2011 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化ポルフィリン集合体の構造制御と複合機能化に関する研究
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23550153
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐々木 健 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (20205842)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | シクロデキストリン / ポルフィリン / 超分子 / 自己組織化 / 光合成 |
Research Abstract |
生体系における分子認識過程や組織的構造体の形成において,非共有結合性の弱い相互作用は重要な役割を担っている。また,光合成系における光集光-電荷分離システムは,多数のポルフィリン様クロモファー分子が非共有結合性相互作用により規則的に配列して集合体を形成した代表的な大規模自己組織化体である。このような巨大分子系の人工的な再構築は,光合成系の理解という直接的な視点に加えて,大規模機能分子組織体形成のための方法論の開発といった観点からも重要である。本研究では,申請者らが見いだしたシクロデキストリンの包接能を利用したポルフィリン多量体を利用したエネルギー集光と電荷分離システムの自律的形成をめざした。基本となるシクロデキストリン結合型ポルフィリン分子として,o-置換テトラフェニルポルフィリンを取り上げ,それのアトロプ異性体の合成とそれによる集合体形成能を調査した。これらはテトラフェニルポルフィリンテトラスルホン酸塩(TPPS)との自己組織化により3個のポルフィリン分子より構成される構造体を形成した。構造体について次の点を中心に構造解析、光化学過程の解明および特性解析を行なった。ホストCDとゲストから形成される自己組織化構造体の分光学的手法による構造決定。光エネルギー集光-エネルギー移動機能を有する自律的分子集合体構築とエネルギー移動過程の静的解析。同集合体におけるエネルギー移動過程の蛍光寿命測定による動的解析。以上の研究により自己組織化体の形成には立体的な自己包接反応の制御がきわめて重要であり,これをコントロールすることで位置配置や自己組織化分子数を制御できることを示した。また,より多数のシクロデキストリンを有するポルフィリンの合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,シクロデキストリンの包接能を利用した自己組織化体を基礎にして,各分子要素の自律的な集合および組織化によって空間配置の自由な制御と構造規制された光合成系類似の三種の機能分子からなる光集光―電子移動システムの構築を目指し,本年度は以下を明らかにした。【1】シクロデキストリンとポルフィリン両方を持つホスト分子を合成し,これと水溶性ポルフィリンとの錯形成過程の詳細な解析を行い,これを基にして環状ポルフィリン集合体を基本骨格とする三次元構造体の自発的形成のためのシステムの必要要件を明確にすることができた。【2】水溶液中で複数の異なった金属ポルフィリン分子を非共有結合性相互作用により自律的に特定の位置に配置し,構造の定まったポルフィリン組織体を形成させ,その機能を発現させることに成功した【3】多数の異種ポルフィリン分子がそれぞれ特定の役割を分担しあう連続的な制御反応場の設計と構築のための手法の確立についての足掛かりが得られた【4】光合成系における光エネルギー移動-電荷分離システムのモデル化にとどまらず,将来の光デバイスなどの開発につながるナノサイズ構造体のボトムアップ的構築法に新しい分子設計指針を与えることができた
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Strategy for Future Research Activity |
(1)より多数のシクロデキストリンを有するポルフィリンホスト分子の合成手法を確立する。(2)得られた自己組織化体の構造について,紫外可視分光学的に検討し,平衡過程の解析から化学量論と結合定数を決定する。また,小角X線散乱,NMRを用いる分子サイズならびにGPC等の分子量測定で構造を確定する。(3)上記自己組織化体のおける光エネルギー移動過程の動力学的解析をおこなう。(4)シクロデキストリンと1つの電子受容性基を持つホスト分子アトロプ異性体の合成法を確立するとともにTPPSとの自己組織化体形成を確認する。(5)自己組織化体内での光エネルギー移動過程の解析と電子受容体内への電子移動過程を検討するために基礎的研究を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・H23研究費の繰越すこととなった理由(繰越研究費が生じた状況)ホスト分子のアトロプ異性体分離精製が困難であり,また,その手法の確立がきわめて重要であったため,当初計画になかった HPLC用のPDA検出器を導入した。そのため当初の予算との差額が生じた。また,海外での学会出席を取りやめたことにより旅費に差額が生じた。・H23繰越額のH24における使用計画ホスト分子の合成と精製ならびにESI-MSにより構造決定に必要なHPLC用カラムの購入に充てるとともに,海外での情報収集のための旅費に使用する。・H24研究費の使用計画おもに,ホスト分子の合成と分離精製ならびに構造解析のための試薬ならびに実験機器類の購入に充てる。動力学解析のための蛍光寿命測定に必要とされる光学部品,レーザー用消耗品の購入に充てる予定である。また,国内外の学会に出席して成果発表を行う。
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Research Products
(13 results)