2011 Fiscal Year Research-status Report
宮崎県口蹄疫発生時に生じた道路交通・管理問題と危機管理上の課題の調査・解析
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23560627
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
出口 近士 宮崎大学, 工学部, 准教授 (70117175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉武 哲信 宮崎大学, 工学部, 准教授 (70210672)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 口蹄疫 / 車両消毒 / 消毒ポイント |
Research Abstract |
平成22年に宮崎県での口蹄疫発生の際、道路上および沿道にて車両消毒が実施されたが、この問題点を把握するために、宮崎県、都城市、日向市、鹿児島県の畜産部局および道路保全部局の担当者にヒアリングするとともに、消毒ポイント設置に関するアンケート結果を整理・分析した。また、発生初期の発生農場の拡がり状況、発生農場付近の道路網、消毒ポイントの設置状況を分析するために、口蹄疫の発生日、発生農場の位置、消毒ポイントの設置場所などの情報を宮崎県から収集するとともに、これらを数値地理情報システム(GIS)に入力してデータベース化し、都農町・川南町で発生農場付近の道路網・状況と、飛び火的に感染したえびの市、および都城市の道路網の状況を比較・分析した。また、隣県との県境における道路網と道路交通容量について概略検討した。さらに、口蹄疫が発生した4月20日から5月中旬までの発生農場から半径500m、1km、10km、20kmの円周を交差する主要な道路本数(リンク)数の変化を調査した。その結果、以下の内容が把握・確認できた。・発生初期には消毒ポイント設置のための道路占用手続きや設置に手間取るなど課題があったが、その後手続きが迅速化されるなど、道路管理・手続きの改善が確認された。・周囲への感染が防ぐことができたえびの市と都城市の発生地点の周囲の道路数は限定的であったが、川南町では発生当初で約20箇所であり、消毒ポイント設置が困難であったと考えられる。・川南町周辺地域では、発生農場の周囲1kmの円周を交差する主要な道路本数は発生後5日程度で約50箇所であり、初期防疫時に対応ができる可能性がある。・鹿児島県境は道路本数が多く、防疫(消毒ポイント設置)上の課題がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)消毒ポイント設置の手続きは時間経過につれて改善されたことが明らかになった。また設置場所の選定では「道路構造の問題(消毒作業面積が確保できない)」、「手探り的に設置可能な場所を探した」などの課題を把握できた。しかし、消毒方法の効果や設置の根拠や基準については検討できなかった。(2)数値地理情報システム(GIS)で口蹄疫の発生日時、発生場所をデータベース化したので、次年度以降に空間解析が可能となった。(3)道路消毒ポイントでの消毒方法は、(1)消毒槽、(2)消毒噴霧、(3)流下式消毒、(4)噴霧式消毒、(5)消毒マットで実施されたことを把握した。また、消毒の処理時間(普通車の平均)は、(3)(約2秒)、(5)(約6秒)、(1)(約9秒)、(2)(約24秒)、(4)(約43秒)の順で早いことがわかったが、今後、設置方法・手順を検討する場合に必要な設置・運用費用や作業人数については把握できなかった。さらに、国道10号の消毒ポイント設置箇所においては、国土交通省の調査から国道10号では最大約3km(20~30分)の発生したことが確認されたが、アンケート回答者の90%が「渋滞はそれほど見られなかった」と回答している。「渋滞発生の有無」は、消毒ポイント設置の際の最重要課題であり、この詳細な検討・確認が課題として残った。(4)都城市では「えびの市で4月28日に発生した際に、他市町村への感染拡大を阻止したことが参考になった。」ことがヒアリングで得られたが、えびの市での防疫対応と消毒ポイント設置についてはデータを入手できておらず、この収集と分析が課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)前年度に整備したGISを利用して口蹄疫発生当初の発生位置と、消毒ポイント設置位置の時系列変化について空間解析して、消毒ポイント設置の効果や在り方について検討する。(2)口蹄疫の拡散が阻止されたえびの市などの防疫体制、消毒ポイント、道路消毒の状況をヒアリング調査し、消毒ポイント設置の有効性を検討する。また、市町村の消毒ポイントの準備状況を調査する。(3)(1)消毒槽、(2)消毒噴霧、(3)流下式消毒、(4)噴霧式消毒、(5)消毒マットによる消毒方法の特徴・特性について分析する。(4)口蹄疫防疫マニュアルは(1)発生農場入口:発生農場通行遮断付近(2か所)、(2)発生農場周辺付近:概ね1km付近の通行車両の多い道路、(3)移動制限区域ライン:10km付近の通行車両の多い道路、(4)搬出制限区域ライン:20km付近の通行車両の多い道路への消毒ポイントの設置を求めている。そこで、宮崎県などが実施する防疫演習に参加して、消毒ポイント設置の実務的な問題を調査・分析する。(5)口蹄疫発生地点の周辺道路を封鎖した場合、地域の道路交通にどのような機能低下を生じさせるかについて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)空間解析および交通解析に必要な道路ネットワークの数値データおよび交通量データなどの購入(物品費)(2)消毒ポイントの準備状況のヒアリング、交通解析データ・技術の収集、GIS技術の習得、研究成果発表のための旅費(旅費)(3)空間解析補助、アンケート整理、およびGIS技術供与(謝金)(4)アンケート等の郵送料(その他)
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Research Products
(1 results)