2012 Fiscal Year Research-status Report
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23560388
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
BERNARD Gelloz 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (40343157)
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Keywords | ナノシリコン / 燐光 / 光デバイス / 青色発光 |
Research Abstract |
シリコンベースの光デバイスを開発するため、ナノシリコンの青色燐光特性について基礎と応用の研究を行った。初年度は、詳細な材料学的解析に基づいて青色燐光の制御性と強度を高めること、希土類元素への光エネルギー移動の検証、の2点に重点をおき、次年度以降の展開の基礎を固めた。検討課題と得られた知見を以下に示す。 (1)青色燐光メカニズムの究明:青色燐光性ナノシリコンに対する電子構造と表面組成の解析、時間分解分光測定などにより、分子的な電子構造の形成と離散化準位間の励起・緩和が青色燐光に関与していることを示した。それらの解析により、表面酸化に起因する二つの励起・緩和過程のバランスが青色燐光の効率を決める重要因子であることを明らかにした。(2)ナノシリコン試料のプロセス:ナノシリコンを自立膜および粉末として作製する方法を確立し、それらを安定に保持する酸化アニール技術を開発した。 (3)光エネルギー転移効果の解析:近赤外から可視におよぶ広い波長帯の発光増強を念頭に青色燐光性試料に各種希土類元素をドープし、発光特性を測定した。その結果、Tbをドープした試料において、高圧水蒸気アニールによる低温酸化のみでTbに固有の波長の発光強度が大幅に増大することを見いだした。 (4)フォトニクス応用:青色燐光とUV発光が共存する試料に外部電界を印加した状態で発光寿命などを分光測定し、青色燐光における光生成キャリアと電界との相互作用が分子的な電子準位間遷移から予想される挙動を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 燐光の発生源およびメカニズムの究明: 酸化プロセスのさいOH分子を増やすことによりナノシリコン表面の酸化膜の化学結合状態が燐光特性に及ぼす効果を調べた.その結果、観測された青燐光強度の低減,狭帯域の紫外(波長:4.45eV)燐光強度の増加には表面酸化膜の状態が強く影響していること、紫外発光と青色燐光には明確な相関があることを明らかにした.また,励起エネルギーが5eV以上では、ブロードな青色燐光が狭帯域の紫外発光に変化した.シリコンナノ結晶を含まないポーラスガラスの発光解析から,シリコンナノ結晶は青色燐光の発生源ではないことを確認した. (2) 発光の多色化と発光素子の作製:燐光性ナノシリコンに希土類元素のTb,Eu,Erをドープした試料を作製し,緑(Tbドープ)・赤(Euドープ)・赤外(Erドープ)に対応する特定波長の発光強度の増強を検証した.これにより、青色燐光,Siナノ結晶の赤色発光および希土類元素の固有発光に基づく多色発光デバイスの見通しを得た.またイオン注入でpn接合を作製し、注入EL素子の基礎プロセスを固めた。さらにELの効率を向上するための素子構成を検討し、その一環として導電性材料の発光層内部への堆積する基礎実験を行った。 (3) フォトニクス応用のための基礎研究:発光ナノシリコン層の光導電分光感度測定、光キャリアの輸送過程の解析を行い、量子的性質を裏付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 燐光の発生源およびメカニズムの究明:青色燐光の発生源を特定するため,酸化膜の役割についてより詳細に調べる.シリコンナノドットの有無がどう影響するかを明確にするため、試料としては様々な種類のポーラスガラスを用いる.また,シリコンナノ結晶増感剤を用いて青燐光強度を向上することを試みる.さらに、青色燐光の熱失活温度を約200Kから室温に上昇させるための基礎検討として、ナノ構造の組成とストレスの影響について実験的情報を得る. (2) 多色EL素子の開発と高効率化:pn接合を導入したナノシリコンダイオードを構成し,EL素子化を行う.表面修飾処理による非発光性界面欠陥除去,超臨界乾燥によるキャリアトラップ密度低減,導電性材料の発光層内堆積による素子直列抵抗の低減などを行い,発光の高効率化を図る.また,青燐光,Siナノ結晶の赤色発光および希土類元素の発光増強に基づく多色発光デバイスの開発を試みる. (3) フォトニクス応用:開発したナノシリコン層,ナノシリコンパウダー,ナノコンポジットの量子的機能を,EL増強,光導電,光電効果の観点から実証する.各項目について重点的に追求する点は,光エネルギー転移によるドープした希土類の発光増強,特定波長の光検出,光キャリアの雪崩増倍による光電変換効率向上である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費:情報収集および成果発表:(1)2013年度電気化学学会春・春季国際大会(USA)にて成果紹介発表および情報収集を行う。(2)2011年9月により勤務先(現:名古屋大学)が変更したため,実験設備が充実している旧勤務先(東京農工大学)にて実験を行う。(3)国内大会に出席し,成果発表および情報収集を行う。(4)論文掲載費や学会参加費。 研究のため:(1)材料 (シリコンウエハ、希土類元素、ポーラスシリカ)やガス・化学薬品等。(2)光学部品、発光測定のための光ファイバープローブ、光源(紫外 LED)。
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Research Products
(18 results)