2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560430
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Research Institution | Akita Research and Development Center |
Principal Investigator |
黒澤 孝裕 秋田県産業技術センター, その他部局等, 主任研究員 (60370243)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電界計測 / 変調散乱 / 光変調 / 誘電体 / 高周波 / EMC |
Research Abstract |
光変調式誘電体散乱電界センサを開発するための、散乱体材料を評価するための計測系を構築した。 整合終端したマイクロストリップラインの直上に試料を装荷し、高周波信号を給電したマイクロストリップラインからの反射波強度を計測した。この計測系において、マイクロストリップラインは高周波電界源および散乱波の受信アンテナとして動作しており、試料からの散乱波はマイクロストリップラインからの反射波として観測される。照射光源には波長638nmの半導体レーザーを用いた。 半導体基板を試料とし、反射波振幅の入射光強度依存性を評価した。その結果、入射光強度が増加するに従って反射波振幅が増加する材料を複数見出した。これらの材料に対して、ある周波数で強度変調した光を入射したところ、入射光の強度変化に同期した反射波の振幅変調成分が検出できた。従って、散乱体の誘電率を光変調することにより、高周波電界中に設置した散乱体からの散乱波を振幅変調可能なことを実証できた。信号強度の光吸収係数および電気抵抗率依存性から、材料の吸収係数が大きくなるに従って信号強度が大きくなること、および、同一の吸収係数を持つ材料では電気抵抗率が小さくなるにつれて信号強度が小さくなることが判った。このため、散乱体材料としては光吸収係数および電気抵抗率の大きい材料が適していると言える。このことは、光照射に伴うキャリア密度の変化量と誘電率虚数部との関係、および、誘電率と散乱波強度との関係から、定性的に説明できる。また、試料上の光照射位置を掃引して信号強度を測定した結果、高周波電界源の面内電界成分に対応した信号強度分布が得られた。この結果から、局所的な高周波電界分布を計測できること、および照射光の空間分布と同程度の空間分解能が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光変調式誘電体散乱電界センサを開発するための、散乱体材料を評価するための計測系を構築した。複数の材料に対し、光によって散乱体の誘電率を変化させることで、散乱体からの散乱波に振幅変調を与えられることを実証した。また、試料上の光照射位置を掃引して信号強度を測定した結果、高周波電界源の面内電界成分に対応した信号強度分布が得られた。この結果から、局所的な高周波電界分布を計測できること、および照射光の空間分布と同程度の空間分解能が得られることを明らかにした。これらの実績より、研究目的冒頭の「誘電体散乱体の誘電率を光変調させて散乱体からの散乱波を振幅変調し、この散乱波を復調してその強度を測定することにより、散乱体位置の高周波電界を計測できることを実証する」という目的は達成できたと考えられる。この項目は平成23年度研究実施計画に挙げられており、研究はおおむね予定どおりに進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度実施計画に沿って進める。平成23年度に開発した測定システムを用い、誘電率、電気抵抗率、光吸収係数等の散乱体の材料物性や被測定電界の周波数、変調周波数等、測定に関わるパラメータと信号強度との関係を明らかにする。昨年度実績から、センサに適した散乱体の材料物性についての方向性が得られており、これに沿って、センサに適した材料を探索する。なお、同一物性の試料においても、その表面粗さによって信号強度が変化したことから、これについても検討する。また、高速な光変調が可能になるように光変調系や信号受信系を改良する。これらの結果を基に、光変調式誘電体散乱電界センサの測定感度を見積もる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主要物品のレーザー光源が、当初予定より安価に購入できたため、次年度に使用する研究費が生じた。その理由として、為替変動および競合製品が発売されたことによる価格改訂が挙げられる。 次年度研究費1270千円は消耗品、国内旅費、その他、に使用し、設備備品の導入予定は無い。消耗品は970千円を予定している。内訳は、誘電体基板500千円、光学部品150千円、電子部品270千円、論文別刷50千円である。誘電体基板は本研究における材料探索の中心的な役割を担うため、必須である。光学部品は光源の導光用で、測定システムの構築に使用する。電子部品は補助的な研究機器の自作に使用し、高速な光変調とそれに伴う高速変調信号の検出を可能とするシステムを構築する。 国内旅費は150千円を予定している。使用用途は、研究成果の学会発表2件、研究会発表1件である。その他は150千円を予定し、査読論文投稿1件および学会参加負担金である。
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Research Products
(2 results)