかった。 4.R3SiB(C6F5)4で活性化されたCO2種によるカルボキシル化の基質適用性の検討 芳香族化合物について基質適用性を調べたところ,10種類のアレーン類で対応するカルボン酸が,R3SiB(C6F5)4の合成に用いたR3SiHを基準として37~100%の収率で得られた。この成果は,Chem. Lett.紙に速報した。また,ヘテロ芳香族化合物では,インドール類は反応しなかったが,ベンゾチオチオフェンやチオフェン類が,低収率ながらカルボキシル化できることがわかった。また,オレフィンも,置換基を工夫して重合を抑えれば,カルボキシル化できる可能性が示された。これは,CO2を親電子的に活性化して,芳香族以外の有機化合物に固定化した世界で初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3SiB(C6F5)4を用いるCO2の活性化と固定化については,計画通りに研究が進んでいる。AlX3/R3SiXを用いる反応については,Lewis酸の存在下でクロロギ酸シリル(活性種)の生成は平衡反応であり,異なる酸性条件下での活性種の安定性や反応性を追うことは難しいことがわかった。しかし,すでに,R3SiB(C6F5)4を用いるCO2の活性化が,塩基性条件下でも進行することを見出している(昨年度の「研究実績の概要」参照)ので,今後の研究に支障はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,若干の研究費を繰り越すことになったが,これは年度末の学会発表旅費が未精算になっているためであり,計画通りに予算を使用している。 5.R3SiB(C6F5)4で活性化されたCO2種によるオレフィン類のカルボキシル化 今年度,その可能性が示されたオレフィン類のカルボキシル化について,基質や反応条件について詳細に調べる。 6.R3SiB(C6F5)4によるCO2活性化法の他の親電子的反応への展開 R3SiB(C6F5)4によるCO2の活性化法を利用して,CO2を親電子試薬とする新たな反応(例えば,向山反応や櫻井-細見反応など)を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オートクレーブ補修部品の購入および基質の合成やカルボキシル化のための薬品・溶剤・クロマト用ゲルの購入に900,000円と昨年度の最終残金,成果発表および資料収集のための旅費に200,000円を充てる予定である。
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