2011 Fiscal Year Research-status Report
混合抑制に旋回流れを利用した革新的フィルム冷却技術に関する基礎研究
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23560229
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武石 賢一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70379113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小宮山 正治 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40178372)
小田 豊 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50403150)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 熱工学 / フィルム冷却 / 混合 / 光学測定 / 旋回流 |
Research Abstract |
フィルム冷却は、固体壁を高温流体から熱遮蔽する技術である。高温のガスが壁面を流れている場合、壁面に斜めにあけられた円孔およびファンシェイプト孔より、温度の低い流体を吹き出し、主流高温ガスの境界層中に注入し高温ガスと壁面間にフィルムを形成し壁面に流入する熱を遮蔽する技術である。申請者は、吹き出すフィルム空気に旋回を与えることによって、フィルム冷却効率を大幅に改善できることを発見した。このフィルム冷却効率改善の定量的メカニズムを解明するため、既設の低速伝熱風洞を用いて、その底辺に円形状のフィルム冷却模型を装着して実験を実施した。 フィルム冷却空気の流れに旋回を付与する構造として、傾斜して配置した2個のインピンジメントノズルを用いた。ハニカム形状をした壁背面に流量コントロールを兼ねた、旋回を生成する角度を持ったインピンジメントノズルを有し、その旋回を保持した状態で、フィルム冷却孔から主流に吹き出した。壁面のフィルム冷却効率をPSPで測定し、フィルム冷却空気と主流の混合状況を、PIVとアセトンLIFを適用して、フィルム冷却の混合場の濃度、速度場の計測を行った。二次元瞬時値ではあるが吹き出し位置より後流における中央断面の空間濃度分布および速度分布の詳細な定量データが把握された。数百枚の瞬時値を平均化することによって平均量を求め、さらに瞬時値との差から変動成分を求めた。これらのデータは現象の解明のみならず時間平均されたRANSおよびDES等の数値解析の検証用データベースとして活用出来ることができる。本研究では、実験と同じ形状および条件での非定常の混合現象をRANSコードで解析し、円孔から出た旋回を持つフィルム冷却空気の片側が、壁面に衝突し壁面上に広がっていく状態が解明され、旋回を持つフィルム冷却のフィルム冷却効率を改善するメカニズムの一部が解明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
六角形の空間を有するプレナム内に、衝突噴流冷却を行う2つのノズルをオフセットし,対向して設け、フィルム冷却孔が風洞下面に位置する形で実験を実施した。衝突噴流ノズルからの噴流が空間内で旋回流を作り出し,さらに旋回を有した状態でフィルム冷却孔から吹き出し、フイルム冷却孔下流にフィルム膜を形成する。ノズルの角度をパラメータに旋回の強さを決定し、円孔とシェイプト孔それぞれについて質量流束比Mを0.5~2.0,主流流速は20m/sに設定して実験を行った。 壁面上のフィルム冷却効率の計測には感圧塗料(PSP)を使用した。またフィルム空気と主流との混合状態を測定するために、粒子画像流速計(PIV)およびアセトン誘起蛍光法(アセトンLIF)を用いた。アセトンLIF法は、フィルム冷却空気中に約2%の飽和アセトン蒸気を混入し、パルスレーザーシートを照射することによって、主流の空気と混合したフィルム冷却空気の混合場のアセトン濃度が蛍光強度と比例関係にあることを利用して、物質伝熱のアナロジーから、無次元温度分布を測定する手法である。 円孔では、M=0.5では剥離が生ぜず壁面を覆うが、M=1.0とMの増加に伴って、フィルム空気は主流に貫通し、円孔下流で再付着する。円孔から出たジェットは変形しいわゆる腎臓型の1対の渦を形成し、主流をフィルム冷却ジェットの下部に巻き込む状況がPIV、LIFの測定で定量的に把握された。旋回を加えた場合、非常に弱い旋回(ノズル角10°)の場合、フィルム冷却空気の片側が持ち上がり主流が流入しフィルム冷却効率が悪くなる。さらに旋回を強くするとフィルムの片側の流体は壁面に衝突噴流的に衝突して、壁面上に固着したフィルム膜を形成することが明らかになった。シェイプト孔では、旋回の強さを増すと、ある角度(ノズル角10°)でフィルム冷却効率は極大値を示す事が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、旋回を有した円孔およびシェイプトフィルム孔からの吹き出しに関して、旋回流のフィルム冷却空気への付与が混合を抑制する機構を解明する。シェイプトフィルム孔の形状は多種多様であるが、申請者等は円孔の中心軸の傾きが平板となす角度として30°、さらに流れ方向に15°、それと直角方向に15°広げたシェイプト孔のフィルム冷却孔を用いて、フィルム冷却空気に旋回を与えない場合と与えた場合のフィルム冷却効率を壁面上に塗布したPSPで測定する。平成23年度の研究で、フィルム冷却空気に旋回を与えた場合、与えない場合に比べて、孔下流でフィルム冷却空気の幅方向の広がりが顕著で高いフィルム効率を達成することが明らかになっている、円孔の場合と異なり非常に弱い旋回でフィルム冷却効率は極大値を取る。その現象の詳細については解明されていないので平成24年度の研究では、円孔、シェイプトフィルム冷却孔において、旋回を与えたフィルム空気が主流と干渉し壁面に冷却膜を形成する過程を3次元的に詳細なレーザーシートで混合場をトラバースすることによってアセトンLIF、PIVを実施して平成23年度の同様の実験的に解明しようとするものである。 実験的に明らかになったデータを検証データとして用いることによって、非定常現象が解明できる自主開発したLES解析コードを用いた解析を並行して進め、円孔およびシェイプト孔から吹き出したフィルム冷却空気に付与した旋回成分が、腎臓型渦の形成を阻止し、その結果として壁面での高いフィルム冷却効率を達成している原因を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・低速風洞下面に取り付け実験するシェイプトフイルム孔の模型製作費・PIV,アセトンLIFに用いるレーザーシートを製作するミラー類およびトラバース装置費・PSP塗料、窒素ガス、アセトンなどの実験消耗品・成果発表、研究動向調査のための海外出張旅費
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