2011 Fiscal Year Research-status Report
超臨界二酸化炭素を用いたポリマー染着プロセスにおける物性値の解明
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23560905
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田村 和弘 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (20143878)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 化学工学 / 超臨界流体 / 環境技術 / 環境対応 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
超臨界二酸化炭素を用いたポリマー染着プロセス技術の開発に必要となる,超臨界二酸化炭素に対する染料,抗菌性,難燃性,電磁遮蔽性を有する機能性物質の溶解現象および超臨界二酸化炭素雰囲気下でのポリマーの物性値変化のメカニズムを解明するため,超臨界二酸化炭素中での機能性物質の溶解度,ポリマーのガラス転移温度を調べた.平成23年度には超臨界二酸化炭素中での分散染料の溶解度を,種々の条件で高精度の測定できるように流通式の装置を改良した.機能性物質にはアントラキノンを骨格とし,これに発色団として様々なグループ(OH,NH2,Cl,CH3)が付加した三原色分散染料のC.I.Disperse Blue, Red, Yellowを用いて,単独成分および混合染料の測定を系統的に行った.その結果,温度範囲(80-110℃)、圧力範囲(10-25MPa)において,混合染料の溶解度の温度・圧力依存性を明らかにした.さらに,状態方程式を用いた熱力学的手法により,実験条件範囲内で溶解度データを定量的に表わすことに成功しており,超臨界染色プロセス設計のための基礎物性データを得ることができたと判断できる.さらに,超臨界二酸化炭素雰囲気下におけるポリマーの可塑化効果を明らかにするため,高圧下でのポリマーのガラス転移温度を測定可能なIGC法(Inverse Gas Chromatography)に基づく測定装置を製作し,圧力(0.1MPa,8-15MPa)の変化に対するポリアクリル酸(分子量5000)のガラス転移温度を測定した.そして,15MPa下におけるポリアクリル酸のガラス転移温度は,0.1MPaにおける値に比べて,約80%降下することを明らかにした.このことは圧力を加えることにより,より低温下でポリマーが可塑化可能であることを示しており、ポリマー成形加工における新たな工学的知見を与えるものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初平成24年度に計画していた超臨界二酸化炭素中でのポリマーのガラス転移温度測定のための実験装置を製作し,ポリアクリル酸のガラス転移温度を測定できた.さらに,圧力(8-15MPa)の変化に対する超臨界二酸化炭素中でのポリアクリル酸(分子量5000)のガラス転移温度を明らかにできたことから、当初の計画より早めに進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も実施計画に基づき,超臨界二酸化炭素を用いたポリマー染着プロセス技術の開発に必要となる,超臨界二酸化炭素に対する機能性物質の溶解現象および超臨界二酸化炭素雰囲気下でのポリマーの物性値変化のメカニズムを明らかにするため,超臨界二酸化炭素中での機能性物質の溶解度,ポリマーへの機能性物質の拡散およびポリマーのガラス転移温度などのデータを測定する.そして,超臨界二酸化炭素と機能性物質間の相互作用や超臨界二酸化炭素―機能性物質―ポリマー間の物質移動現象をミクロ物性からバルク特性まで明らかにすることで,超臨界染着プロセスの最適化手法の開発に貢献する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き実施計画に基づき,超臨界二酸化炭素に対する機能性物質の溶解現象および超臨界二酸化炭素雰囲気下でのポリマーの物性値変化のメカニズムを明らかにする上で,超臨界二酸化炭素中での機能性物質の溶解度,ポリマーへの機能性物質の拡散およびポリマーのガラス転移温度などのデータを測定するために必要な物品の購入を行う.そして,得られた成果を公表するために、学会等で発表するための旅費等に使用する計画である.
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