2011 Fiscal Year Research-status Report
二酸化炭素を燃料化する光捕集分子-人工補酵素-ギ酸脱水素酵素複合体の設計と創製
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23560947
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
天尾 豊 大分大学, 工学部, 准教授 (80300961)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 二酸化炭素還元 / 光捕集分子 / 酵素反応 / 光誘起電子移動 / 低炭素燃料 / ギ酸脱水素酵素 / 人工補酵素 |
Research Abstract |
本研究では,二酸化炭素を還元しメタノール等の次世代型低炭素燃料を生成する人工光合成システムの確立を目指し,光エネルギーで駆動する二酸化炭素の分子変換機能を持つ光捕集分子-人工補酵素-ギ酸脱水素酵素複合体を設計・創製する. 本年度はギ酸脱水素酵素を用いた二酸化炭素のギ酸への変換反応に最適な人工補酵素分子を構築した.具体的には1,1'-ジアルキル-4,4'-ビピリジニウム塩及び1,1'-ジアルキル-2,2'-ビピリジニウム塩を基本骨格とし,イオン性置換基を導入した分子を合成した. 次に合成した人工補酵素分子の第一還元電位を電気化学的手法を用いて測定した結果,置換基の種類に関わらず第一還元電位は変化しないことを明らかにした. 最後に人工補酵素を用い,ギ酸脱水素酵素を用いた二酸化炭素のギ酸への分子変換反応の機構を調べた.具体的にはジチオン酸ナトリウムで人工補酵素を還元し,ギ酸脱水素酵素存在下で二酸化炭素からギ酸への変換反応について,酵素反応速度論的に反応過程を解析した.この結果,置換基として陽イオン性アミノ基を導入した人工補酵素を用いることによって,ギ酸脱水素酵素を用いた二酸化炭素のギ酸への分子変換反応が加速されることを明らかにした. また平成24年度着手予定の光捕集分子-人工補酵素複合体について,光合成色素クロロフィルの誘導体と1,1'-ジアルキル-4,4'-ビピリジニウム塩を基盤とした人工補酵素とを配位結合を介して結合することにより合成し,光化学的性質を蛍光分光法を用いて明らかにした.その結果,光捕集分子から人工補酵素部位への効率的な光誘起電子移動反応が進行していることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究開始初年度に計画した項目については,ギ酸脱水素酵素を用いた二酸化炭素のギ酸への変換反応に最適な人工補酵素分子を構築,電気化学的性質の解明及び人工補酵素を用いたギ酸脱水素酵素による二酸化炭素のギ酸への分子変換反応の機構の開明についてほぼ計画通りの研究遂行及び成果が得られた.さらに平成24年度に遂行予定の光捕集分子-人工補酵素複合体についても新たな知見が得られたことから,当初計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は平成23年度で得られた知見をもとに以下の研究を進める.(1)人工補酵素分子とギ酸脱水素酵素との複合化では平成23年度に合成した各種人工補酵素とギ酸脱水素酵素とを複合化し,人工補酵素-ギ酸脱水素酵素複合体を用いた二酸化炭素のギ酸への分子変換反応の機構を調べる.(2)光捕集分子・人工補酵素・ギ酸脱水素酵素複合体の創製と光エネルギーによる二酸化炭素のギ酸への光還元反応系の確立では,人工補酵素-ギ酸脱水素酵素複合体のイミダゾール部位を用い,配位結合を用いて複合化する.さらに,亜鉛クロリンからギ酸脱水素酵素部位までの光誘起電子移動過程について所有の蛍光寿命測定装置を用い解析し,亜鉛クロリンからギ酸脱水素酵素部位までの間の分子間距離を最適化することにより高効率な電子移動を達成する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本補助金で新規購入する設備備品ガスクロマトグラフ装置は平成23年度に購入した.平成24年度以降は23年度残額も含めて主に研究遂行に必要な消耗品,謝金,成果発表のための旅費として使用する. 消耗品としては,ガラス器具及び光合成色素・ギ酸脱水素酵素,補酵素等の薬品であり,本実験を進める上で恒常的に必要であるものとして購入する計画である.旅費は,国内(年2回),国外(年1回)の研究発表のための出張費に充当する.謝金は,研究を効率的に推進するにあたり非常勤の実験補助に計上する.その他,研究成果を国際学術雑誌に投稿・掲載するための経費も毎年一定額使用する予定である.
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Research Products
(3 results)