2013 Fiscal Year Annual Research Report
単結晶応力測定を基盤とする変形・再結晶の新しい理解
Project/Area Number |
23560088
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岡田 達也 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20281165)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
英 崇夫 徳島大学, その他部局等, 名誉教授 (20035637)
|
Keywords | 残留応力 / 塑性変形 / 再結晶 |
Research Abstract |
長手方向に<111>結晶方位を有するアルミニウム単結晶試験片をブリッジマン法により直接育成し,放射光施設SPring-8において初期組織解析,引張り試験その場観察,引張り試験後の変形組織解析,焼鈍その場観察,焼鈍後の再結晶粒の結晶性評価を行った.引張り試験におけるひずみ量は8%,16%,24%とした. 初期組織は,結晶成長方向に沿った,小さな角度差(0.数°程度)を有する3つ程度の亜粒界によって亜結晶粒に分けられていることが確認された.このため,変形後の解析においては,各亜結晶粒の初期方位からの結晶方位変化を解析した. 引張り変形中の回折斑点を2次元検出器で観察したところ,ひずみの増大に伴って,最初はほぼ円形であった回折斑点がある方向に伸びる様相を捉えることができた.引張り後の試験片における残留応力は非常に低く,高々10MPa程度と見積もられた.この様な低い残留応力にも関わらず,ひずみ8%~24%の全ての試験片において,480℃(アルミニウムの絶対温度融点の80%に相当)で焼鈍を行うと,再結晶粒が形成した.この様に,転位セル内の残留応力が低いにも関わらず再結晶が起こることから,再結晶粒の起源はセル内には無く,セル間の転位壁に存在することが示唆された. 再結晶粒の結晶性評価においては,引張り変形により与えるひずみ量と,結晶性の間に密接な関係があることが分かった.すなわち,ひずみ量が大きいほど形成される再結晶粒の結晶性は劣る結果となった.これは,再結晶粒形成時に,変形組織と再結晶粒の間の粒界が吸収できる転位の量にある種の限界があることを示している. 今回の実験において,変形に伴う低い残留応力や再結晶粒の結晶性のわずかな相違が確認できたのは,SPring-8での極めて精密な測定によるものである.
|
Research Products
(2 results)