2012 Fiscal Year Research-status Report
都市高速道路の料金政策に着目した交通運用に関する研究
Project/Area Number |
23560636
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
秋山 孝正 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (70159341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥嶋 政嗣 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (20345797)
鈴木 崇児 中京大学, 経済学部, 教授 (70262748)
井ノ口 弘昭 関西大学, 環境都市工学部, 助教 (10340655)
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Keywords | 交通計画 / 都市高速道路 / 対距離料金制 / 交通運用 / 知的情報処理 |
Research Abstract |
前年度の検討結果を踏まえて、対距離料金を拡張した現実的な課金政策に関する分析を行った。特に「空間的」な運用視点から、弾力的な料金設定の有効性を検証するとともに、具体的な都市高速道路料金設定方法に関する検討を行った。 1) 前年度の「対距離料金制」を拡張した料金形式を検討した。具体的には、コードンラインなどを考慮した「区間別料金」等の空間的な料金設定を検討した。これらは多様な料金政策に基づく交通需要調整に対応する。この際、交通需要変動を前提とした定量分析が必要であり「需要変動型交通均衡分析モデル」を開発した。 2) 空間的に複数料金形式の同時設定法を提案した。異なる多数の関数形状を設定し、交通量推計を内包した組み合せ最適化を実行する場合、演算の実行可能性に問題がある。このため、実用性に配慮した「知的情報処理」による算定法を提案した。 3) 知的情報処理過程として、①事前に料金形式の複数ケースの定量的評価値を算定する。②設定形式と社会的便益(算定結果)の非線形関係をファジィNN型推計モデルで表現した。③社会的便益推定モデルを内包した組み合わせ最適化問題の定式化を行った。これは、膨大な推計計算を簡略化した近似的な最適解を導出する技術的提案である。これより任意の料金形式の有効性の比較検討が可能となる。 4) 理論モデル分析により各要素パラメータを最適設定した空間的な料金形式として、区間別(ゾーン別)の一般的な対距離料金を提案した。これより都市高速道路の適切な料金設定が、都市道路網の交通調整面で効果的で、次善料金として有効に機能することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、ほぼ当初の計画通りに進展している。特に大局的な研究成果は予定通り得られており、若干の追加的議論が必要であるが特に研究遂行上の支障はない。この点に関連する主要な研究成果と課題に関して以下に整理する。 1)現実規模のネットワークに関して、需要変動型の交通均衡配分の実行可能なモデルを開発した。このため予定通り需要変動型の交通解析が可能となった。具体的な需要関数の設定に関して、一般的なモデル形式に関する若干の議論が残されているが、現時点では妥当な分析結果が示されている。 2)組み合せ最適化の定式化を行い、特定のケースを設定した総当たり法を利用して、ケース間の比較に基づいて、最適な高速道路料金形式の決定を行った。この点について、解析技術面では、仮想的ネットワークを利用した知的情報処理の導入方法の整理を検討している段階であり、さらに効率的な計算方法の提案を意図している。 3)現実規模のネットワークを対象とした交通量配分計算の労力を軽減するための予測モデルをNNモデルにより構成している。これは、社会的便益の推計を簡便に行うことで、多様な料金形式設定の解を近似的に求めようとする提案である。この方法についてすでに学術的な報告を行っており、本年度の中心的成果のひとつとなっている。 4)本年度より、現実規模の都市高速道路ネットワークに対応した分析と理論的なモデル分析を両面から実行している。前者からは現実ネットワークにおける料金政策面の課題が導出され、後者からは理論的問題点を指摘することができる。これらは最終年度における研究成果の体系化に有効であると考えられる。 5)現時点において、次年度に向けて環境負荷を考慮した都市高速道路の運用方法に関して議論を開始しており、本年度に開発された方法論についての拡張を検討している。これより最終年度の研究内容への展開がきわめて容易であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は都市高速道路の料金政策を統合化した交通運用について検討する。特に環境負荷を考慮した交通運用と現実的交通制御を考慮した統合的交通政策を検討する。 1) 都市道路網の社会的余剰に対して、環境負荷項を導入する。すなわち道路効率性に加えて、持続可能性に配慮した交通運用を検討する。具体的には、環境税を包含した課金効果について、前年度までに開発された解析方法を適用する。この際、既存研究の環境負荷量(CO2排出量)推計法が利用可能である。 2) 道路交通の効率性と持続可能性は必ずしも同時に達成されない。このため都市道路網全体の多目的な交通運用を目指した料金政策を実証的に検討する。特に、知的情報処理の適用から、多目的最適化問題の解として交通運用方式を同定する。 3) 都市圏全域に対して、道路効率性と持続可能性を考慮した体系的な交通運用方法を提案する。このとき、都市高速道路課金による社会的便益について、理論的考察を含めて、実証的な整理を行う。また、環境負荷に着目した交通制御と最適料金政策の有機的な関係性について具体的に整理する。 4) 最終的な研究整理を行うとともに、都市高速道路課金における現実的な問題点を検討する。統合的な交通運用の構成を示し、今後の研究課題を整理する。 最終的には、都市高速道路の料金政策の時間的・空間的な交通運用方策を体系的に整理する。また各年度の研究成果は土木学会・日本交通学会等で報告するとともに、都市高速道路関係機関において現実的な議論を行う。これらの関連する研究に関する最終成果は研究成果報告書としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
料金設定の各種方法を検討するための交通均衡分析のモデリングにおいて、交通工学分野、計算機工学分野の知見を整理する必要があり、当該分野の関連書籍を計上している。 また、現実規模のネットワークデータの保存・解析のための高速記録装置を計上している。また、研究内容に関する議論・学会における研究報告のための旅費、および研究分担者との打合せ旅費を計上している。さらに、多数の計算機プログラムの運用と計算結果の整理のためのアルバイト代を計上している。また、研究成果の論文投稿のための経費および報告書印刷費を計上している。 なお、平成24年度においては、パーソントリップ調査結果、都市高速道路交通調査結果などの関連機関のデータ収集が遅延した。このためデータ解析のための作業補助謝金、研究打ち合わせ旅費などの使用が繰り越された。最終年度は作業日程を再構成して、遺漏のない計画を実行する。
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Research Products
(6 results)