2012 Fiscal Year Research-status Report
電子ビーム誘起方位選択エピタキシャル成長による薄膜の複合面方位構造形成
Project/Area Number |
23560028
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Research Institution | Iwaki Meisei University |
Principal Investigator |
井上 知泰 いわき明星大学, 科学技術学部, 教授 (60193596)
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Keywords | 結晶成長 / 超薄膜 / 表面界面物性 / 方位選択エピタキシ / 電子ビーム照射 / 複合面方位 |
Research Abstract |
初年度に引き続き、既存の低速電子ビーム源と試料吸収電流像(AEI)表示システムを利用して、試料表面上の電子ビーム照射位置を制御し、電子ビーム誘起方位選択エピタキシャル成長実験を行い、CeO2(100)と(110)領域間の遷移領域の大きさを支配している基板表面電位の拡がりを決定する要因の解析を進めた。 これ迄の内径 3 mmから1 mm のアパ―チュアに交換して電子ビームを細径化し、複合面方位基板形成の実験を進めた。Si(100)基板の比抵抗による遷移領域幅の変化を詳細に調べた。実験に使用したSi基板の比抵抗範囲は、0.01 から 2,500 Ωcm と広く取った。これらのSi基板上に複合面方位構造を形成し、産業技術総合研究所の高分解X線回折装置を用いて、試料面内の結晶方位分布の精密測定を行った。遷移領域の幅は基板の比抵抗の対数に比例して減少することが分かった。つまり低抵抗基板の採用によりビーム径程度乃至それ以下の幅まで縮小することができた。 絶縁層上シリコン膜(SOI)基板をパターンニングして、Si(100)層を島状構造に加工して、Si島の外への表面電位変調効果の伝搬を阻止する研究を進めるために、リソグラフィー技術を用いて、SOI基板をパターンニングする方法を開発した。Si層と埋込み酸化膜の厚さがそれぞれ 88, 145 nm のSOI基板を用いた実験を進め、一応、電子ビームを照射した島((100)方位)から離れた島に渡って結晶方位分布が変化する結果が得られた。しかし、隣接する島が完全には(110)方位とならなかった。これは島と島の間のリソグラフィーにより形成した溝での電気的絶縁が不十分であったことが原因と推察される。次年度にSi層と埋込み酸化膜の厚さを増したSOI基板を用いて、結晶方位の完全分離を目指すための試料構造の検討や溝のエッチング法の検討などの準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災の影響での装置トラブルは全面的に解消したが、装置の老朽化に伴う自然故障が相次いで起こった。真空排気系のロータリーポンプとその継手やバルブ、ターボ分子ポンプとスパッタリングチャンバー間のゲートバルブ、試料マニピュレータのベローズの真空リークなど枚挙に暇がない。幸い手元にあった交換部品や修理部材を最大限利用して、自力で修理に当たった。(備えあれば憂いなしを実感した。)努力の甲斐があって、これらの故障に全て対応できた。 夏期休暇、春の授業の無い期間や土曜、日曜に実験を行い、本年度に予定していた研究計画は概ね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
二次元パターン方位選択エピタキシャル成長の詳しい実験的検討を継続して進める。以下の3項目について研究を進める。 1)Si基板の比抵抗によるCeO2(100)領域と(110)領域間の遷移領域の幅の変化を更に詳細に調べる。 2)電子ビーム細径化するためのアパーチュアの穴径を最適化し、電子ビーム細径化による遷移領域幅縮小の効果を検証するための実験を進める。 3)リソグラフィーによりパターン化して電気的に絶縁された島状構造に加工したSOI基板を用いることにより、異る面方位を持つ領域間の遷移領域の最小化を図り、領域間の完全分離を目指した実験を進め、この方法の実効性の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一番大きいのは、故障したロータリーポンプや超純水製造装置などの保守、修理に相当な額を充当する。 材料費としては、SOI基板、金属Ceターゲット、真空部品、試料加熱用のハロゲンランプ、電子部品、水配管用部品、ガス、薬品などの実験用品を購入に充てる。 旅費としては、研究成果発表のために海外(フランス、パリ)で開催される国際会議に出席するために、海外渡航費を使う。また、京都で開催されるプラズマとスパッタリングに関する国際会議と応用物理学会などの国内学会への参加にも費用を充当する。
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Research Products
(7 results)