2011 Fiscal Year Research-status Report
剖検例ヒト頸動脈によるプラーク破裂に関わる材料力学情報と病理学情報との関係の解明
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23560091
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 宏 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (00220400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 則行 福岡大学, 医学部, 教授 (20134273)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 頸動脈 / 動脈硬化 / 応力-ひずみ関係 / 伸展試験 |
Research Abstract |
研究室でこれまでに作製した引張り試験機を改良し,水槽を生理食塩水で満たして温度を摂氏37度に保ち,試験片の上下をつかみ具で固定した.自動ステージの細かな移動によって試験片を伸展できるようにした.また,ロードセルで試験片の荷重を測定し,レーザ変位計で上下のつかみ具間の変位を測定した.さらに,デジタルカメラの動画機能を用いて外から試験片形状を撮影した.荷重の容量は2Nとし,ひずみの上限を0.8以下とした. 分岐前後の総頸動脈と内頸動脈に対して脂肪線条(初期病変)や黄色プラーク(粥状硬化斑)の認められるものを選び,内膜と中膜の境界付近を実体顕微鏡下で剥がし,外膜を除く血管壁全層,内膜と中膜内側からなる層,残りの中膜層の3つを対象として,単軸伸展試験を行った.また,頸動脈に比べて寸法が大きくて曲率が小さい胸部大動脈を比較対象とし,プラーク領域を選んで試験を行った. 寸法の大きな大動脈を剥がしてMT染色を行い,剥がした内膜側の層における内弾性板の位置を光顕観察で確認した結果,内膜の割合にばらつきが見られた.また,伸展試験の結果,頸動脈については,ひずみ0.5で応力50kPa程度(総頸動脈)から200kPaを超えるもの(内頸動脈)まであり,伸展性に大きな差があった.層間の違いについても,差の大きいもの(内頸動脈)と小さいもの(総頸動脈)とがあった.胸部大動脈の試験片では内膜と中膜内側からなる層で中膜層に比べて顕著に硬い結果を得た. 有限要素解析では,脂質コアを有するこれまでの2次元モデルを発展させて3次元モデルを作成し,2次元モデルで予測された結果と同様に,3次元モデルの解析結果においても脂質コア内の圧力が低いレベルにあることを示した.また,単軸伸展試験の実験条件に類似した有限要素解析も実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
頸動脈は寸法が小さくて曲率が大きいため,これをまっすぐにして伸展する単軸伸展試験ではデータを慎重に解釈する必要がある.そのため,初年度には寸法が大きくて曲率が比較的小さい大動脈を用いて試験を行って,試験機の特徴を把握するのに多くの時間を要した.また,画像相関法を適用するために微粒子によるマーキングを試みたが,従来法によるマーキングでは,生体組織である試験片の変性の防止と乾燥を防ぐための生理食塩水中に浸した試験に不向きで,試行錯誤に多くの時間を要した.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,頸動脈を対象として材料力学試験と病理学染色を実施して,材料力学特性と病理学特性の関係を調べる.今年度の研究の結果,大動脈は寸法が大きくて伸展試験に向いており,動脈硬化の認められるプラーク領域が所々に存在することがわかったので,これを比較のために活用することとする.また,寸法の小さな頸動脈に対して簡単に試験片の取り付けができるように改良を加えて,データの信頼性の向上を図る. 有限要素解析を以下のように実施する.まず,これまで得られた結果を基にして,線維性被膜と正常血管領域に対する有限要素解析を実施する.その際,それぞれの領域は超弾性体でモデル化し,引張り試験で得られた結果に基づいて弾性係数の同定を行う.また,残留応力を解放した試験片形状を用いて,領域ごとに異なる弾性係数を与える.さらに,環状の血管壁に内圧を負荷して,生体内での変形挙動の再現を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の残額は試験システムの改良の遅れに伴って生じたので,次年度はそれに充てる.また,次年度の研究費を使用して,試験片を現状よりも簡単に試験機に取り付けて信頼性の高いデータを取得できるようにする.また,検体の病理標本を作製費用に使用して,材料力学的知見と組織学的知見とを比較する.また,共同研究の実施や研究発表と調査のための旅費や研究成果の発表に経費を利用する.
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Research Products
(1 results)