2012 Fiscal Year Research-status Report
負誘電率領域のフォノン-プラズモン共鳴を用いたテラヘルツ波発生・検出の研究
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23560053
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
四方 潤一 日本大学, 工学部, 准教授 (50302237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南出 泰亜 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (10322687)
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Keywords | テラヘルツ波 / 表面フォノン / 表面プラズモン / 表面波発生・検出 / コヒーレンス |
Research Abstract |
前年度の解析結果を発展させ、本年度はニオブ酸リチウム(LN)結晶中のA1対称フォノンモードに着目した表面テラヘルツ放射の研究を進めた。表面微細構造の周期設計のため、振動子強度の大きい2つのモード(250, 630cm-1 = 7.5, 18.9THz)について、表面波モードの数値解析を行った。630cm-1モードについては、基礎理論通り禁制帯内(630~758cm-1)に表面波モードが現れ、表面凹凸構造の最適周期は約7.8umであることを見出した。一方、250cm-1モードにおいては、表面波モードの上限周波数は禁制帯の上限(273cm-1)から異常に大きく外れ、超広帯域(250~491cm-1)に表面波モードが現れることを新たに見出した。この場合の最適周期は約19.3umであり、異常分散特性の原因がLST関係式の破綻にあることを明らかにした。これらは表面フォノンデバイス設計の基盤となる普遍的な新知見である。 さらにデバイス製作については、東北大学ナノテク融合技術支援センターを利用して試作を進めた。本センターの技術支援を得て、微細加工には反応性イオンエッチング(RIE)を選定した。LN基板のRIEは報告例が少ないため、エッチング条件自体が研究課題である。まず解析に基づいてCrマスクを設計・作製し、これを用いてLN基板にレジストパターンを形成(高品質な微細構造パターンの作製も確認)した。さらに、CF4ガスを用いてRIEを行い、接触段差計による周期凹凸構造の観察により、LN基板のエッチングレート約1.3nm/minを見出した。また、光学実験系として非線形光学効果によるテラヘルツ波発生・検出系の構築を進め、有機結晶を用いて約2~26THzまでの広帯域周波数可変テラヘルツ波発生を実現し、常温で26THzのテラヘルツ波検出にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画では、(1)非線形光学結晶への高品位の微細加工(2)表面フォノン光学実験系の構築と放射実験を予定した。上記の実績概要および以下の理由から、本年度の研究計画は、ほぼ予定通り進展したと言える。 まず(1)の微細加工においては、前年度のFDTD解析をさらに発展させ、非線形光学結晶として具体的にLN結晶への微細構造設計のための数値解析を行い、上記の微細加工施設においてマスクの設計・製作とRIEによる微細構造の試作を遂行した。数値解析においては、当初の予想を超えて表面フォノンモードの新知見を得るとともに、種々の非線形光学結晶にも普遍性をもつ周期設計法を確立した。RIEにおいてはエッチング条件が未知であったが、反応性ガスとしてCF4を用いて、最も微細な周期である7.8um付近の周期凹凸構造(深さ約0.1um)の形成に成功するとともに、エッチングレートの具体的数値を明らかにした。ただし、周期凹凸構造の深さとしては約0.4~1umの深さを要するため、長時間のエッチングが必要になる。そこでは、基板帯電によるRIEの不安定動作やRIEのマスクとなるレジストの耐性が新たな課題として見出された。これを克服する方策として、より高い耐性をもつエッチング保護膜(金属膜)、もしくはウェットエッチングの必要性を明らかにした。以上から、微細構造作製のための技術基盤を確立することに成功した。さらに、次年度で研究予定の表面プラズモン共鳴実験に向けて、金属薄膜形成への準備も進めている。 一方、(2)の光学実験については、既存の近赤外光源およびテラヘルツ波発生器を用いてテラヘルツ波発生・検出実験系の構築を完了しており、特に微弱なテラヘルツ波発生にも対応できる高感度なアップコンバージョン型テラヘルツ波検出系を実現した。これにより、次年度で本格的に光学実験を行うための装置系の準備は整った。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、本年度の計画はほぼ予定通り進展した。今後の研究では、当初の計画通りデバイス作製を完了し、表面テラヘルツ波放射・検出および表面プラズモン共鳴の実験を順次推進していく予定である。 研究遂行の鍵となるデバイス製作については、上記のように東北大学ナノテク融合技術支援センターにおいてLN結晶を用いた微細加工に着手し、時間・コストの両面で高効率に微細加工の基礎条件を明らかにし、デバイス実現への見通し得た。引き続き、本施設を利用して共同研究者と共に本格的に非線形結晶基板への微細構造作製を行う。さらに、本施設において近赤外光入射のための基板端面の切断を行い、理化学研究所において結晶端面の研磨を行う。さらに基板の半分の領域にはテラヘルツ帯で光学損失の少ないAu薄膜をスパッタ装置により付与し、このデバイスを用いて光学実験へと移行する。Au薄膜を付与していない部分においては、純粋な表面フォノンモードからのテラヘルツ波放射・検出を行い、Au薄膜を付与した部分については、表面フォノンと表面プラズモンの共鳴効果を実験的に調査していく予定である。得られた光学実験の結果を数値解析結果と比較し、未知のテラヘルツ波-光波の相互周波数変換に関わる光学現象の理解と新知見の発見に努める。さらに、本デバイスの最適化や新応用への検討を進め、本研究の総括を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の実施内容・成果に基づき、次年度では、当初に計画したように、デバイス製作に関する消耗品費として、非線形光学結晶の材料費と微細加工のための施設利用費のために研究費を使用し、所望の高精度デバイス製作を進めていく予定である。また、光学実験においては近赤外の高出力パルスレーザ光の使用に伴って誘電体ミラーや波長変換用の非線形光学結晶等の光学部品の損傷等も起こり得るため、消耗度に応じて必要性が生じた近赤外光学部品を中心に、光学部品を購入する予定である。 さらに、理論解析および光学実験において得た成果を早期に積極的に発表するため、国内での学会発表の旅費使用を予定している。さらに論文発表を積極的に行っていくため、英文校閲費や論文投稿料の使用を予定している。
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