2012 Fiscal Year Research-status Report
地域住民の意向に配慮した橋梁景観の定量的評価法に関する基礎的研究
Project/Area Number |
23560583
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
勇 秀憲 高知工業高等専門学校, 環境都市デザイン工学科, 教授 (60159655)
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Keywords | 構造工学 / 橋梁景観 |
Research Abstract |
地域における良好な景観形成のためには,その地域特性や地域住民の意向に合致した総合的な景観評価法の確立が急務である。特に橋梁景観においては,橋を含む景観の形状と色彩がその景観イメージ・感性に大きな影響を及ぼす。本研究は,橋梁景観の形状特性と色彩特性を相互に考慮し,橋梁新設・改修時や再塗装時などでの色彩評価・選定のための合理的で定量的な工学指標を含む景観評価法・設計法の確立を目標とするものである。 平成24年度は,橋梁景観を構成する背景と橋梁の形状に特に着目した橋梁景観評価法を提案する基本的な評価を試みた。背景を含む橋梁景観の白黒画像および背景を取り除いた橋梁のみの白黒画像の両方を対象に,それぞれSDアンケート調査と因子分析の結果から,それらのイメージ特性を明らかにした。また,フラクタル次元を用いてそれぞれの形状特性の定量化を行った。そして,イメージ特性,構造形式,視点場,架設場所などの橋梁属性やフラクタル次元による形状特性との相互関連性を数量化II類により調べた。 また,日本にある既存橋梁709橋を対象に,架設場所,用途,構造形式,橋長,完成年度,色相,トーンなどの9項目の相互関係を,ラフ集合を用いて評価した。ラフ集合によって求められた決定ルールを,景観設計における属性決定のための評価指標として活用できる可能性が示された。色彩を考慮した橋梁景観評価にラフ集合を適用性が明らかになった。 さらに,カラーイメージ分析ソフトウェアを用いた景観色彩評価法を,まずは道路景観評価に対し適用し分析した。定量化された色彩データから、カラーシステムに基づく単色イメージ,配色イメージを言語イメージと関連付けて評価し,道路景観のイメージを求めた。道路色彩,イメージ,道路構成要素の有無や占有率などの相互関係を数量化II類により評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,橋梁景観における橋梁や背景の形状特性に特に着目して,形状特性をフラクタル次元により定量化し,それが橋梁景観の景観属性(構造形式・架設場所など)とSDアンケート結果の因子分析によるイメージ評価の相互関係を数量化II類により明らかにすることができた。背景を含む橋梁景観の白黒画像も背景を取り除いた橋梁のみの白黒画像も,それらのイメージ構造は3つに因子で評価でき,前者は「活動因子」,「安定因子」および「調和因子」であるが,後者は「活動因子」,「安定因子」および「安心因子」であった。背景による景観イメージの因子構造の変化が明らかとなった。 また,ラフ集合による橋梁景観評価に関して,ラフ集合の景観評価への適用は,決定ルールを景観属性の決定法として用いることの可能性により示された。さらに,道路景観への色彩測定法(色彩分析ソフトウェア)の応用は,得られた色彩データを道路景観の各種属性との関連に用いることにより,特に観光地アクセス道路の「より良い景観形成」への方向性を示すことができた。 平成24年度においては,当初の研究計画にもとづき,イメージカラーの抽出やその定量化の手順については,特に橋梁をも含む道路景観を対象にその妥当性を示すことができた。そして,橋梁景観評価にける形状特性に対するフラクタル次元や色彩測定によるカラーイメージ評価に関しては,いくつかの典型的な橋梁景観や道路景観に対して,その適用性・妥当性について確認できた。橋梁景観評価にラフ集合を適用できたことは,当初計画を上回る大きな成果であった。そのため,色彩色差計による色彩測定の時間的余裕がなくなり,色彩色差計を本格的に用いることができず,その結果を色彩分析ソフトウェアの結果と厳密な比較検討することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23・24年度の研究で提案した色彩評価法を,さらに他の橋梁データの各種橋梁(色彩・構造形式・架設場所等の異なる様々な橋梁)へ幅広く適用し,本色彩評価法の妥当性をさらに調査する必要がある。同時に,橋梁景観の形状特性であるフラクタル次元をも考慮できる総合的な景観評価法に向け,多変量解析(数量化理論,因子分析,クラスター分析等)やラフ集合を用いて,多種多様な橋梁景観への本景観評価法の適用性を調べ比較検討し,その妥当性を検討することが必要である。 平成25年度以降は,橋梁要素及び背景要素の基調となるイメージカラーを,画像処理ソフトウェア,色彩色差計の実測結果と関連付けて評価し定量化する必要がある。カラーイメージ分析ソフトウェアにより,橋梁に関する単色イメージスケール,橋梁と背景の間の色彩調和判定を考慮した配色イメージスケールによる評価を実施し,地域住民や学生に対するSD調査によりそのイメージスケールの検証を行う。並行して,橋梁景観の形状特性を画像データのフラクタル次元により評価し,感性カラーイメージとの相関関係を求めるカラーイメージ評価法を提案したい。 こうして,色彩評価法,カラーイメージ評価法およびフラクタル解析を連携させて,橋梁景観の形状特性を考慮でき,配色イメージスケールに基づいた景観設計の色彩選定の新しい指標を提案するための検討を進めてゆく。こうして,景観設計において,色彩特性と形状特性を総合的に配慮できる新しい定量的な色彩設計システムの構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,「カラーイメージ評価法」の提案を目指し,特に橋梁要素と背景要素に対する色彩特性の定量的評価が必須となる。そのためには,橋梁要素及び背景要素の基調となる色彩を,JIS標準色票や色彩色差計の実測結果と画像処理ソフトウェアの結果を関連付けて評価し定量化し,カラーイメージ分析ソフトウェアによる単色・配色イメージ評価を実施する必要がある。平成24年度に購入した色彩色差計を駆使して,対象とする橋梁画像データの色彩特性(XYZ値,L*a*b*値,マンセル値等)を手動直接計測したり,PCとの接続での色彩管理ソフトウェアを用いた自動計測を行う。 橋梁景観の橋梁要素や背景要素を対象として,画像処理ソフトウェアによる色彩数値データ,JIS標準色票による目視実測および色彩色差計による色彩計測などを,具体的な橋梁画像や各種景観画像を対象に比較・検討する。 その結果,橋梁要素と背景要素の間の色彩調和判定を考慮した配色イメージスケールを使った橋梁景観評価を各種橋梁に対し適用することができ,橋梁景観の形状特性を表すフラクタル次元の解析結果と連携して,感性カラーイメージとの相関関係を求めるカラーイメージ評価法の提案に向けて研究を進める計画である。その際,地域住民や学生に対するイメージアンケート調査を実施し,この評価法の妥当性・適用性を検討する計画である。
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Research Products
(2 results)