2012 Fiscal Year Research-status Report
赤外線温度画像処理を用いた視界不良時にも適応可能な交通流監視
Project/Area Number |
23560631
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩崎 洋一郎 東海大学, 産業工学部, 教授 (20168561)
|
Keywords | 赤外線サーモグラフィ / 温度画像 / 車両検出 / 交通流状態検知 / 環境変動 |
Research Abstract |
「本研究の基盤技術である車両検出アルゴリズムについて、季節変動・時間変動の環境変動に対しての車両検出精度を検証する。環境変動に対して高い車両検出精度が維持できない場合、車両検出アルゴリズムの改良を検討し実施する。」と研究実施計画には記述している。 昨年度までに提案したパターン認識を用いた車両位置・車両静動状態検出アルゴリズムでは、車両のフロントガラスとその周辺領域を検出対象としている。氷点下まで低温ではない冬季環境では、この検出領域の温度が外界の温度と近くなり、車両検出精度が低下することが判明した。そのために、平成24年度において、パターン認識に頼らない新たな車両検出アルゴリズムの構築を行った。 赤外線サーモグラフィは、物体からの放射エネルギーおよび反射エネルギーを捉えて温度に換算する。つまり物体自体が持ってる熱の放射以外に、他の物体からの熱の反射も捉えている。撮像された温度画像から、タイヤからの熱を路面で反射した領域の画素値が高く明確に視認できることを確認した。そこで、車両側面に位置する箇所の画素値を計測し、タイヤからの路面反射エネルギーの濃度変動を検知することによって車両を検出する新たな車両検出アルゴリズムを構築した。パターン認識によるアルゴリズムでは車両検出精度が低い温度画像に対して、新たな車両検出アルゴリズムでは、93.5%の車両検出精度が得られた。したがって、2つのアルゴリズムを補完しながら使用することにより、環境変動に強い車両検出の実現が期待できる。 さらに、交通流自動監視手法の検討を行った。停止車両、低速走行車両、高速走行車両の位置と台数は既に検出できるので、この情報を最大限活用したシンプルな交通流自動監視手法を構築する。さらに、車両故障・車両事故・違法駐車の突発事象自動検知機能の構築についても準備を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、「研究実績の概要」欄に記述したように、新たなアルゴリズムを追加し、2つのアルゴリズムを補完しながら活用することにより、季節変動・時間変動の環境変動に強い高精度な車両検出が概ね可能となった。環境変動に対して高い車両検出精度が維持できることは、本研究の基盤であり、高精度な交通流自動監視の実現につながる。したがって、この基盤技術確立の目処が立ったことは1つの大きな成果と言える。 交通流自動監視については、検討を重ねた結果、停止車両、低速走行車両、高速走行車両の位置と台数は既に検出できるので、この情報を最大限活用したシンプルな交通流自動監視手法を構築することが最も効率的であると結論付けた。したがって、車両のトラッキング処理の構築と追加は行わない。次年度の研究実施計画である車両故障・車両事故・違法駐車の突発事象自動検知機能の構築についても準備を行った。 以上述べたように「研究の目的」の達成度については、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
タイヤからの路面反射エネルギーによる濃度変動を検知することによって車両を検出する新たな車両検出アルゴリズムについては、計測領域の中央から外れた外側に位置する車線の車両検出について十分な検出精度が得られていない。したがって、これらの車線上の車両検出精度を上げるようにアルゴリズムの改良を行う。これにより、計測領域内全車線において環境変動に強い車両検出手法を完成させる。 車両故障・車両事故・違法駐車の突発事象自動検知機能の構築については、実交通流の観測を通してこれらの発生頻度の低い突発事象の映像を収集することは困難である。研究実施計画では、シミュレーションの活用を計画していた。しかしながら、単なるシミュレーションでは、実交通流を忠実に再現できているか否かの検証が難しい。そこで、実交通流映像の1車線をマスクして、そのマスクした車線上に複数のモデルカーを配置し、モデルカーの遠隔操作によって突発事象を再現する。それと同時にモデルカーの映像と実映像とを合成する。この合成映像を使って、停止車両、低速走行車両、高速走行車両の位置と台数の変動を計測し、突発事象発生時の変動パターンを収集する。そして収集した変動パターンを基に突発事象自動検知機能の構築を目指す。最終的に、1) 自由流・渋滞流の識別、2) 交通需要の推定、3) 車両故障・車両事故・違法駐車の突発事象の自動検知機能を有する交通流自動監視手法を構築する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は本研究の最終年度であるので、研究成果発表を活発に行う。そのために学会発表のための旅費および研究成果投稿料に経費を多く割いている。また、複数のモデルカーおよびデータ整理用パソコンなどの購入のために消耗品費にも多く配分している。 次年度使用額も含めて研究成果を上げるために有効に研究費を活用する。
|
Research Products
(5 results)