2012 Fiscal Year Research-status Report
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23550179
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
岩佐 精二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30303712)
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Keywords | ELISA / モノクロナール抗体 / イムノアッセイ / 触媒 / ルテニウム / アゾキシストロビン / 残留農薬 / センサー |
Research Abstract |
本研究は、免疫的化学測定法(イムノアッセイ)を利用した簡便、廉価、迅速、高精度、自在な測定環境などの特徴を有する低分子残留農薬分析法の確立を目的として研究を行っている。農薬そのものはその低分子量ゆえに単独では免疫反応を起こさず、抗体が得られない。したがって低分子農薬に触媒的手法を用いてリンカーを導入(ハプテン)し、巨大蛋白と結合させてマウス免疫することで分子センサーとしての標的農薬特異的なモノクロナール抗体を作成する。得られる抗体の分析精度をppm~ppbレベルの水準を目標として低分子残留農薬分析法の確立をする。 今年度は汎用抗菌剤であるアゾキシストロビン残留農薬センサー開発を行った。アゾキシストロビンハプテン群合成に伴い、高効率的炭素ー炭素結合形成触媒の開発やルテニウム系触媒を用いる触媒的不斉カルベン移動反応などを開発した。その後、アゾキシストロビンハプテンと巨大蛋白との結合体のマウス免疫により標的農薬特異的モノクロナール抗体を得ることに成功した。さらにこれをELISAに応用して、アゾキシストロビン残留農薬測定キットを完成し市販することに成功した。アゾキシスとロビン農薬への感度は数ng/mLから1000ng/mLであり広域濃度に対応する特徴的なセンサーとなった。これらの残留農薬センサーキットは農業試験場などで再試験され有用であることが実証されている。本研究で確立される技術は高価な機器分析に比べて、初期の目標設定である簡便、廉価、迅速、高精度、自在な測定環境での実装を持つことなどの多くの特徴を有し、環境監視や健康の維持に大きく貢献するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究目的を達成するため研究は2段階で進行する。即ち、第一段階は精密有機合成化学を基盤としたハプテン群の全合成であり、第二段階は抗体作作成である。ハプテン合成はELISA法による標的農薬の選択的定性・定量を達成するために、リンカー導入分子の設計が極めて重要である。実用に耐えうる感度(ppmレベル)の抗体が得られるまでハプテン合成の最適化を行うと同時に,適切な抗体が得られたときはと直ちにキット化し実用化する。触媒合成は報告した方法によってビス(オキサゾリニル)フェニルパラジウム(Phebox-Pd)およびオキサゾリニルフェニルルテニウム(Phebox- or Pheox-Ru)を合成し、触媒活性を同時に検討するためカウンタ-アニオンを変化させた系(BF4-, PF6-, OAc等)や配位子の芳香族環上置換基を電子供与基や電子吸引基を芳香族環に有する系を併せて合成した。さらにPhebox-Ru系触媒では芳香族環にカルボニル基やヘテロ原子が直結した農薬系で直接的にオルトメタレーションを経由してカルボニル基末端を有する側鎖を導入する検討を行った。その結果、アゾキシストロビンハプテン群合成に伴い、高効率的炭素ー炭素結合形成触媒の開発やルテニウム系触媒を用いる触媒的不斉カルベン移動反応などを開発した。その後、アゾキシストロビンハプテンと巨大蛋白との結合体のマウス免疫により標的農薬特異的モノクロナール抗体を得ることに成功した。これらの成果は、論文に掲載され( J.Agricultural and Food Chemistry, 2012, 60, 904)、さらにアゾキシストロビン残留農薬センサーキットとして市販されるに至った。加えて農業試験場などで再試験され有用であることが実証されている。従って、本研究に関する達成度は十分に当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
社会の進歩と共に拡散する農薬などの様々な環境負荷化学物質が健康や生態系に及ぼす影響が懸念されている。これらの物質については、排出源を管理することが最も重要であるが、その手段として環境中での存在を常に監視するモニタリングが必要となる。 農薬は現在700種以上が報告され、その多くが活性水素やハロゲンを含んでいることに特徴がある。これらの官能基性農薬の特徴に着目し、独自に開発した触媒を用いるリンカー導入方法(鈴木-宮浦反応、、カルベンの触媒的NHおよびOH挿入反応)を応用してハプテン群の合成が可能である。一般に、哺乳動物は分子量1万以下の低分子化合物に対しては免疫応答を起こさないとされている。そこで標的低分子農薬である有機化合物をアルブミンやスカシ貝KHL等の担体蛋白質に共有結合させて高分子標的に変換し、これを免疫源とする。暫時得られたハプテン群はマウス免疫により抗体作成を行なう。初期段階で得られる抗体はマルチクロナール抗体で感度が低いため、標的抗体のみを単離し細胞融合により増殖させモノクロナール抗体を単離精製する。しかしマルチクロナール抗体での感度が高くなればさらに廉価にセンサーを開発することが出来る。このことから今後はマルチクロナール抗体とモノクロナール抗体の両者を比較検討しながら残留農薬センサー開発を続けていく。加えて原理的に抗原抗体反応を利用する限り単項目センシングに限られるが多標的残留農薬センシングの開発も併せて開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
期間内に(1)低分子農薬としてメタミドフォス類、抗菌剤系に標的を絞り様々な農薬群に触媒的手法によりカルボキシル基を有するリンカーを導入しハプテン群を合成する。(2)得られたハプテン群は暫時、巨大蛋白と結合させマウス免疫に提供し、モノクロナール抗体作成を行なう。得られた抗体はモノクロナール抗体としてELISA法にセットアップする。即ち標的農薬の分子センサーとして免疫測定法が完成させる。期間内で10程度の農薬特異的抗体作成を目指す。(担当:岩佐、堀場製作所(株)平成24年3月―平成25年12月) なお成果が得られたときは随時、国内外学会発表、論文発表、特許申請等を行なう。
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Research Products
(7 results)