2011 Fiscal Year Research-status Report
可視光駆動型ハイブリッド触媒の創製とエネルギー・物質変換
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23550125
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶌越 恒 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00284539)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ビタミンB12 / 酸化チタン / 水素発生 / アルケン還元 / コバルト錯体 / ヒドリド錯体 / ゾル-ゲル反応 / 高耐久性 |
Research Abstract |
当該年度は、水素発生および物質変換反応を触媒するハイブリッド型酸化チタンの作製と機能評価について検討を行った。まず側鎖にトリアルコキシシリル基を有するビタミンB12誘導体を合成し、本錯体を酸化チタンの表面に化学修飾したハイブリッド触媒の作製に成功した。ハイブリッド触媒は、電子顕微鏡観察、元素分析、赤外分光法、拡散反射電子スペクトルおよび質量分析スペクトルにより同定した。本ハイブリッド触媒は、表面ゾルーゲル法でハイブリッド化されているため高い耐久性を保持していた。本触媒を用い、エチレンジアミン4酢酸塩水溶液からの光水素発生を検討したところ、24時間で約100マイクロLの水素の生成が確認された。ビタミンB12錯体あたりの単位時間あたりの触媒回転数は、約1回/1時間であった。暗所下やビタミンB12を有しない原料酸化チタンを用いた場合では水素発生はほとんど観測されないことから、ビタミンB12と酸化チタンの複合化により本光水素発生反応が進行しているものと言える。また基質としてスチレンなどのアルケン類存在下で光照射反応を行うと、水素発生は完全に抑制され、アルケンの還元および還元二量化反応が進行した。従って、これらの反応の中間体として、コバルト-水素結合を有するコバルト-ヒドリド錯体が生成しているものと推察された。以上当該年度において合成に成功した本ハイブリッド触媒は、水素発生(エネルギー変換)のみならず、基質還元を行う物質変換能も有することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、触媒反応時に問題であった高い耐久性を有するハイブリッド触媒の作製を第一目標とし、共有結合でビタミンB12誘導体と酸化チタンを連結した複合触媒の作製を行った。当初の目標通り、作製した共有結合型酸化チタンは高い耐久性を有し、広いpH領域でも脱色せず、また触媒反応後も安定に存在していた。また本触媒の反応性を評価するために、紫外線照射下における水素発生能を検討したところ、目的通り水の光還元による水素発生が進行することを確認出来た。本光水素発生が予想通り進行したことを踏まえ、中間体として生成しているコバルト-ヒドリド錯体の還元力を利用したアルケン類の還元反応においても、ねらい通り進行することを見出せた。従って、当該年度の研究の目的における達成度としては、「耐久性の獲得」、「水素発生によるエネルギー変換」、「物質変換反応」を有するハイブリッド触媒の合成に成功したことから、当初の目的を十分に達成した成果と自己評価する。一方では、可視光応答化については今だ未達成であることから、次年度の最優先課題として集約して研究を推進する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したハイブリッド触媒を用い、引き続き水素発生反応の条件検討や、アルケン還元反応における基質汎用性について検討を行う。またアルケン類以外にも、アルキン類やイミン類の還元反応等についても検討を行う。またプロキラルな基質アルケンを用いることで、得られた還元体は不斉中心を保持しうるので、不斉還元反応についても検討する。また本ハイブリッド触媒に可視光応答性を保持させるため、各種色素を共固定化したハイブリッド触媒を作製し、温和で省エネルギーな可視光応答型ハイブリッド触媒の開発を行う。また可視光応答化として、ナフトラート類を酸化チタンの表面に修飾した界面錯体型酸化チタンを作製し、その可視光応答性を評価し、引き続きビタミンB12を修飾させ、目的の可視光応答型ビタミンB12-酸化チタンハイブリッド触媒の開発を行う。得られた触媒を用い、可視光照射時における水素発生能やアルケン還元能について評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続きハイブリッド触媒の開発を行うため、原料となるビタミンB12などの化合物などの試薬代金、また各種有機合成用試薬を購入予定である。また物質変換反応を評価するにあたり、クロマトグラフ類のカラムが必要であり、購入予定である。また研究成果を国内外の学会にて発表し、関連研究者との意見交換を行うため、学会参加旅費として予算執行予定である。また得られた成果を学樹論文として発表するに辺り、その英文添削費および論文別刷り代金として予算計上する。
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Research Products
(11 results)