2012 Fiscal Year Research-status Report
非プロトン性溶媒中における化学還元による超耐熱合金原料の超微粒子化に関する研究
Project/Area Number |
23560855
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
阿部 英樹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主幹研究員 (60354156)
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Keywords | 超耐熱合金 / 粉末冶金 / ナノ粒子 / 前期遷移金属 / 液相反応 / 常温常圧 / ニッケル / アルミニウム |
Research Abstract |
Ni-Alナノ粒子・Ni-Tiナノ粒子およびNi-Nbナノ粒子の合成に成功した。特に、耐熱性Ni合金の主成分をなすNi-Al合金(Ni:Al=95:5)を、直径10 nm以下の超微粒子の形で合成した点は特筆に値する(特許申請済み)。Ni-Tiナノ粒子およびNi-Nbナノ粒子に関しても、数パーセント程度のモル分率にとどまるものの、目的とするNi合金ナノ粒子(直径平均<10 nm)の生成を確認した。これは、従来、アトマイジング法やメカニカルミリングなどトップダウン合成法によってしか合成することができず、その粒子径は最小でも100 nm程度が限界とされていたNi-Al・Ni-Nb・Ni-Ti系合金微粒子の最小粒径を従来値の1/10に引き下げる画期的な成果である。 非プロトン系溶媒(テトラヒドロフランまたはダイグライム)溶媒中において、Ni(glyme)Cl2・LiCl錯塩をNiプリカーサーに、AlCl3・TiCl4(THF)2・NbCl4(THF)2を第2元素のプリカーサーとして利用した。ナトリウムナフタリド(NaNaphthalide)を還元剤として使用し、常温・常圧下において、上記のプリカーサーを還元することによって、目的物質を合成した。合成されたナノ粒子は真空中で加熱し、表面に付着した有機コンタミネーションを除去したのち、シンクロトロン高輝度X線源を利用した硬X線光電子分光法(HX-PES)によるキャラクタリゼーションを行った。その結果、Ni-Al・Ni-Nb・Ni-Tiナノ粒子いずれの場合にも、それぞれ、金属状態のNiマトリックス内部に金属状態で合金化されたAl・Nb・Ti原子の存在が実証された。試料の化学組成・粒子径・結晶構造はそれぞれ、ICM質量分析・透過電子顕微鏡観測・X線回折および透過電子線回折によって同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ni-T系(T=アルミニウムまたは前期遷移金属)合金ナノ粒子の液相合成における最大の困難は、プリカーサーのリガンドに由来するナノ粒子表面の汚染であることが、本年度までの研究によって明らかにされた。表面汚染の結果、目的とするNi-T化学結合の形成が阻害される。ナノ粒子表面の汚染を防ぐために、Niプリカーサーとして多くの分子を試した結果、有機金属分子:Ni(glyme)Cl2・LiClを使用する新しい合成法を開拓、はじめて、Ni95Al5の組成を持つNi-Alナノ粒子の合成が可能になった。Ni(glyme)Cl2・LiClはNi-T系ナノ粒子合成におけるブレイクスルーであり、このブレイクスルーを実現したことにより、本研究が狙う他のNi-Ti系ナノ粒子(T=Ta,W,Mo)などの実現に道筋をつけることができた。上記理由により、現時点において、本研究は当初計画を上回る速度で進展しているものと結論した。
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Strategy for Future Research Activity |
Ni(glyme)Cl2・LiClをNiプリカーサーとして利用し、Ni-Ti系ナノ粒子(T=Ta,W,Mo)の合成に挑む。すでに合成に成功しているNi-Al・Ni-Ti・Ni-Nbナノ粒子に関しては、Al・Ti・Nbの濃度を高めるために(目的値:T/Ni>0.25(モル比))、反応条件の最適化を行う。具体的には、高圧ベッセルを利用した200℃・1 MPaまでの反応条件化において、上記NiプリカーサーとAl・Ti・Nbプリカーサーの還元を行う。これにより、合金ナノ粒子表面の有機リガンド汚染を分解・除去しながら、高収率でのナノ粒子合成を行うことができるものと予想している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
すでに必要とする合成装置・同定装置は完備しているので、次年度は、研究費のすべてを試薬および消耗反応用品(ガラス容器・スピンバーなど)の購入に投資する予定である。
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