2011 Fiscal Year Research-status Report
新しい計画論に対応する先進的ゾーニング制度の普及に関する研究
Project/Area Number |
23560718
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高見沢 実 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (70188085)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ゾーニング / ニューアーバニズム / 普及 |
Research Abstract |
現行のゾーニングは「ユークリッドゾーニング」として20世紀に普及したもので、特に土地利用(用途)の分離を特徴としている。しかし近年、(1)用途分離の弊害が大きく(スプロールの助長、住宅地における活力低下等)、(2)景観や市街地形態が十分にコントロールできない問題等が大きな課題となっている。こうした課題を解決するには、これからめざすべき市街地像や計画論を念頭に置きながら、都市計画制度の基礎としてのユークリッドゾーニングそのものを問い直す取り組みが不可欠である。本研究はこうした問題意識の上に、新しい計画論に対応できるゾーニング制度のあり方を、内外における先進事例の比較調査を基礎として提起することを目的として初年度の研究を、特にニューアーバニズムの制度化に着目して研究を行った。具体的には、文献・資料の分析等により、米国における制度化の動向を体系的に整理した。特に、既存ゾーニングを廃止して新しいニューアーバニズム型のそれに置き換えたフロリダ州マイアミ市の事例を詳細に分析し、一般に、街区レベル程度の固まりごとに旧ゾーンを新ゾーンに置き換えている、規制強化につながり住民・地権者の理解が得られない部分はインセンティブを含む誘導によっていることがわかった。しかし、用途混合を進め歩行者空間に沿って街並みに表情をつけることで旧ゾーニングがもたらした問題を克服しようとする基本線は貫かれていることも同時にわかった。一方、「デッドモール」と呼ばれる大規模商業地の衰退地区の事業方式による再生事例も含めたアメリカのニューアーバニズムの最新動向も、不動産事業や市場の変化、政府の施策や大都市圏政策の変化等とともに明らかにし、新しい制度の「普及」のための基本的構造が徐々に明確になってきた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい計画論に対応できるゾーニング制度のあり方を、特にニューアーバニズムの制度化に着目して研究を行い、特に、既存ゾーニングを廃止して新しいニューアーバニズム型のそれに置き換えたフロリダ州マイアミ市の事例を詳細に分析したことは成果の中心部分である。もともと例外的にゾーニング制をとっていないヒューストン市の例や、開発許可制度を改善して1つ1つの開発をニューアーバニズム型に誘導しようとする西オーストラリア州の例などについては、文献整理を行った。当初計画ではさらに、さまざまな方式を分類することが強調されていたが、研究を行ってみると、その前段として、不動産事業や市場の変化、政府の施策や大都市圏政策の変化等の基本的動向が重要なことがわかり、まずはそれらを明らかにすることの重要性を認識し、それらの体系をまず明らかにすることに注力した。例えば、「デッドモール」と呼ばれる大規模商業地の衰退地区の事業方式による再生事例もその1つで、ニューアーバニズム型ゾーニングが同時にかけられるのが一般的である。どのような都市計画システム(本研究ではゾーニング)が適しているかは、政策的背景もさることながら実際の不動産事業者の事業判断や消費者(入居者)の財産観、ライフスタイル等に左右される。また、副次的に、新しい都市計画・都市デザインを導入しようとする都市計画プランナーやデザイナー等の考え方もわかってきた。同時に、行政担当者や議員等の理解も重要であるため、都市計画技術としてどのように新しいゾーニングを理解させつつ導入していくかが重要であることも確認できた。初計画で弱かったそうした制度の「普及」の鍵となりそうな大きな枠組みを獲得することができたので、順序や分類方法等はいくらか変更されたものの、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度は、市場や政策の動向のマクロな整理を踏まえて、制度導入プロセスや制度運用につき深く分析する。まず、フロリダ州マイアミ市(全市を新しいニューアーバニズム型ゾーニングに置き換えた)について、実際の開発事業事例等をどのように運用しているか、当初意図したような近代都市計画の弊害を乗り越えるような成果が得られているか等の視点から、新制度導入後の評価を重点的に行なう。これと並行して、都市の一部だけを新ゾーニングに置き換えたペタルーマ市(ダウンタウンのみを置き換え)や、全市への導入を検討している他市の事例を調査する。一方、新しいゾーニングと既存ゾーニングを選択制にする事例等については、1)適用エリア・方法、適用基準の決め方、2)運用後の状況の2点を中心に研究を進める。この際、そこが新規開発エリアなのか、既成市街地なのか、再開発予定地区なのかによって新しいゾーニングの役割も異なってくる。この点に注意しながら、また、不動産事業者とプランナー(デザイナー)、行政担当者との関係にも着目しながら、できるだけ1つ1つの事例を通して多様な技術を明確にする方向で分析・整理する。なお、既存文献もかなり蓄積されてきた。これまでそれらのごく概要しかまとめてこなかったが、平成24年にはもう一度重要な点については補足的に文献整理も並行して進める。25年度は日本国内の自治体、デベロッパー、デザイナー(建築家等)を対象としたアンケート調査を企画・実施する。日本でも「歩いて暮らせる街づくり」「用途が混合する活気ある市街地」等には各自治体で一定程度の理解がされていることがプレ調査により把握できている。本研究テーマに即してアンケート調査を企画・実施したうえ、その結果等を踏まえて、ゾーニングや地区計画等を軸とした制度改革の方向について検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
小額であるが、23年度の経費が一部繰越しとなる。これは、年度末に予定していた「その他」経費であるが、次年度にもつながる部分であるため、無理にゼロ円にするのでなく、新年度に執行した方が有効かつベターな執行ができると考えたため残したものである。24年度は、この残額も含め、当初計画に沿って研究費を使用していく計画である。23年度に明確になった、アメリカにおける不動産事業環境の変化や消費者の選好の変化、これらと一体となった政策変化等を、文献調査の形でさらに深く整理するため、物品費や人件費・謝金、その他消耗品費が一定額必要である。特に、ケースごとに対象地域の都市計画図面、ゾーニング条例本文、さらに個別の地区ごとのルールや地図類、議会資料等を大量に分析する必要がある。図面はカラーのものを扱うため、経費もかなりかかる。また、CNU(ニューアーバニズム会議)が発行しているベストプラクティスなどの基本文献も購入予定であるほか、ゾーニングや都市計画制度を中心とする諸文献も購入予定である。また、具体的な事例の現地調査のため、旅費を使用するほか、現地でしか入手できない物品・諸資料等の購入費が必要になる。研究の継続性と発展性を考え、本年度の渡航先はアメリカのマイアミ市におけるフォロー調査を中心にすることを予定している。なお、これまで蓄積してきたジャーナルや図書に掲載されてきた主要論文について、さらに付加的な整理を進めるため、一定程度の人件費が必要である。
|
Research Products
(1 results)