2011 Fiscal Year Research-status Report
広帯域強震動予測のための微動探査手法の不整形地盤領域における推定精度の検証
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23560670
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上林 宏敏 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (30300312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 洋 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 研究員 (40302947)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地震防災 / 強震動予測 / 地下構造 / 微動 / 水平・上下動スペクトル比 / 不整形地盤 / 差分法 / シミュレーション |
Research Abstract |
平行成層モデルに基づく微動のH/Vスペクトルを用いた地下構造の推定において,不規則地下構造領域での推定誤差を大阪堆積盆地を対象に,実観測記録及び数値シミュレーションによって評価した。その結果,以下のことが分かった。基盤の段差構造や地溝帯といった不規則性が強い領域において,平行成層モデルでは実際に比べて,H/Vピークの卓越周波数の差異が20~40%となる。同様の比較において,基盤面構造が地表面とほぼ平行であっても上記の強い不規則領域にやや近い領域や基盤傾斜が緩やかな領域においても,最大20%程度の差異が生じる。さらに,上記の不規則性が強い領域において,水平成分の振幅に異方性が見られること,また不明瞭なH/Vスペクトルのピークとなることから,誤った卓越周波数において発表した。 さらに,対象とした堆積盆地モデルの精度や観測によるH/Vスペクトルの推定誤差を評価するため,差分法によるシミュレーションと観測によるH/Vスペクトル(卓越周波数では無くスペクトル曲線に対して)の残差を求めた。その結果,観測点ごとに20~50%の残差があり,それらの平均は30%弱であった。 次(平成24)年度以降,実施予定の平行成層モデルに基づく,H/Vスペクトルの卓越周波数のみならずスペクトル形状へのフィッティングによる地下構造推定手法による推定誤差を評価するための計算アルゴリズムの整備を実施した。また,浅層地盤モデルを上記地下構造モデルに取り込むべく作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平行成層構造モデルによる微動H/Vスペクトルの卓越周波数に着目した不規則な地下構造領域を含む実地盤における推定誤差の(適用限界)評価は行うことができた。また,不規則地下構造が微動H/Vスペクトル特性へ及ぼす影響を定量的に評価することもできた。これら評価には実観測と差分法による大規模かつ長時間のシミュレーションが必要であった。特に,後者のシミュレーションにおいて,差分法特有の地下構造モデルに依存する数値計算誤差の発散に伴う計算の中断及びその対応のためのモデルの修正に多大な時間を要した。その結果,当初目標であった浅層地盤を含むシミュレーションを実施することができなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平行成層モデルに基づくH/Vスペクトルの卓越周波数への不規則構造による地下構造推定誤差については当該年度においてほぼ,評価することができた。不規則構造によるH/Vスペクトルへの影響は卓越周波数よりむしろ,ピーク値やピーク形状に影響することが,当該年度の研究で分かった。そこで,次年度においてはスペクトルの形状やピーク値にも着目することで,高度化された平行成層モデルに基づく地下構造の推定誤差,適用限界について調べる。 その後,浅層地盤モデルを組み込んだ深部から浅部までのシームレスな堆積盆地構造モデルを対象とするシミュレーションを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平行成層モデルに基づくH/Vスペクトルの評価において,当該年度はレイリー波の基本モードのH/Vスペクトルのピーク周波数のみに着目し,観測や差分法によるシミュレーションと比較した。次年度では,前記の推進方策に基づき,平行成層モデルにおいてH/Vスペクトル形状やピーク値について,レーリー波やラブ波の高次モードを含む評価を行い,観測や差分法によるシミュレーション結果との比較検討を行う。 また,深部から浅部までのシームレスな堆積盆地構造モデルの差分法によるシミュレーションを行い,深部のみ考慮した場合との差異についても検討する。 前述のように,差分法によるシミュレーションには計算誤差の発散に伴う研究の遅滞が生じる。さらに,次年度はより計算誤差が蓄積され易い浅部地下構造を導入するため,計算機のパフォーマンスを向上させる必要がある。そのため,今年度の物品費等の一部を次年度使用額に計上する。
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