2011 Fiscal Year Research-status Report
硬化した高炉水砕スラグの破壊・自己修復能力の定量化
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23560993
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松田 博 山口大学, 理工学研究科, 教授 (50136131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石藏 良平 山口大学, 理工学研究科, 助教 (90510222)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高炉水砕スラグ / せん断 / 液状化 / 再硬化 |
Research Abstract |
高炉水砕スラグは銑鉄の製造過程で生成される副産物であり、水と反応して硬化する性質(水硬性)を有する。地盤材料としての適用方法が検討され、すでに港湾構造物等における液状化対策など硬化が必要な構造物への施工実績がある。しかし、硬化後、地震等によって負荷を受けたスラグ構造物に対する維持管理・補修に対する検討は行われていない。本研究では、高炉水砕スラグの初期硬化後にも残存すると考えられる未水和反応部に着目し、硬化後破壊した高炉水砕スラグの再硬化特性(自己修復能力)に関する基礎的特性を把握するとともに、その定量化を試みることを目的とする。 試料は、製鉄所から出荷された高炉水砕スラグ(水砕スラグA)及びスラグ試験盛土からサンプリングした高炉水砕スラグ(水砕スラグB)である。実験手順としては、養生した供試体をせん断後、ふるいにかけ再養生後、せん断を行った。養生条件は、水砕スラグAについては、初回および再養生ともに同日数で養生し、初回養生日数1ヶ月供試体は、せん断後に1ヶ月間再養生した後にせん断を行った。同様の手順で、養生日数2ヶ月(初回および再養生ともに養生日数2ヶ月)、養生日数4ヶ月(初回および再養生ともに養生日数4ヶ月)の供試体に対して試験を行った。水砕スラグBは、施工後10年経過しているため著しく硬化しており、この期間を初回養生とし、サンプリング後に細かく砕き、相対密度が80%となるように供試体を作製し、1ヶ月および2ヶ月間養生を行い、これを再養生供試体とした。その結果、水砕スラグAおよび水砕スラグBともに、初回養生供試体、再養生供試体の両者で未硬化時の供試体と比較をすると大幅に強度増加していることが明らかとなった。このことより、高炉水砕スラグは、硬化後にせん断しても潜在水硬性は保持されており、再硬化することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
掲載済み論文として、○「軽量盛土材として用いた高炉水砕スラグの特性の経年変化」、松田博、石藏良平、和田正寛、来山尚義、白元珍、谷信幸:地盤工学ジャーナル 第7巻第1号339~349頁(2012年3月)がある。 また、投稿中の論文として、○「硬化後長期間放置した高炉水砕スラグの再硬化特性に関する研究」、新舍良典・学生会員・和田正寛・正木理久・松田博・石藏良平:第47回地盤工学研究発表会、2012年、○「著しく硬化した高炉水砕スラグの再硬化特性に関する研究」、新舍良典・和田正寛・正木理久・松田博・石藏良平:第64回土木学会中国支部研究発表会、2012年、○"Self-Restoration Characteristics Of Granulated Blast Furnace Slag As An Earthquake Resistant Material", M. Wada, H. Matsuda, R. Ishikura & Y. Shinya: 15th World Conference on Earthquake Engineering, 2012、○"New Criterion For The Liquefaction Resistance Under Strain-Controlled Multi-Directional Cyclic Shear", H. Matsuda, T.T. Nhan, R. Ishikura & T. Inazawa: 15th World Conference on Earthquake Engineering, 2012、 がある。
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Strategy for Future Research Activity |
多軸単純せん断試験装置及び繰返し三軸圧縮試験装置における油圧サーボによる制御装置において、不具合が生じたことから、まず制御装置の改善を図る。具体的には、静的せん断時において、ひずみが不安定になる現象が生じるため、制御系の一部変更が必要となる。 また、初期硬化後にせん断を受けた供試体においては、破断面付近で粒子破砕が発生し、初期硬化時に水和反応を示さなかった粒子内の未水和反応部からカルシウムイオン等が流出し、再硬化(自己修復)するものと予測している。そこで、初期硬化後にせん断を受けた供試体を用いて、初期硬化後の供試体に未水和反応部が残存しているかどうかの確認を行う。特に、せん断を受けた供試体に対して、粒子内の未水和反応部の接触面を増やすため、人工的に供試体の破砕を行う。粒度調整を行った数種類の供試体を同様の養生方法により再養生し、せん断試験を実施し、初期硬化時の供試体との強度定数および液状化強度との比較から、未水和反応部が再び水和反応を起こすことによって高炉水砕スラグが再硬化(自己修復)を示すことを継続して調べ、実際の地震等を想定した破断面においても再硬化特性(自己修復能力)を示すかどうかを検討する。 さらに、再養生した供試体について、反応生成物のSEM(走査型電子顕微鏡)画像により、破断面付近における再養生後の水和反応の状況を把握する。 現場試験盛土においてブロック供試体の採取、高炉水砕スラグの経年変化の調査を継続して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験で使用している多軸単純せん断試験装置及び繰返し三軸圧縮試験装置は油圧サーボによる制御を行っているが、試験途中より誤作動が生じたことから、制御の方法を見直す必要が生じた。そのため当初計画していた物品購入について、制御装置との関係で変更することとした。また、現場でのサンプリングについても、従来から用いている試料の試験を主体的に行う必要が生じたため、新規のサンプリングについては次年度(平成24年度)に実施することとした。そのため、次年度に使用する研究費が生じた。 具体的には、スラグ試験盛土からのブロックサンプリングが必要となるが、サンプリング時のサンプルの乱れは、実験結果に大きく影響を及ぼす恐れがある。そのため、サンプリング時の掘削作業が必要であり、その人件費を必要とする。 実験で用いている繰り返し三軸圧縮試験装置、多軸単純せん断試験装置は実地震動を想定したせん断力を負荷できる装置であり、特に多軸単純せん断試験装置はわが国においても、数台しか存在しない特殊装置である。実地震動を想定したより厳密な計測結果が必要となる本研究を遂行するためには、試験装置を改良する必要があり、その費用が必要である。具体的には、繰り返し三軸圧縮試験装置における制御精度の向上、多軸単純せん断試験装置において水平2方向と鉛直方向それぞれについて、荷重と変位の計測、また間隙水圧の測定精度向上を図る。 さらに、これまで高炉水砕スラグに関する一連の研究を行っており、その研究成果及び技術開発の水準は、世界最高レベルにあるといえる。本研究成果を国内外で広く発表し高炉水砕スラグの地盤工学的有効利用促進に貢献したいと考えている。そのため研究成果を発表するための旅費を要するが、特に第15回世界地震工学会議へ論文投稿した結果、採用となったことから、当初予定していなかったが、同会議への出席の旅費としても計画している。
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