2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560388
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
BERNARD Gelloz 名古屋大学, 工学研究科(国際), 特任准教授 (40343157)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノシリコン / 燐光 / 光デバイス / 青色発光 / エネルギー伝達 |
Research Abstract |
ナノシリコンで先に見いだした青色燐光の微視的起源の究明に重点をおき、分光・構造解析による材料学的キャラクタリゼーションを詳細に行った。並行して、ナノシリコンの自立膜作製、粉末化、さらにはナノ構造への希土類元素導入などのプロセス技術を固めた。主な検討課題と得られた結果を以下に示す。(1)ナノシリコンの青色燐光の微視的機構の究明:安定な青色燐光を得るために有効な高圧水蒸気アニールに基づいて作成した試料について、赤外分光などによる表面構造解析により材料学的特質を明らかにした。また、光学的には短パルス励起による時間分解光吸収スペクトルによる分子的なキャリア遷移過程を検出した。さらに、外部電界と燐光特性との相互作用について温度依存性も含めて測定し、励起子による赤色発光とは明確に異なる挙動を観測した。(2)ナノシリコンの自立膜および粉末化と基礎評価:まず、ナノシリコン層を基板から剥離し、均一で大面積の自立膜を作製した。この膜の光電特性を測定し、バンドギャップワイドニングによる生じる効果を確認した。また自立膜を機械的に破砕し、粉末状のナノシリコン試料を得た。そのさい、自立膜作製後および破砕後の熱酸化または高圧水蒸気低温酸化によって、ナノシリコンの粒径変化と表面終端を適切に組み合わせ、発光効率を保持して発光波長を赤色から青色帯まで制御できることを示した。(3)ナノシリコン/希土類ハイブリッド材料の開発:目的とする発光波長に応じて、ホスト材料となるナノシリコンとゲストの希土類元素の組み合わせを設定し、上記で作製した試料に希土類元素を導入するプロセス技術を開発した。作製した試料の発光特性測定により、エネルギー転移効果を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)青色燐光機構の解析(1)燐光性ナノシリコンの微細構造と励起メカニズムの詳細に関する解析:青色燐光の放射スペクトルは6つのサブバンドで構成されており,それぞれ特有の分子振動モードをもつことを見いだした.これら6つのサブバンドは同様の燐光性を有し,また励起エネルギーを変えることにより,燐光強度を制御することができる.(2)印加電界の効果:赤と青バンドに対して外部電界の効果について調べた.青バンドについて外部電界の効果は示さなかったものの,赤バンドに対してはクエンチング効果が見られた.この実験結果は燐光の源は赤バンド(ナノシリコンの量子閉じこみによるもの)と根本的に異なることを強く示す.本結果は、燐光が分子状の局在電子準位に起因するというモデルをさらに支持する.(2) 青色燐光機能の研究(1)赤・青発光ナノシリコン粉末の作成:発光性ナノシリコン結晶パウダーを陽極酸化後の破砕処理によって作製した.可視発光を確認した上で、その発光の強度向上と安定化をするために高圧水蒸気アニール処理を行った.その結果、初期の多孔度により、赤・青色および白色で発光するパウダーが得られた。またパウダーにおいても青色燐光化を実現した.これらにより、ナノシリコンパウダーの応用範囲を広げた.(2)ナノシリコン/希土類ハイブリッド材料の開発:目的とする発光波長に応じて,ホスト材料となるナノシリコンとゲストの希土類元素の組み合わせを設定し,上記で作製した試料にTbを導入するプロセス技術を開発した.低温処理ながら、燐光性試料中の光エネルギー転移によりTb発光が増強する可能性が示された.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)燐光の発生源およびメカニズムの究明ナノシリコン表面の表面化学結合状態が燐光特性に及ぼす効果を調べる.また強く酸化したポーラスシリカやナノシリコンパウダーの光学特性についても動的解析を行い、超微細ナノシリコンドット/SiO2構造が燐光にどう関与しているか明らかにする。これらの結果をふまえ、燐光性ナノシリコンにおける光エネルギー転移効果をTb、Er、Tmなどをドープした試料について測定し、特定波長の発光強度の増強を検証する。(2)発光素子の作製と評価前年度に作製した発光試料を活性層とするダイオードを構成し、発光素子化の検討を行う。そのさい発光が短波長のナノシリコンについてはキャリア注入を効率的に行うための表面修飾処理による非発光性欠陥除去、超臨界乾燥によるキャリアトラップ密度低減、導電性ポリマーなどの発光層内堆積による素子直列抵抗の低減などを行い、発光の高効率化を図る。また、ナノコンポジット素子についても、ドープした希土類に対する電気的励起発光を試みる。(3)フォトニクス応用開発したナノシリコン層、ナノシリコンパウダー、ナノコンポジットの量子的機能を、発光素子、光導電、光電効果の観点から実証する。各項目について重点的に追求する点は、光エネルギー転移によるドープした希土類の発光増強、特定波長の光検出、光キャリアの雪崩増倍による光電変換効率向上である。それらを基にナノシリコンにおける光励起・発光再結合過程および光キャリアの分離・輸送機構を究明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 消耗品費研究計画の遂行に必要な各種材料(シリコンウエハ基板、希土類元素、ポーラスシリコン酸化物、ガス、化学薬品、薄膜材料、スパッタターゲットなど)、光学部品(フィルター、ファイバ、フォトダイオードなど)、真空部品(ガスケット、真空度測定ゲージなど)、および電子部品(信号検出プローブ、コネクタなど)に充てる.(2) 旅費国外(2012年度米国電気化学学会春・秋季国際大会(USA)などの国際会議に出席し、研究成果発表および情報収集を行う)、国内(昨年9月により勤務先(現:名古屋大学)が変更したため、実験設備が充実している旧勤務先(東京農工大学)にて実験を行う.また、応用物理学会などの国内学会・研究会に出席し,成果発表および情報収集を行う).(3) その他分析装置使用料(走査型電子顕微鏡、赤外分光分析、組成分布解析など)、論文掲載費他
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