2011 Fiscal Year Research-status Report
周辺に高段差をもつ微小領域での機能性材料マイクロパターン形成手法の研究
Project/Area Number |
23560867
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
幹 浩文 和歌山大学, システム工学部, 助教 (20403363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土谷 茂樹 和歌山大学, システム工学部, 教授 (30283956)
菊地 邦友 和歌山大学, システム工学部, 助教 (20588058)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 吐出機構 / 高段差 / 機能性インク / 微細パターン |
Research Abstract |
本研究では周辺に高段差をもつ微小領域での機能性材料のマイクロパターン形成を目的に、瞬間的磁場勾配による磁気応力を用いた新しいインクジェット機構を提案し、その目的実現の第一歩としてH23年度ではノズル開口部近傍での急峻な磁場勾配と温度勾配が実現可能な最適パラメータ関係を目指して磁場および熱解析を行い、インクジェットヘッド部における構造・寸法と吐出力間の関係を調べた。機能性インクにキュリー温度が低いフェライトを水、中性洗剤と1:1:1の体積比で磁性流体とし、永久磁石には保持力800kA/mのネオジウムを用いた時、ノズルの幅とインクチャンネル長には最適比例関係が存在し、また同時にインクタンク室のチャンネル末端からの傾斜角度もインクジェット吐出力に大きく影響を与えることが分かった。ノズル開口部近傍で急峻な磁場勾配を得るためにノズル先端部では非磁性材料の構成が吐出力には有利な方向に働くことも解析結果から検証できた。インクが瞬間加熱によって気泡が発生しない程度のキュリー温度のもとでもっとも飽和磁化が大きい磁性流体を調合し、加工プロセスの実現性を考慮の上、ノズルとチャンネル構造を矩形に限らず円・円柱・円錐構造を入れてインクタンクと流路チャンネル・ヘッド先端部をさらに具現化したモデルで吐出力の最適構造を再確認し加工プロセスを確定することが重要である。本研究課題の実用化を目指しての必要要素としてマイクロ加熱機構において瞬間加熱と冷却にかかる時間遅延のレベルがインク吐出状況への悪影響をさらに詳しく検証する必要がある。今年度研究実施計画の中で重要な要素技術と基礎データは把握でき次の研究ステップに移るための方向性と必要課題について明確になった段階となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インクジェット技術は、各種機能性インクを吐出させることによって対象への微細パターン形成が期待できるが、周辺に高段差を持つ平坦性の悪い状況には対応できない。現状のインクジェット吐出機構では、飛翔距離を長くするため液滴の吐出力を大きくすると、液滴が空中で分解飛散し、微細パターンの印刷が困難となる。液滴が受ける気中散乱の影響を緩和するためには、高比重液滴を高速で吐出・飛翔させることが重要となる。しかし、電気-熱変換型では,通常の応用でもインク滴の吐出に300~500℃/数μsという急激な温度上昇が要求されるため機能性インクの熱劣化をともない、電気―機械変換型では駆動部品数が多く信頼性面でのディメリッドがある。従来技術を用いて吐出力を向上させるためには、駆動機構の大掛かり、高エネルギー消耗やデバイスの信頼性・耐久性面での問題を避けられない。研究目的を達成するにあたって、既存技術の限界を乗り越え提案手法によって、比較的低温と可動素子なし単純構造で目的実現の可能性が解析を通じて原理的に確認でき、次の研究ステップに必要な最適構造と加工手法の方向性を提示できたので、残り課題に向けて概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度には昨年度の研究結果をもとに、加工プロセス詳細課題を充実させ、デバイスの一次試作を行う。磁性流体調合における残り課題を解明し、試作したデバイスを用いて提案機構の作動原理を実証し課題抽出を行う。インクの局所加熱はマイクロヒータによる加熱機構によって実現することを最終手段とするが、実現に支障が出た場合は対策としてパルスレーザー瞬間加熱を利用して熱磁気駆動挙動を特定する方針である。以上の評価結果をもとに、要素技術の更なる改良を行い、H25年度における第二次試作に向けての要素と基盤技術の準備・体制を整うこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「繰越額が生じた状況についての記載」:消耗品の割引などで当初に見積から1,610円の繰越額が生じた。次年度の研究費に合わせて活用させていただきます。次年度の研究費使用計画:昨年度の研究結果をもとに、次年度(H24)年度では、デバイスの作製と性能評価が研究の主な内容となるため、デバイス加工プロセス関連で下記のように消耗品が発生する。シリコンウェーハー:290,000円、フォトマスク290,000円、電着材料:160,000円、NdFeターゲット:51,610円、磁性流体調合用ナノ磁性微粒子:250,000円、レジスト類:150,000円、結晶ガラスウェーハーや現像液・洗浄剥離液などプロセス関連消耗品類:160,000円、印刷・複写費:150,000円、成果発表論文投稿・校正料:200,000円、専門書籍:150,000円、装置レンタル使用料:100,000円、成果発表会500,000円、調査・研究旅費:150,000円 総額計:2,601,610円
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