2011 Fiscal Year Research-status Report
分子間力制御によるナノカーボン材料の光機能性可溶化剤
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23550215
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高原 茂 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (90272343)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ材料 / ナノチューブ・フラーレン / 反応・分離工学 / 超分子化学 / 可溶化剤 |
Research Abstract |
ジオクチルヘテロコアジアンスロンやジプロピルヘテロコアジアンスロンなどの光機能性可溶化剤候補のジアルキルヘテロコアジアンスロン誘導体を合成し,カーボンナノチューブの可溶化について調べた。その結果,興味深いことに,有機溶媒であるクロロホルム中でジオクチルヘテロコアジアンスロンは混ぜただけで単層カーボンナノチューブと錯体を形成して沈殿してしまうのに対して,アルキル鎖の短いジプロピルヘテロコアジアンスロンによってカーボンナノチューブが可溶化できることを見出した。さらにジプロピルヘテロコアジアンスロンでは可溶化した単層カーボンナノチューブの分散溶液から可視光照射によりカーボンナノチューブが析出することが観察された。これは,まだ一例にすぎないがジアルキルヘテロコアジアンスロン誘導体が光機能性可溶化剤として作用することが明確に観測された初めての例であり,大きな進展を得ることができた。また,このようにアルキル鎖長のような単純な分子構造の差により可溶化や光析出の現象が大きく異なることから機能性分子設計上も興味ある結果が得られたと言える。 したがって,分子間力の変化にもとづく可溶化-不溶化メカニズムによるナノカーボン材料の光精製と光パターニングの原理検証の道筋ができた。この結果を受けて,薄膜形成のためのLED光源の購入など光パターニングの準備を始めた。 一方,これらの化合物が有機溶媒系の光機能性可溶化剤であるのに対し,水系での光機能性可溶化剤も並行して検討した。アントラセン-2-スルホン酸ナトリウム,9,10-ジフェニルアントラセンジスルホン酸ナトリウムなどのアントラセン誘導体が単層カーボンナノチューブを水に可溶化することについて学会発表をおこなった。さらに水溶性のヘテロコアジアンスロンの目標化合物を設計し,途中段階まで合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的のひとつである「分子間力の変化にもとづく可溶化-不溶化メカニズムによるナノカーボン材料の光精製と光パターニングの原理的な検証」では実際に現象を起こす光機能性可溶化剤例を見出すことができ,研究は大きく進展した。 しかしながら光機能性可溶化剤候補物質の有機合成では苦労しており,現在ジアルキルヘテロコアジアンスロン誘導体を大量には合成することができない。そのため,溶液濃度と単層カーボンナノチューブの溶解量との関係や溶媒との関係を明らかにすることや,紫外可視分光スペクトルや核磁気共鳴スペクトル(NMR)における化学シフトなどの実験結果と分子モデリングによる会合状態の対応と相互作用の推定の検討はやや遅れている。会合した物質や分離できたナノカーボン材料についての分析も十分な量が得られていないためやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
光機能性可溶化剤化合物の有機合成が研究の律速になっているため,ジプロピルヘテロコアジアンスロンの合成や他の水溶性のヘテロコアジアンスロンなどの光機能性可溶化剤候補化合物の合成をより効率的に進めるための手法を講じる。 ジプロピルヘテロコアジアンスロンで成果がでているので,この化合物を中心に溶液濃度と単層カーボンナノチューブの溶解量との関係や溶媒との関係,紫外可視分光スペクトルや核磁気共鳴スペクトル(NMR)における会合体の化学シフトなどの基礎的な会合現象の測定,分析を行い,さらにはグラフェンや単層カーボンナノチューブ以外のカーボンナノ材料,例えば,いくつかの難溶性縮合芳香族化合物の光分離・光パターニングの可能性の検討を先行して行う。特に光パターニングによる薄膜形成は材料的立場から重要であると考えており,今後注力する。 一方,水系での光機能性可溶化剤も並行して検討しているが,国内外の競争が激しく,独自性を保持できるか予断をゆるさない状況であるが,スルホ基を有するアントラセン誘導体が単層カーボンナノチューブを水に可溶化した成果を基礎に水溶性のヘテロコアジアンスロンを目標として有機系と比較した分子設計ができるように研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定にほぼしたがって,光機能性可溶化剤化合物の合成をより効率的に進めるために分取用カラム装置(中圧送液ポンプ,フラクションコレクターなど)をできるだけ速やかに購入し,有機合成を加速する。また,欧州でのIUPAC国際会議や国内でのアジアオセアニア光化学会議などの大規模な国際会議に参加し,本研究成果を積極的に発表する。
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Research Products
(3 results)