2011 Fiscal Year Research-status Report
赤外線温度画像処理を用いた視界不良時にも適応可能な交通流監視
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23560631
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩崎 洋一郎 東海大学, 産業工学部, 教授 (20168561)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 赤外線サーモグラフィ / 交通流状態検知 |
Research Abstract |
温度画像における車両前部に共通の形状特徴であるフロントガラス部分を中心とした領域をパターン認識し、さらに、計測領域全体を対象とした時空間画像処理により車両の静動状態を停止、低速走行、高速走行に3分類する手法を提案した。本研究では、さらに車両検出精度を上げるために、3つの補正処理を加えた。すなわち、パターン認識で検出漏れの車両を過去のフレームで検出していた位置のパターンを使ってパターンマッチングにより追尾するアルゴリズム、フロントガラスとは異なる認識面積の小さな誤検出を除くアルゴリズム、1台の車両に対して2箇所を検出した場合1箇所のみを矩形で囲むアルゴリズム、である。これにより、複数の異なる季節に撮像した動画像において、存在車両1460台中1404台を検出できた。したがって、車両検出精度は96.2%であり、当初の計画通りの車両検出精度が得られた。また、2月降雪濃霧下で撮像された動画像において、連続222フレームの画像中の車両を完全に検出・追跡できた。なお、同時刻に撮像した可視光画像では、視界不良のため車両検出は困難であった。 次に、交通流自動監視手法の構築を行った。交差点流入路の右折専用車線を除く3車線を交通流の計測対象とした。計測区間内の車両について、青信号開始直後から青信号終了直前までの車両台数を、停止車両台数、低速走行車両台数、高速走行車両台数に分類して計数した。青信号途中で、渋滞による前詰まり、車両故障・車両事故・違法駐車の突発事象が発生すれば、直ちに低速走行車両台数、停止車両台数が急増し、それらのしきい値を事前に決めておけば、突発事象を自動感知できる。また、急速に停止した車両位置も自動的に特定できる。交通信号制御用情報としても流入交通量すなわち交通需要の変動を感知できるため有用である。さらに、右折専用車線の車両台数を計数すれば、右折矢印信号の感応制御も可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「研究実績の概要」欄に記述したように、車両検出精度を上げるために3つの補正処理を車両検出アルゴリズムに加えた。これにより、6月、8月、10月の異なる季節に撮像した動画像において、存在車両1460台中1404台を検出できた。したがって、車両検出精度は96.2%である。また、2月降雪濃霧下で撮像された動画像において、連続222フレームの画像中の車両を完全に検出・追跡できた。なお、同時刻に撮像した可視光画像では、視界不良のため車両検出は困難であった。 次に、交通流自動監視手法の構築を行った。交差点流入路の右折専用車線を除く3車線を交通流の計測対象とした。計測区間内の車両について、青信号開始直後から青信号終了直前までの車両台数を、停止車両台数、低速走行車両台数、高速走行車両台数に分類して計数した。青信号途中で、渋滞による前詰まり、車両故障・車両事故・違法駐車の突発事象が発生すれば直ちに低速走行車両台数、停止車両台数が急増し、それらのしきい値を事前に決めておけば、突発事象を自動感知できる。また、急速に停止した車両位置も自動的に特定できる。交通信号制御用情報としても流入交通量すなわち交通需要の変動を感知できるため有用である。さらに、右折専用車線の車両台数を計数すれば、右折矢印信号の感応制御も可能である。 以上記述したように、複数の季節で収集した動画像を使って当初の目標値と近い車両検出精度が得られた。さらに、車両静動状態ごとに車両台数を計数し、その推移を自動監視することにより自由流、渋滞流の識別および交通需要の推定が可能であることが明確になった。したがって、「研究の目的」の達成度については、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
車両検出アルゴリズムに、「各車両のトラッキング情報」を収集する機能を追加する。当初、車両の温度変化を特定しオーバーヒート現象を検出する予定であった。しかしながら、これまでに多数の温度画像を収集したが、オーバーヒート現象により停止した車両は存在しなかった。また、オーバーヒート現象が車両表面の温度変化として現れるには時間遅れも考えられる。したがって、車両の温度変化の特定は、突発事象の検出に有用とは言えないと判断した。 各車線内に車両計測ラインを設定し、そのライン上の連続画素における時空間画像処理により車両のトラッキング機能を実現する。車両のトラッキング処理により、車両事故の場合、複数車両の走行軌跡が一致する、あるいは異常に接近することが考えられる。また、路側帯に近い位置で走行軌跡が途切れ、青信号開始後もそこから新たな走行軌跡が発生しない場合、違法駐車とみなせる。したがって、現在の車両検出アルゴリズムに、車両のトラッキング処理機能を組み合わせることにより、車両検出精度および突発事象検出精度の向上が期待できる。既に、トラッキング処理のアルゴリズム開発を始めており、計測精度を向上できる可能性が高いことが明らかになってきている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、季節変動・時間変動の環境変動への対応のために、異なった環境での温度画像を多数収集し、再度機械学習を行い、新たな多段階分類器を生成する予定であった。そして、その新たな多段階分類器を使って車両検出精度を検証する計画であった。しかしながら、車両検出アルゴリズムに3つの補正処理を加えた結果、複数の異なる環境における温度画像でも当初の計画通りの高い車両検出精度が得られた。 予備実験では、機械学習用の温度画像を増やして機械学習を行っても、当初の計画通り車両検出精度が上がらないことを経験した。したがって、長時間掛けて新たな機械学習用の温度画像を収集し機械学習を行っても、時間の無駄になることも多い。それよりも、「今後の推進方策」に記述したように、各車線内の車両計測ラインを基にした各車両のトラッキング処理とパターン認識を基にした車両検出処理とを組み合わせる手法の方が、車両検出精度のさらなる向上と突発事象の高精度な検出に有効と判断した。 以上の理由により、当初計画していた3台の高性能デスクトップパーソナルコンピュータの内、平成23年度は1台のみ納入した。平成24年度は、構築した画像処理アルゴリズムの高速処理のために高性能デスクトップパーソナルコンピュータを納入する計画であるが、平成23年度からの繰越予算の有効活用として画像処理アルゴリズムをより短時間に構築できるように、画像処理開発ツール(ソフトウェア)の導入なども検討する。
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Research Products
(2 results)