2012 Fiscal Year Research-status Report
剖検例ヒト頸動脈によるプラーク破裂に関わる材料力学情報と病理学情報との関係の解明
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23560091
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
山田 宏 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (00220400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 則行 福岡大学, 医学部, 教授 (20134273)
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Keywords | 動脈硬化 / 応力-ひずみ関係 / 有限要素解析 |
Research Abstract |
対象とする剖検例の中で総頸動脈に動脈硬化病変を発症した例が見出されなかったため,上行大動脈から胸大動脈にかけての動脈硬化病変部と正常部,総頸動脈の正常部を対象にして伸展試験を行った.このうち,動脈硬化が進行するプラークから切除した幅1mm程度の線維被膜の試験片に対しては,適切な伸展試験を行えるように試験片の保持部を新たに設計・製作し,安定な伸展試験を実現した.総頸動脈に対しては血管壁を内・中膜(内膜と内膜側の中膜),中膜(外膜側の中膜),外膜の3層に分けて伸展試験を行った. 総頸動脈の伸展試験については,各層の応力-ひずみ曲線に一致するように,超弾性モデルの材料定数の同定を行うとともに,3層の無応力状態の形状と超弾性特性を用いて有限要素解析を実施した.その結果,無応力状態での層の曲率によって生理的負荷状態での応力状態が顕著に異なることがわかった. 大動脈の伸展試験については,それぞれの応力-ひずみ曲線を得た.特に線維被膜部の試験片については試験片上のマーカーを用いて伸展方向の伸びと応力の関係を求めた.その結果,大動脈のプラーク病変部において,通常の血管壁の伸展特性に比べて著しく硬化した例が見られた. また,伸展試験に用いた標本の一部について,エラスチン,コラーゲン,平滑筋細胞,プロテオグリカンに関する病理学染色を実施して,成分の専有面積を光学顕微鏡画像から求め,材料力学特性と病理学特性の関係を調べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動脈硬化病変部の線維被膜を対象とした伸展試験システムを完成させ,緻密な試験と分析を行えるようになった.有限要素解析においては3層からなる血管壁の応力解析手法を実現した.ただし,動脈硬化病変の生じた研究対象部位の剖検例の入手が困難なため,他の血管部位のプラーク領域や正常領域を対象とした実験で代替する必要性が生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
大動脈と頸動脈を対象として材料力学試験と病理学染色,数値解析を実施して,動脈硬化の進行過程における対象部位の材料力学特性と病理学特性のデータを蓄積し,両特性の間の関係をとりまとめる.また,バルーンによる動脈壁の拡張に対して変形計測を行うとともに有限要素モデルで現象を再現する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
染色標本用の試薬が節約できたなどの理由で,未使用額が発生した.プラーク病変部の変形挙動を詳細に検討するため,それに必要なソフトウェアの購入を計画している.また,研究成果の発表や共同研究の実施のための旅費の支出を計画している.さらに,論文発表のための支出も計画している.
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Research Products
(6 results)