2011 Fiscal Year Research-status Report
精神科病院における空間的アプローチによる治癒環境に関する研究
Project/Area Number |
23560714
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中山 茂樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80134352)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
積田 洋 東京電機大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60120119)
鈴木 弘樹 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50447281)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 精神科病院 / 空間的アプローチ / 治癒環境 / 保護室・隔離室 / 空間心理 / 空間認知 / 建築計画 / 患者の行動 |
Research Abstract |
これまでの精神科病院に関する研究は、主に施設の使われ方や患者の社会復帰のための実態調査とそれに対する提言に関する研究が中心となっている。精神疾患は数の上では統合失調症が最も多いが、最近は若年層を中心としたストレス症、高齢者の認知症までかなり幅広く、そのための施設においても規模や組織形態、設備において幅が広いのが現状である。精神疾患に対する治療方法についても日々改良や改善、発展しており、精神病院ごとに施設および治療法の特徴がある。ある意味、精神科病院は、医師の治療法を体現する機能的器としての側面があるため施設計画や使われ方研究は、概論的なものとなり、細部は医師や看護師の工夫や意見によって決定されている。そのため精神病院の建築計画研究は、長い間手がついていない領域であった。しかし、精神疾患の患者は急増し、その予備的患者も潜在的に多く、早急に取り組まなければならない課題である。本研究は、今までの建築計画的研究ではなく、空間がどのように患者に影響し認知・把握されているかを捉え空間認知的アプローチにより精神病院をとらえなおそうとする研究である。今まで病院空間は、患者にとって医療行為を受けそれ以外はただいる場であったが、空間は何らかの影響を患者に与えている。そこに着目しいていることは、本研究最大の特徴であり、病院の本来の姿である治癒環境の提案を行うことにある。今年度は、研究全体の基礎となる大切な期間に当たる。国立精神・神経医療研究センターと意見交換を行い、協力を得ながら実験方法の検討を行なった。打ち合せなど通して予備調査を行うための準備、調査範囲等を検討し決定し、協力が得られた病院で健常者による予備実験を行った。また、精神科病院122病院142病棟に保護室数、SSとの位置関係等のアンケートを実施した。概ね今年度予定していた研究成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、国立精神・神経医療研究センターと意見交換を行い、協力を得ながら実験方法の検討を行なった。また、先進的な試みを行なっている精神科病院を視察し現状の把握を行う調査を行った。その一環で、精神科病院の保護室・隔離室の変遷を過去の資料やヒアリング等を通し収集した資料をもとにまとめた。調査の検討については医学で用いられている患者本人がアンケートに答える自記式のアンケートをベースに、積田・鈴木で行ってきた心理実験を応用しSD法心理実験等を検討を行い、国立精神・神経医療研究センターとの打ち合せなど通して予備調査を行うための準備、調査範囲等を検討し決定した。先進的な試みを行なっている精神科病院を視察した中から協力が得られた病院で健常者による予備実験を行った。その結果等を元に来年度行う予定の健常者による本実験のための情報の収集と検討を行なった。一方、122病院142病棟分の保護室平面図の収集により、保護室数、SSとの位置関係、デイスペースのタイプ、観察廊下の型、保護室内トイレの位置の向きなどの大まかな概要を分析し、保護室の実態について、当該病棟看護師による環境評価を行い、レパートリーグリッド法による分析を行った。今年度は震災や精神科病院特有の調査がしづらい環境の中、十分な視察なり調査を行うことができなかったが、概ね最低限必要な情報を収集でき、今年度予定していた研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定してた中山、積田、鈴木の3名の分担については、概ね予定通り分担ができ予定された成果を収めることができた。また国立精神・神経医療研究センターの協力、調査予定の病院の確保が予定通り進んでおり、今年度の研究体制を維持し、来年度も引き続きけこの研究体制を維持し研究を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度は、今年度収集できたデータをもとに、本実験ための調査地の確保、調査するための諸手続き、実験の内容を既に決定しており、予定通り健常者による本実験を行い、医療関係者などの意見を聞きながら慎重に患者へのアンケートや実験の予備調査を行う予定である。本実験・予備実験のための調査地への交通費や早朝から深夜の調査が予定され、そのための調査諸経費や調査協力者・調査員への謝金、データー整理の謝金を予定している。
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