2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550179
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
岩佐 精二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30303712)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 微量環境物質評価 / 残留農薬 / 抗体 / 免疫的化学測定法 / ELISA / モノクロナール抗体 / イムノアッセイ / 機器分析 |
Research Abstract |
残留農薬の微量分析は、煩雑な前処理の後に、液体クロマトグラフや質量分析、あるいはそれらの連動した複合的、総合的分析機器類などの高価な分析装置に頼ると同時に分析場所も限られ、自在な分析方法とはほど遠く、総じて長時間の分析期間が必要であることがほとんどである。このような状況は、必然的に農薬の環境負荷物質としての側面である健康被害や社会的問題として表面化した後に、対応が図られる場合がほとんどである。加えて農薬のポジティブリスト制への政策的移行により、残留農薬の迅速な分析法の開発が求められている。 本研究は、免疫的化学測定法(イムノアッセイ)を利用した簡便、廉価、迅速、高精度、自在な測定環境などの特徴を有する低分子残留農薬分析法の確立を目的として研究を行っている。すなわち低分子農薬に触媒的手法を用いてリンカーを導入し、巨大蛋白と結合させてマウス免疫することで分子センサーとしての標的農薬特異的なモノクロナール抗体を作成する。得られる抗体の分析精度をppm~ppbレベルの水準を目標として低分子残留農薬分析法の確立をする。平成23年度では抗菌剤として用いられているアゾキシストロビン農薬の免疫的化学測定法を確立し、市販に至った。本研究で確立される技術は高価な機器分析に比べて多くの利点を有し、環境監視や健康の維持に大きく貢献する。機器分析が高価で時に煩雑な前処理や熟練技能を要するのに比べて、免疫的化学測定法は、原理的に生物機能としての抗原抗体反応を利用し、迅速で簡便・廉価な点に於いて有用であり、微量で特異的に標的物質の定性や定量が可能である。さらに自在な分析環境を提供しうる点において既存の総合的機器分析システムに比べて大きな利点がある。また使用有機溶媒も劇的に減少することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究で免疫的化学測定法(イムノアッセイ)を利用した簡便、廉価、迅速、高精度、自在な測定環境などの特徴を有する低分子残留農薬分析法の確立を目的として研究を行った結果、ビスオキサゾリニルフェニル-Pd系触媒を用いて低分子農薬であるアゾキシストロビンにリンカーが導入された誘導体を全合成し、スカシ貝由来のキャリヤー蛋白と結合させてマウス免疫することでアゾキシストロビン標的農薬に特異的に認識するモノクロナール抗体を世界で初めて単離することができた。この純度の高い抗体を生産する細胞をさらに細胞融合技術により増殖させ抗体を生産させることに成功した。このことによりアゾキシストロビン農薬の免疫的化学測定法を確立し、市販に至った。分析精度はppm-ppb水準に達する。本研究で確立された技術は高価な機器分析に比べて多くの利点を有し、環境監視や健康の維持に大きく貢献する。機器分析が高価で時に煩雑な前処理や熟練技能を要するのに比べて、免疫的化学測定法は、原理的に生物機能としての抗原抗体反応を利用し、標的分子の認識に特異性が高く、迅速で簡便・廉価な点に於いて有用であり、微量で標的物質の定性や定量が可能である。さらに自在な分析環境を提供しうる点において既存の総合的機器分析システムに比べて大きな利点がある。また使用有機溶媒も機器分析に比べて劇的に減少することができた。従って研究はおおむね順調に進行していると考えられる。しかし標的農薬は700種以上で日々新規農薬が登録されている現状で、今後も活発なセンシング技術の進展が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度実績をふまえ研究は2段階で進行する。第一段階は精密有機合成化学を基盤としたハプテン群の全合成であり、第二段階は抗体作作成である。実用に耐えうる感度(ppmレベル)の抗体が得られるまでハプテン合成の最適化を行う。 具体的にはハプテン群を触媒的炭素-炭素結合生成反応を利用して合成する。即ち、(Phebox- or Pheox-Pd)がハロゲン化アリールとアリールボロン酸との反応において効率的にアリール/アリーカップリング生成物が生成する。(鈴木-宮浦反応)この独自に開発した触媒を用い、ヘック-溝呂木反応や薗頭反応に応用し、様々なアリールハロゲン構造を有する殺菌剤、殺虫剤などのアクリル系カルボン酸リンカーを導入する。さらに、Phebox-Ruが触媒的炭素-炭素結合生成反応においてジアゾエステル類の触媒的カルベントランスファー反応における優れた触媒であることを見出しており、リンカー導入が可能であることから、ハプテン群合成に応用する。その後、標的低分子農薬である有機化合物をアルブミンやスカシ貝KHL等の担体蛋白質に共有結合させて高分子標的に変換し、これを免疫源とする。暫時得られたハプテン群はマウス免疫により抗体作成を行なう。初期段階で得られる抗体はマルチクロナール抗体で感度が低いため、標的抗体のみを単離し細胞融合により増殖させモノクロナール抗体を単離精製する。得られた抗体はモノクロナール抗体としてELISA法にセットアップする。即ち図に示したような原理に基づき直接ELISA法による標的農薬の分子センサーとして免疫測定法が完成する。なお成果が得られたときは随時、国内外学会発表、論文発表、特許申請等を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究成果をふまえ平成24年度はハプテン合成に必要な消耗品(合成に必要な薬品や触媒、ガラス器具など)や抗体精製評価費用などにより研究を推進する。具体的には、配位子合成、錯体合成、標準農薬、農薬誘導体合成および該当有機合成化合物類の分離精製、得られた成果の情報発信(論文、特許、国内外の学会発表など)に関わる費用として使用される。
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