2012 Fiscal Year Research-status Report
硬化した高炉水砕スラグの破壊・自己修復能力の定量化
Project/Area Number |
23560993
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松田 博 山口大学, 理工学研究科, 教授 (50136131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石藏 良平 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90510222)
原 弘行 山口大学, 理工学研究科, 助教 (00588709)
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Keywords | 高炉水砕スラグ / せん断 / 液状化 / せん断強度 / 再硬化 |
Research Abstract |
本研究では,高炉水砕スラグが一度硬化した場合においても,粒子内に未水和反応部が存在すると予測している.そのため,初期硬化後に地震などによって負荷を受け,地盤中にせん断による破断面等が生じた場合にも,せん断面において新たな粒子間接点が生じ,カルシウムイオンの流出により,自己修復する可能性がある.そこで,本研究では,高炉水砕スラグが初期硬化後にせん断破壊が生じた場合にも破断面が再硬化し,自己修復することを明らかにするとともに,自己修復能力の基礎的特性とそのメカニズムを明らかにすること,さらに,硬化の程度と自己修復能力との関係について定量的評価を行うことを目的としている. 試料としては平成23年度から継続して用いているフレッシュな水砕スラグと試験盛土の0.3m/層の範囲から採取後,解砕してふるい分けを行った水砕スラグを用い,所定の期間養生した供試体に対して再養生期間と硬化の関係についてさらに詳細に調べた.その結果,自然環境下で硬化した水砕スラグは,せん断抵抗角をほぼ一定に保った状態で粘着力が発現することを再確認した.さらに,養生前後の供試体から採取した水砕スラグ試料に対して電子顕微鏡観察を行うとともに,新たに,サリチル酸・アセトン・メタノール溶液を用いた選択溶解法を導入し,水砕スラグの水和反応率を調べ,自己修復能力の定量的評価への適用の可能性について調べた. その結果,水和反応率と電子顕微鏡観察結果から水砕スラグは再養生中においても,水和反応が継続して起こり,生成した水和物による粒子間のセメンテーション効果が強度増加を引き起こすことが示唆された.さらに,試験盛土からサンプリングした水砕スラグを解砕後再養生した場合においても,粘着力の増加が確認でき,自然環境下で硬化した水砕スラグにおいても,せん断破壊後も潜在水硬性が保持され再硬化することが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
掲載済み論文として、 ○「軽量盛土材として用いた高炉水砕スラグの特性の経年変化」,:地盤工学ジャーナル,第7巻,第1号,339~349頁, 2012年、 ○Self-Restoration Characteristics of Granulated Blast Furnace Slag as an Earthquake Resistant Material, 15th World Conference on Earthquake Engineering, 2012, ○New Criterion for the Liquefaction Resistance under Strain-Controlled Multi-Directional Cyclic Shear, 15th World Conference on Earthquake Engineering, 2012 ○硬化した高炉水砕スラグの自己修復特性に関する考察, 第10回地盤改良シンポジウム論文集, 12-2, pp.463-466, 2012, ○地盤工学材料としての高炉水砕スラグの再硬化特性、第64回土木学会中国支部研究発表会発表概要集,III-20,2012, ○著しく硬化した高炉水砕スラグの再硬化特性に関する研究,第64回土木学会中国支部研究発表会発表概要集,III-21,2112, ○硬化後長期間放置した高炉水砕スラグの再硬化特性に関する研究, 第47回地盤工学研究発表会, 238, pp.473-474, 2012,○一度硬化した高炉水砕スラグの自己修復特性,土木学会第67回年次学術講演会,III-023,pp.45-46, 2012, がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,1)高炉水砕スラグが初期硬化後にせん断破壊が生じた場合にも破断面が再硬化し,自己修復することを明らかにするとともに,2)自己修復能力の基礎的特性とそのメカニズムを明らかにすること,さらに,3)硬化の程度と自己修復能力との関係について定量的評価を行うことを目的としている. これらの研究目的において,1)については,初期硬化後にせん断破壊が生じた場合でも,再養生することによって粘着力が増加することから,再硬化することが確認された.2)については,初期硬化の程度と再硬化の関係についてすでに多くの結果を得ているが,平成25年度も継続して実験を行う.また,平成24年度に,自己修復能力の定量化を行う手法を種々試みた結果,水和反応率の変化と再硬化時の強度の相関関係を用いることによって,再硬化時の強度を定量的に評価できる可能性があることを見出した.水和反応率とは,サリチル酸・アセトン・メタノール溶液を用いた選択溶解法によって得られるもので,養生時には養生期間の増加とともに水和反応率が増加することを確認している.すなわち,選択溶解法によると,水砕スラグ自体は溶解しないが,反応した水和物の大部分を溶解させることができるため,水砕スラグの水和反応率を調べることができる. 実験では,初期硬化の程度と再養生期間を種々変化させた場合の強度と水和反応率の関係を調べ,再硬化時の強度を水和反応率から推定することによって定量的評価を可能とするよう試みる. さらに,再硬化時の状況を走査型電子顕微鏡によって調べることによって,再硬化(自己修復能力)のメカニズムについても明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者の石藏良平助教が、平成24年8月から九州大学へ転出し、学外分担者として研究を継続しているが、九大での研究遂行上,研究費の次年度使用の必要性が生じた。 また、平成25年度は研究の最終年度に当たり,実験を継続して実施するために,実験上の消耗品,また研究結果の適用性に関わる調査,研究成果発表のための旅費,さらに,投稿料他として使用予定である.
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