2012 Fiscal Year Research-status Report
高度な把持を実現する複数対象物把握系の安定性解析と最適把持の設計
Project/Area Number |
23560285
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
山田 貴孝 岐阜大学, 工学部, 准教授 (00273318)
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Keywords | ロボット / 多指ハンド / 把握系の安定性 / 複数対象物 / 高度な操り / 剛性行列 / 最適把持の設計 |
Research Abstract |
平成24年度は次の研究成果を得た. (1)指先の並進変位を線形ばねで置き換え,三次元空間内で二対象物を把持した場合について把握系の安定性を解析した.指先と対象物の接触点における滑り・転がりに加え,対象物同士の接触点における滑り・転がりの効果をも考慮した.そして,曲面の幾何学(計量テンソル,曲率,捩率)を考慮し,解析的に剛性行列を導出した.さらに数値計算での利用を考慮し,曲面の幾何学の詳細な計算手順も明らかにした. (2)回転関節から構成される多指ハンドによる単数対象物把持について安定性を解析した.まず,各関節を回転仮想ばねで置き換え,対象物変位と関節角変位の関係を明らかにし,把握系の位置エネルギを導出した.指先が滑り接触する場合と転がり接触する場合の両方について把持の剛性行列を解析的に導出した.この剛性行列を指先および対象物の曲率で偏微分することで,曲率の増減と安定性の増減との関係を解析により明らかにした.影響が生じる変位方向も導出した.数値例により,関節角の増減と安定性の増減との関係も明らかにした. (3)さらに,複数対象物を把持した場合を解析した.指先と対象物との接触に加え,対象物同士の滑り接触と転がり接触の効果を考慮する必要がある.対象物の数に応じてパラメタ数が増加するため,解析は複雑になる.対象物同士の接触位置変位を表わすパラメタを導入した.把握系のポテンシャルエネルギを定式化し,把握系の剛性行列を導出した.数値例により,提案手法の妥当性を確認した. (4)二次元平面内で単数対象物を包み込み把持する場合の安定性を解析した.指リンクと対象物との接触の拘束を考慮する必要があるため,問題は複雑になる.関節を回転仮想バネで置き換え,剛性行列を導出した.剛性行列を接触点の曲率で偏微分し,安定性への曲率の影響を明らかにした.さらに,その影響が生じる変位方向を解析により明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,次の研究を行った. 指先変位を並進仮想バネで置き換えた場合について三次元二対象物把持の安定性を解析した.さらに,三次元対象物の曲面の幾何学(計量テンソル,曲率,捩率)の計算アルゴリズムを導出し,今後の三次元最適把持設計の基礎を構築した. 指関節を回転仮想バネで置き換えた場合について,まず,二次元平面内で単数対象物を把持した場合を解析した.次に,二次元平面内で複数対象物を把持した場合を解析した.さらに,単数対象物を二次元平面内で包み込み把持した場合を解析した.以上のように,二次元に関する解析については理論解析,数値例を用いた妥当性の検証をしている. 回転関節を有するハンドを用いて三次元空間内で対象物を把持する場合の解析を予定していた.三次元の解析,および最適把持の設計については今後取り組む必要があるが,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は次の研究を計画している. (1)三次元空間内で単数対象物を把持した場合について最適把持位置の設計アルゴリズムを開発する.平成24年度の研究成果として得られた曲面の幾何学の計算手法をプログラムに実装し,球形状および楕円体形状の対象物について最適把持位置の生成アルゴリズムを開発する. (2)指を三次元の直交仮想ばねで置き換え,三次元空間内で複数対象物を把持する場合の安定性を解析する.この場合,指先だけでなく,対象物同士の滑り接触および転がり接触を考慮する必要がある.さらに,その接触点近傍の曲面の幾何学を考慮する必要があり,解析は非常に複雑になる.これらの問題点を解決する手法を検討する.剛性行列を導出し,把握系の安定性を解析する. (3)指を回転関節で置き換え,三次元対象物を把持する場合について,把持の安定性を解析する.この場合,対象物変位と関節角変位との関係は非常に複雑になる.解決策を検討し,さらに曲面の幾何学,接触点での滑り・転がりを考慮して,剛性行列を導出する.数値例を用いて本手法の妥当性を検証する. (4)OpenGL等を用いて数値例の結果を可視化し,妥当性を簡便に評価するするソフトウェアを開発する. (5)導出された剛性行列は,接触状態(滑り接触,転がり接触),接触点近傍の曲率,仮想ばねの剛性,接触点位置,接触力などに依存する.まずは二次元平面内の単数対象物把持について,これらの把持パラメタの効果を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は実験実証に必要となるロボットシステムを購入した.このため,次年度使用額は1万円以下となり,ほぼ申請通り使用した. 平成25年度は,上述の「次年度使用額」も加え,研究に不可欠な計算機システム,ソフトウェアシステム,実験装置などの経費として使用する.具体的には次のような理由である. 把持の変位モードを可視化するためには,動力学シミュレータが必要である.より高度な解析および可視化を実現するためには,商用の高度な動力学シミュレータを購入する必要がある. 把握系の安定性を解析する際には偏微分を伴う複雑な数式計算処理が必要である.この援用に商用の高度な数式処理ソフトウェアが必要であり,購入経費に用いる. 把持の安定性を実験により確認するためには,多指ロボットハンドシステムを構築する必要がある.さらに,指先力を正確に検出するために6軸力センサを必要とする.これらの購入経費に用いる. これらの解析,シミュレーション,実験には高速な計算機システムが必要となる.この購入経費に用いる.
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