2012 Fiscal Year Research-status Report
新しい計画論に対応する先進的ゾーニング制度の普及に関する研究
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23560718
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高見沢 実 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (70188085)
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Keywords | ゾーニング / ニューアーバニズム / 普及 |
Research Abstract |
現行のゾーニングは「ユークリッドゾーニング」として20世紀に普及したもので、特に土地利用(用途)の分離を特徴としている。しかし近年、①用途分離の弊害が大きく(スプロールの助長、住宅地における活力低下等)、②景観や市街地形態が十分にコントロールできない問題等が大きな課題となっている。こうした課題を解決するには、これからめざすべき市街地像や計画論を念頭に置きながら、都市計画制度の基礎としてのユークリッドゾーニングそのものを問い直す取り組みが不可欠である。本研究はこうした問題意識の上に、新しい計画論に対応できるゾーニング制度のあり方を、内外における先進事例の比較調査を基礎として提起することを目的としている。初年度の23年度はニューアーバニズムの制度化に着目して研究を行い、米国における動向を体系的に整理した。24年度は、制度導入プロセスや制度導入後の運用実態につき分析を行った。まず、フロリダ州マイアミ市(全市を新しいニューアーバニズム型ゾーニングに置き換えた)について、当初意図したような近代都市計画の弊害を乗り越えるような成果が得られているかの視点から新制度導入後の評価を行った。一方、新しいゾーニングと既存ゾーニングを選択制にする事例については、併用型(既存ゾーニングの上に重ねてニューアーバニズム型のゾーニングを指定し開発者が選択できる)、事業者提案型(自治体は基準だけ示しておき開発者が適用エリアを指定して提案する)、移行期間設定型(ガイドラインでスタートして制度改善を図りながら一定期間後にニューアーバニズム型ゾーニングに正式移行)が特定できケーススタディーを行った。文献も新たに『RETROFITTING SUBURBIA(updated edition)』(WILEY2011)等が出て全米の多様な事例を俯瞰できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい計画論に対応できるゾーニング制度のあり方を、特にニューアーバニズムの制度化に着目して研究を行い、特に、既存ゾーニングを廃止して新しいニューアーバニズム型のそれに置き換えたフロリダ州マイアミ市の事例を詳細に分析し、24年度にはさらにその運用実態を整理したことが成果の中心部分である。具体的には、1)(準)郊外の戸建て住宅エリアでの効果が出ていることや、2)都心部においても条件付き承認等の形で歩行者への配慮等が1つ1つの開発で誘導されていること、ただし、3)大規模開発の一部ではなかなか事業者側が新しいゾーニングの意図に歩み寄りを見せない場合があること、さらに、4)用途の解釈や手続き期間が短すぎること等の面で制度上の課題も指摘されていることなどがわかった。特に、ゾーニング技術の進化の面からみると、1)は予めコードの中に形態をきめ細かく定めつつ一部の空間要素はインセンティブが働くように設定した成果であること、2)はニューアーバニズム型ゾーニングの主旨に適合するランドスケーププランを提出することや実際のファサードの部位の材料を提示することを承認の条件とする等により新しいゾーニングの効果を高めていること、3)は任意のデザインレビュープロセスを用いることで時間をかけながら両者の隔たりを埋めようとしていること、4)は今後の課題ともいえるがこうしたグレーゾーンは1つ1つ積み上げることでニューアーバニズム型の条例の価値が高まると考えられることが理解できた。新しいゾーニングと既存ゾーニングを選択制にする事例からは、新旧条例の時間的、空間的な組み合わせを柔軟にすることで、対立しがちな行政と事業者の関係を円滑化しつつニューアーバニズムのねらいを浸透・普及させていることがわかった。このように、運用レベルの研究を付加することで、より実際的なレベルで先進的ゾーニング制度の普及実態がとらえられた。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は日本国内の自治体、デベロッパー、デザイナー(建築家等)を対象としたアンケート調査を企画・実施する。日本でも「歩いて暮らせる街づくり」「用途が混合する活気ある市街地」等には各自治体で一定程度の理解がされていることがプレ調査により把握できている。本研究テーマに即してアンケート調査を企画・実施したうえ、その結果等を踏まえて、ゾーニングや地区計画等を軸とした制度改革の方向について検討する。具体的には以下の2段階で研究を進める。 1段階目の調査は、概要の把握と、調査研究協力主体、実践事例の発掘を主な目的とする。主な設問は以下の通り。①現在のゾーニングの問題点(特に制度自体の問題点。用途地域の変更では満たせないこと、②地区計画制度の限界、③景観法の効果と課題、④北米でみられるような新しいゾーニングに対する支持/問題点、⑤実現してみたい事業内容、程度、その可能性と課題(特に建築基準法等の限界)。 2段階目の調査は、実例や協力的な主体に対する集中的なインタビュー等を行ない、以下の点を明確にする。主な調査事項は、①わが国で構想すべき新しいゾーニングの仕組み・内容・導入方法、②その場合、都市計画法、建築基準法、景観法はいかに変わるべきか、③その場合、デベロッパー、デザイナー、行政プランナーの役割分担である。 最終的に、ゾーニングを軸とした新しい都市計画制度の構想をまとめる。具体的には、地方自治が一層進展したあとの標準ゾーニング条例等(手続きも含む)の具体的姿、ゾーニングとマスタープランとのリンクのさせ方、ゾーニング見直しの方法等を提案する。また、並行して海外調査もフォローアップの形で1回行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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