2011 Fiscal Year Research-status Report
人体詳細モデルを用いた低・中間周波における接触電流と人体インピーダンスの解明
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23560332
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
林 則行 宮崎大学, 工学部, 教授 (30156450)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電気の安全性 / 接触電流 / 人体インピーダンス / 人体詳細モデル / 数値解析 / SPFD法 / 心臓電流 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は以下の通りである。(1)電磁界による誘導電流解析用に開発した数値解析プログラム(ボクセルデータを用いたSPFD法)を改良し,ゼラチンで製作した模擬人体モデルを用いた実測結果と比較検討することでその適用性を確認した。その結果,低周波・中間周波において,解剖学的に詳細な人体モデルを用いた人体内の接触電流分布の数値解析や人体インピーダンスの推定ができるようになった。(2)上記1で開発したプログラムを用いて,日本人詳細モデルを用いて様々な感電シナリオにおける人体内の接触電流分布特性や人体インピーダンスを数値解析した。さらに,数値解析結果と過去のデータとの比較検討を行った。その結果,数値解析を行う上で,組織や器官の導電率の選定を慎重に行う必要があること,ならびに人体インピーダンスの値は他の研究者の数値解析結果とは良い一致を示しているが過去の実測データとは2~3倍の違いがあることを示し,数値解析を続ける上での今後の課題を明らかにした。興奮性の組織として心臓に注目し,感電シナリオによって心臓を流れる電流の分布が著しく異なること,ならびに心臓には総接触電流の30%程度の電流が集中することを明らかにした。(3)商用周波数を対象とした人体インピーダンス計測装置の設計・開発を行い,装置を試作した。本計測装置は,生体計測用の二対の医用電極,定電流の注入回路,微小電位差の検出回路,人体保護回路(過電流防止回路や非常スイッチ等)などで構成される。計測系としては皮膚インピーダンスの影響を避けるために4端子法を採用した。通電電流の大きさは生体への安全性とマージンを考慮して選定した。ゼラチンで製作した模擬人体モデルを用いて,試作装置の動作特性や保護回路の動作を確認した。本装置を用いて,来年度に実際に人体インピーダンスの計測を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の研究目的は,(1) 解剖学的に詳細な人体モデルを用いた人体内の接触電流分布や人体インピーダンスの数値解析プログラムを開発する,(2) 数値解析結果に基づいて低周波・中間周波における接触電流分布特性を組織・器官レベルで明らかにするとともに,人体インピーダンスを推定する,(3)人体インピーダンスを実測することで人体インピーダンスに関する最新のデータを収集するとともに,数値解析結果との比較検討を行うことで過去の実測データの有効性や本数値解析モデルの適用性を議論することである。 目的1に関しては,SPFD法に基づいた数値解析プログラムを開発し,その解析結果と既存の実測結果を比較・検討することで開発したプログラムの有効性を示した。本プログラムは,次年度以降の研究の有用な手段として活用できる。以上から,おおむね研究目的は達成していると評価できる。 目的2に関しては,日本人詳細モデルを用いて様々な感電シナリオにおける人体内の接触電流分布特性や人体インピーダンスを数値解析した。さらに,数値解析結果と過去のデータとの比較検討を行うことで,数値解析を行う上での問題点の指摘を行った。以上から,本年度の成果は次年度以降の数値解析を実施する上での有用な知見を提供しており,現時点ではおおむね研究目的は達成していると評価できる。 目的3に関しては,商用周波数用人体インピーダンス計測装置の設計・開発を行った。試作装置を用いて,その動作特性や保護回路の動作を確認した。以上から,本年度の成果を元に次年度は実機の製作を計画しており,現時点ではおおむね研究目的は達成していると評価できる。 以上の結果より,本年度の研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成24年度は主に人体インピーダンスの実測とその収集データの検討を行う。 最初に,平成23年度に試作した人体インピーダンス計測装置を構成する各電子回路の機能を実現するために、機能別にモジュール化されたデバイスを用いて一体化したインピーダンス計測装置として完成させる。次に,人体インピーダンス計測装置を用いて人体インピーダンスの実測を行い,実測結果に影響を与える外的パラメータ(例えば,気象条件,電極条件など)を検討することで,実測データの分析を行う場合の注意点を明らかにする。また,さまざまな感電シナリオに対して人体インピーダンスを実測し,人体インピーダンスの通電経路依存性を明らかにする。さらに,体型の違いが人体インピーダンスに影響を与える影響を検討するために,BMIと人体インピーダンスとの関連性を検討する。(2)平成25年度(最終年度)は接触電流や人体インピーダンスの数値解析を行うとともに、平成24年度に収集した実測データとの比較検討を行って、これらの特性を考察する。 最初に,平成23年度に開発した接触電流解析プログラムを用いた数値解析を行い,様々な感電シナリオや人体詳細モデルに対する接触電流分布特性を明らかにする。全身の接触電流分布だけでなく,心臓や脳,中枢神経などに流れる接触電流の分布特性や割合に注目する。人体詳細モデルとして,海外のモデルの使用も考慮する。なお,低周波・中間周波領域を解析の対象とする。次に,接触電流の解析結果に基づいて,様々な感電シナリオや人体詳細モデルに対する人体インピーダンスを計算し,その特性を明らかにする。平成24年度に行った人体インピーダンスの実測値を,今回求めた数値解析値や従来の値と比較することで,従来の値の有用性を検討するとともに,本数値解析手法の妥当性を検討する。最後に,本研究で得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は1,500,000円の直接経費の使用を予定している。その内訳は次の通りである。(1)物品費(900,000円)として,人体インピーダンス計測装置の製作に必要な電子部品などの購入費400,000円,簡易人体モデル製作費に必要な消耗品の購入費300,000円,そしてペースメーカ装着者を対象とした数値解析を行うためにモデル実験で使用するペースメーカ2台の購入費200,000円を予定している。(2)旅費(400,000円)として,本課題に密接に関係する国際会議(BEMS2012, オーストラリア)に参加し研究成果の一部を発表する旅費と会議参加費 250,000円,電気学会と電気設備学会で研究成果を講演発表するための旅費と学会参加費150,000円を予定している。(3)人件費・謝金(200,000円)として,実験補助や実験データ・数値解析データの整理を行う学生アルバイトの延べ180時間・人の雇用経費200,000円を予定している。(4)その他の経費は予定していない。
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Research Products
(8 results)